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《“現代の名工”との出会い》林家ペーの元マネジャー(69歳)が麻雀三昧の日々をやめて洋裁にハマるまで

 過去に林家ペーさんのマネジャーを務め、今はライターとして活躍するオバ記者こと野原広子氏(69歳)。30代から50代前半までライターをしながら、麻雀三昧の日々を送っていたことがあるという。そんな日々を変えたのが「洋裁」だった。野原氏がその出会いについて綴る。

* * *

洋裁の師匠が“現代の名工”に

 私の洋裁の師匠が、厚生労働省が選ぶ卓越した技能者(現代の名工)に選ばれ、その祝賀パーティーの司会を仰せつかりました。

「現代の名工に選ばれるなんですごいことよ」と、私の周囲ではちょっとした騒ぎよ。現代の名工は令和7年度は142名が選ばれ、師匠が受賞した婦人・子供服注文仕立職部門は3名だけという狭き門だ。

 と、いうことを知ったのは「ドレスを作ってあげるから」と言われて、思わず「よろこんで!」と飛びついたあと。ん? だけど、ちょっと待て! 私が出席する祝賀パーティーといえば、完全に料理目当てで、主催側になることなど1秒も考えたことがない。ましてや司会って、おいおい、大丈夫か?

 不安になりかけたところで、師匠ってば「ドレスなんだけど野原さん、仕上げのまつり縫いはお願いね。大丈夫、あなたは”手”がきれいだから」と言い出したの。師匠の指示書を見たら、星まつり、たてまつり、ながしまつりと3種ある。私ができるのはながしまつりだけだよ。

 と言っても洋裁をしたことのない人にはちんぷんかんぷんだよね。ちょっと嘆いたら「星まつり? 赤羽のばか祭りなら知ってるけど」と言われたわよ。 

 さらに師匠のムチャブリは続く。「簡単な私の経歴書みたいな印刷物を作れないかしら」とな。ええ、ええ、やりましたとも!

なぜ洋裁を始めたのか?

 それにしてもオバ記者がなぜ洋裁? と人は言う。実は私、”チクチク”と”編む編む”は母ゆずりでね。子供時代の数少ない幸せなシーンには、必ず母ちゃんとこたつで編みものしている姿が浮かぶんだわ。

 が、月日は流れ、世はバブルがふくらんで飲めや、歌えや、踊れや。そんなときにするりと心の隙に割り込んできたのが指先でつまめる麻雀牌よ。えええ〜、こんなに面白い遊びが世の中にあったの?と思う間もなく、ずぶずぶと沼にハマり込んで20年。

 だけど掛け値なしに楽しかったのは最初の数年のこと。あとは泥沼よ。ズタボロに負けてもうやめよう、明日はしないともがくほどに足が取られてどうにもならない。夜中に目が覚めて、私、どうなっちゃうのかなと天井の一点を見つめたことも一度や二度じゃないもの。30代前半だった私も50代に突入していた。

 しかし人の運命はほんと、わからないね。ある日、新聞チラシを見たら池袋のカルチャースクールの案内に目が止まり、気晴らしに通ってみるかぁと洋裁教室に入会。そこで、家内千恵子先生と出会ったの。その時は気づかなかったけれど、サイコロの目が逆回転し始めたのね。

 タバコ片手に麻雀三昧だったギャンブラーが、タバコをやめて針と糸を持ちだしたら、あら不思議。作りたい洋服が次々と浮かび、私は真人間になっていたの。

サプライズで“ファッションチェック”

 なんてことをつらつらと思い出しているうちに、祝賀パーティーの会場には次々と列席者が集まってきた。半世紀近く、洋裁教室を開いてきた先生が大半だから、この道ひと筋の威厳を備えていらっしゃる。

 制限時間、いっぱい。開会の辞を言わなくちゃ! ああ、首筋から変な汗が吹き出してきた! 「本日はご多用の中……」。あ、声、ひっくり返った。

 と、まあ、出だしはドタドタしたけれど、来賓の挨拶が続くうちに次第に落ち着いてきた。そして余興でやろうと考えていたことをやると決めた。私もだけどみなさん、この日のために自身が着る服を考え抜いて仕立てているのよね。

「それでは、これから余興として、ファッションチェックをいたします。マイクを持って各テーブルを回りますから、ぜひ今日のお洋服のポイントをお話しして、できたらくるりと回ってください」

 私がここぞとばかり声を張ると、中ベテランから大ベテランの先生までみなさん嬉々として立ち上がって解説をしてくるりと回ってくださったの!

 パーティーが終わると、私は洋裁界のレジェンド、大御所から手招きされた。90超えのご高齢ながら髪はきれいにセットされて、着物をアレンジした洋服はため息が出るほど素敵!

「あなた、なかなか良かったですよ。みなさんの前で今日着てきて服のお話もさせていただいてほんとうに良かったわ」

 そのひと言を聞いた時は、ホッとして膝から崩れ落ちそうになった。そして抜け殻になった私は、大好きな都バスに乗って渋谷から抜け出したのでした。

◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。

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