70、80代が全国から集まる大阪の老舗ラブホテル 人気の秘密
「遠いところから、ようこそおいでくださいました」
6月中旬の昼下がり、『ホテル富貴』に赴いたわれわれ取材陣を丁重に迎えてくれたのは、同ホテルのオーナー、野本昭子さん(55才・仮名)。
赤い絨毯の敷かれたフロントには、昔ながらのダイヤル式電話が備え付けられている。波状デザインの壁面に、洋館風の螺旋階段。館内には全部で23室あるという。
「今日もお客様がたくさん来てくださって、ドタバタしとりますけれども」
そう断りを入れながら、野本さんがホテル内を案内してくれた。やはり「百聞は一見にしかず」なのだという。
最初に案内されたのは、「舟」という部屋。ドアを開けて、驚いた。室内奥の囲いの中に、舟がある。中に布団が敷かれているが、これは一体?
「寝間です」。野本さんは当たり前のように答える。かつては舟の周囲に水が流れ、鯉が泳いでいたという。
「当初は舟も固定ではなく、浮いた状態でした。寝ていて船酔いされたお客様もいらっしゃったと聞いております。でも水漏れもあって…。やむなく水を抜いて、周りを板張りにしたんです」(野本さん)
船首には燈籠が置かれ、壁には日本画。純和風の障子と相まって、さながらタイムスリップしたかのよう。
次いで案内されたのは「江戸」なる部屋。入るなり、厳かな高床式神殿が眼前に飛び込んでくる。床は赤一色の絨毯。居間と神殿を繋ぐのは、日本庭園を思わせる石庭。階段を上って神殿に入り、ベッドに横になると、天井に描かれた色鮮やかな春画に目を奪われる。
洋風の部屋もある。「ローマ」が一例で、古代ローマの石柱を思わせる柱に、大きな洋風ベッドが客を出迎える。すべての部屋に共通するのは、風呂が広いこと。天井高は4mを超え、ガラス窓から陽光が降り注ぐ。中には室内空間の半分を浴室が占める部屋もある。
基本料金は休憩75分2980円
価格は部屋にもよるが、基本は休憩75分2980円。宿泊は8950円。追加料金を払えば3人でも宿泊できる。
「基本的な造りは開業以来ずっと同じです。うちは長い間、常連さんで成り立ってきたホテル。5年、10年、中には20年という単位で使ってくださるかたもいます。突然造りを変えてしまうと、お客様に申し訳ないのです」(野本さん)