「大腿骨骨折」は研ナオコ、赤木春江ら芸能人にも多発 死を招く“隠れ骨折”も
骨がもろくなる骨粗しょう症が原因で起きる骨折は主に、手首、肩の付け根の上腕骨、背骨、太ももの付け根の大腿骨頸部の4か所。
大腿骨頸部とはいったいどの部分の骨なのか。井尻整形外科の院長・井尻慎一郎さんが説明する。
「太ももの部分の太い骨を大腿骨といいますが、上の図のように大腿骨の頭の部分と大腿骨をつなぐ部分の骨を大腿骨頸部といいます。研さんが折れたのは右太ももの付け根の関節部分だと考えてください。若い時は転んだくらいでは折れる部位ではありませんが、骨がもろくなっている高齢者の場合、つまずいたり、転んだりすると、この部位が折れることが多くなります」
脚を支えて動かす重要な骨なので、折れるとかなり痛みを伴い、もちろん歩くことはできない。井尻さんは「大腿骨頸部の骨折は命にかかわることもある」と指摘する。
「大腿骨頸部の骨は、折れると元通りにくっつかないこともあるし、つくまでは歩けないので、特に昔は手術もできず寝たきりになる原因でした。寝たきりになるとほかの病気にかかるリスクも高く、肺炎などで亡くなることも珍しくありませんでした。
研さんが人工骨頭を入れる手術を受けられたように、今は治療技術も進歩し、手術とリハビリで歩けるようになります。肺炎で亡くなる人も減っています。それでも寝たきりになる人はゼロではなく、大腿骨頸部骨折を起こすと寿命が短くなるといわれているほど、怖い骨折です」
大腿骨近位部骨折の発生推計数に関する全国調査(2012年度)によると、1987年には5万3100件だったのが、2012年には17万5700件に急増。背景には超高齢社会があるが、その発生件数の内訳を見ると、女性は男性の3倍以上となっている。
むらき整形外科クリニック院長・村木重之さんは、背骨の骨折も命を縮める原因だと指摘する。
「背骨は知らないうちに、圧迫骨折といって上半身の重みでつぶれてしまいます。これが最近話題になっている“隠れ骨折”です」
6日に肺炎で亡くなった京唄子さん(享年89)が、表舞台から一線から退くきっかけとなったのはこの“隠れ骨折”だった。
2009年1月中旬、足に痛みを感じ、MRIによる精密検査で第4腰よう椎ついの圧迫骨折が判明。2か月程度で完治するとの診断を受け、無理をせずに仕事を続けていたものの、同年4月初旬に強烈な痛みが彼女を襲った。階段を下りられなくなり、便器に座ったまま腰が上がらなくなったという。病院へ行くと、第4腰椎の骨折こそ完治していたが、今度は第3、第5腰椎が骨折していたのだ。
京さんのように圧迫などによってつぶれた骨は元に戻らない。それは日常生活に影響を与えることもある。
「背骨前側がつぶれるので、背骨が全体的に前に曲がり、背中が丸まって歩きづらくなることもあるし、胃が圧迫されて逆流性食道炎になることもあります」(村木さん)
日本では人口1300万人が骨粗しょう症といわれているものの、治療を受けているのは約300万人。実に1000万人以上もの人が、この病を放置していることから、隠れ骨折が急増している。
「隠れ骨折の多くは病院に行くほどの痛みを感じないため、気づかない人も多い一方で、高齢者の多くが痛みを我慢しがちな傾向もあって、深刻な状態になるまで骨折を放置するんです。
そのため、知らないうちに第2、第3の骨折を招くことがある。骨折は連鎖を起こすといわれていて、国際骨粗鬆症財団の標語は『最初の骨折を最後にしましょう』。そう声高々にいわなくてはいけないほど、骨折の連鎖は起こりやすいんです」(井尻さん)
隠れ骨折を知る方法とは?
ではこの隠れ骨折を知る方法はないのだろうか。細井さんが言う。
「背骨が1つつぶれると身長が2~3cm低くなるため、いつもはいているスカートの丈が長く感じるようになったとか、病院で身長を測ったら思いのほか低くなっていたとかしたら、骨粗しょう症に詳しい整形外科などを受診するといいでしょう。隠れ骨折は放置していると別の背骨もつぶれていくので早期発見が望ましく、骨量を増やすのみ薬などで治療できます」
また、自宅で簡単にできるチェック方法もある。
「壁に背を向けて立ち、かかととお尻をつけた状態で頭が壁につけば大丈夫です。背骨が折れて曲がっていると頭がつきません。ただの猫背の人は伸ばせば頭がつきます。また、自分の骨密度を知るためにも、閉経期を迎えたら一度は骨密度の検査を受けた方がいいですね。無料で検査を受けられる自治体もありますが、X線を使うDXA装置での測定は、医師の診察を経て行います」(細井さん)
一般的にその検査費は1000円前後といわれている。
※女性セブン2017年4月27日号
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