「満床以外の理由で認知症の母がグループホームの入居を断られた!」 意外と知られていない入居の落とし穴
施設に入所したい時、満床以外の理由で断られるなんて――。母親をグループホームに入所させたいと考えていた田中栄子さん(仮名)は、とある理由で希望する所に入所出来なかったんだとか。その理由とは一体? そこで、グループホームの知られざる入居条件について、社会福祉士・ケアマネジャーの資格を持つ倉元せんりさんに解説いただきました。
この記事を執筆した専門家
倉元せんりさん
福祉系大学を卒業後、急性期病院で医療ソーシャルワーカーとして勤務。社会福祉士・ケアマネジャーの資格を保有。現在は、フリーライターとして、福祉にまつわるさまざまな記事を執筆している。
監修者
中谷ミホさん
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級。X(旧Twitter)https://twitter.com/web19606703
「認知症の母がグループホームの入所を断られた」
在宅で認知症の症状のある母親(83才・要介護2)の介護をしている田中栄子さん(58才・仮名)は、このところ、症状が悪化してきた母親の施設入居の検討を始めました。
ところが先日、隣の市にあるグループホーム(認知症対応型共同生活介護)に問い合わせたところ、空きがあるのに断られてしまったそうです。
戸惑いつつも「なぜ入居できないの?」と疑問を抱く田中さん。
実は、グループホームには意外と知られていない入居条件があったのです。
原則、同じ市町村に住民票がないと入居できない
グループホームは、介護保険の「地域密着型サービス」に位置付けられているため、入居できるのは、原則として施設と同じ市町村に住民票があるかたに限られています。
田中さんがグループホームの入居を断られたのは、このためです。
地域密着型サービスとは、高齢者が認知症や要介護状態になっても、住み慣れた地域で暮らし続けられるようにサポートするためのサービスです。地域住民のニーズを反映し、細やかで質の高いサービスを独自に提供することを目的としています。
地域密着型サービスの種類
・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・地域密着型通所介護
・療養通所介護
・認知症対応型通所介護
・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
・地域密着型特定施設入居者生活介護
※地域密着型サービスの種類は、市町村によって異なります。
グループホームのその他の入居条件
「施設と同じ市町村に住民票がある」以外にも、グループホームには入居条件があります。
1. 65才以上かつ要支援2以上の人
グループホームは65才以上かつ要支援2・要介護1〜5の認定を受けた人が入居の対象です。また、若年性認知症などの診断を受けたかたは、40〜64歳でも入居することができます。
2. 認知症の診断を受けている人
グループホームは認知症高齢者のための施設であるため、医師による認知症の診断を受けていることが条件です。
3. 集団生活に支障がない
グループホームでは、少人数で共同生活を送るため集団生活に支障がないことも条件となります。そのため、施設によっては、認知症の症状が安定せず、暴力を振るうなどの症状や行動があるかたは入居を断られる場合があります。
上記の入居条件のほか、施設の設備やケア体制により、身体状況に制限が設けられている場合もあります。
住んでいない市町村のグループホームに入居する方法
入居を希望するグループホームと同じ地域に住んでいない場合でも、以下の2つの方法をとれば、入居できる可能性があります。
【1】グループホームのある市町村の同意を得る
特例としてグループホームの所在地の市町村が同意すれば、他の市町村に住むかたであっても入居申し込みができる可能性があります。まずは、施設がある市町村の窓口に相談してみましょう。
【2】住民票を移動する
親族が住む地域のグループホームに入居したい場合は、親族の自宅にあらかじめ住民票を移動しておくことで、グループホームの入居申し込みが可能となる場合があります。
ただし、住民票を移してから一定期間が経たなくては、申し込みを受け付けない施設も多いので注意が必要です。
そのため、住民票を移す場合は、いつ入居できるのか施設へ問い合わせるか、市町村の窓口やホームページで確認しましょう。
入居場所を決める際は見学は必須
本人に合うグループホームに入居するためには、事前の見学が大切です。見学の際は、入居者の様子やスタッフの対応などを確認することで心地よく過ごせる空間かを判断できます。
なるべく本人と一緒に見学し、グループホームの設備や支援体制なども、実際に見て確かめておきましょう。
参考:
厚生労働省 老健局「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001113811.pdf
厚生労働省「どんなサービスがあるの? – 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)「認知症対応型共同生活介護(グループホーム)」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group18.html
※記事は実例をもとに一部設定を変更しています。
●「グループホーム」(認知症対応型共同生活介護)とは?サービス内容や費用をわかりやすく解説