春のお花見弁当を介護食で|やわらか食材で作るお花見弁当のコツ
お花見に行けない高齢者や介護が必要な人に、せめてお花見弁当で春を楽しんでもらえたら…。春の行楽弁当をテーマにした介護食の料理教室へ潜入。市販の食材を組み合わせ、なるべく手間をかけずに作ったお花見弁当がコチラ。介護食のお花見弁当作りのヒントをご紹介します!
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市販のやわらか食材で春のお花見弁当
今回参加したのは、春の行楽弁当をテーマにした介護食の料理教室。一般の主婦から介護の現場で働く人まで、総勢10名が参加し、和やかな雰囲気で料理教室がスタート。
「介護食とはいえ、すべてミキサーにかけて流動食にしたら、咀嚼する力がどんどん弱っていってしまいます。もぐもぐ噛んでごっくんと飲み込むことがとても大事。食材の形を目で見て、口の中で噛んで味わうことは、食べる楽しみや生きる力になります」
こう話すのは、料理教室で講師を務める介護食の商品開発、販売などを手がける企業『宮源』のテクニカルインストラクター・高橋浩幸さんだ。
「毎日、毎食、イチから作るのは大変ですよね。野菜や肉・魚は、すりつぶして形よく仕上げてあるものを使うと手軽。また、食材を飲み込みやすくする専用のとろみ剤や、お湯で溶くだけの粉末おかゆなど、便利なアイテムもたくさんあります。そういうものを使って、ラクに手軽に作ればいいんです」と、高橋さん。
ポイントは、介護される人が食べやすいやわらかさとはどのくらいか、何回噛めば飲み込めるのか、しっかり把握すること。
介護食でお花見弁当を作るなら凝固剤で手軽に
早速、参加者と一緒に作って、試して、食べてみた。
まずは、お弁当の定番の卵焼きから。市販の厚焼き卵と、お湯で溶いた凝固剤「ミキサーゲル 」を入れて、ミキサー(「マジックブレット」使用)で撹拌。シリコン型に流し入れて固めるだけで、口の中でふわりと溶けるふんわり卵焼きが、あっという間に仕上がった。
続いて、彩りを添える3色団子。粉末お粥「粥ゼリーの素」をお湯で溶き、抹茶や食紅で色付け。丸型の製氷皿に注いで冷やせば、つるんとした食感で飲み込みやすいお団子が完成。シリコン製の型は、最近100円ショップでも色んな形のものが登場している。見た目をかわいくすれば、食欲もわいてくる。
市販のやわらか食がお花見弁当の主役に
メインおかずのから揚げや炊き合わせ、さばのみそ煮などには、「やわらか食」素材の製造、販売する『ふくなお』の商品を使用。
「かまぼこなどの練り物の技術を使い、素材を一度すりつぶし、歯茎でつぶせるやわらかさにして再形成しています。食材の旨みや風味はそのままに、色や形も元の素材に近い状態にしてあるので、見た目も美しく仕上がります」と、ふくなおの澤村竜二さん。
「家族のために煮物を作ったら、煮汁を少し取り分けておく。その煮汁でやわらか素材を煮れば、あっという間に介護食ができます。一度蒸してあるから味も含みやすいですよ」(高橋さん)。
「やわらか食のしいたけ、すごく旨みがあって、普通のしいたけよりもおいしいかも!」と、参加者たちが絶賛したいたのは、見た目にもまるでしいたけの「やわらかしいたけやん」。こちらを使った煮物は、だしがしっかり染みていた。
「素材そのものが凝縮されていて栄養面も安心だし、見た目や形が実際の素材に近いので料理に使いやすいですね」と、介護の現場に勤める参加者さん。
色も見た目もまるでにんじんの「花型キャロリン」、むきえびのような見た目の「やわらか小エビちゃん」、通常のこんにゃくとまったく同じ原料を使用し、やわらかく加工した「やわらかこんにゃく」など、バリエーション豊富。素材の味がそのままいきているので、通常の調理法で簡単においしいやわらか食が仕上がる。
鶏肉をムース状に仕上げた「やわらかチキン」は、ひと口大に切って下味をつけ、片栗粉をつけて揚げる。鶏肉のジューシーさやしっとり感があり、数回噛むだけで飲みこめるやわらかさ。揚げる前にお肉を軽く握ることで、見た目がから揚げらしくなる。
「介護食とはいえ、揚げ物がダメというわけじゃない。いつも食べていた揚げ物も、炒め物も、食べたいんですよ。大事なのは、本人の嚥下状態を把握しておくこと。歯茎でつぶせる、舌やあごでおしつぶせるようなら、噛む回数が少なくてすむようにペースト状のお肉を使うとか、小さく刻んであげればいいんです」(高橋さん)