「知の巨人」が語る“本物の教養”「教養を高めるには読書がもっとも効果的」「知識や情報を集めるだけでなく、人間関係の中でブラッシュアップする」
「教養」に興味は持ちつつも、どうやって身につけたらいいのか、そもそも教養とは何なのか、ピンと来ていない人も多いだろう。外務省勤務を経て作家になった佐藤優さん(66歳)は、教養とは、本を読んだり芸術作品に触れたりすることで、「自分の感性や感受性を高めておくこと」と話す。「知の巨人」とも称される佐藤さんがすすめる教養の身につけ方を、佐藤さんの著書『残された時間の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)から一部抜粋、再構成してお届けする。
お金をかけずに教養を身につけるなら「読書」
教養を高めるには、読書がもっとも効果的だといえるでしょう。読書のよさは、何といってもお金をそれほどかけずに、膨大な情報量を得ることができ、深い思索のきっかけを作ることができることです。
まずは古今東西の古典、名著と呼ばれるものから読むのがおすすめです。古典は50年や100年、それ以上の命脈を保って生き続けているものです。時間のフルイにかけられ、選りすぐりの良書しか残っていません。
また、小説もぜひ読んでほしいと思います。社会人になると、小説なんて読む暇がないという人も少なくないでしょう。しかし、小説は豊富な“代理経験”を積むことができるのでお勧めです。人間は自分一人では経験できることは限られています。しかし本を通じての経験なら、無尽蔵に積むことができます。
本が読めない本当の理由は読書欲がないから
社会に出て働き始めると、とにかく時間が足りなくて本が読めないと嘆く人がいます。私から言わせると、時間が足りないのではなく、そもそも本を読む必要を感じないから読まないだけだと考えます。
誰でも1日の時間を見直せば、1時間くらいは本を読む時間を捻出できるはずです。朝早起きして30分読書をするとか、電車の中でも読むことが可能です。昼休みの時間を利用して読むこともできるでしょう。寝る前に30分、読書をすることだってできるはずです。
時間が足りない、忙しいというのは言い訳であって、真の理由ではありません。本当の理由は、読書欲がないということに尽きるのです。
ではなぜ、読書欲が起きないのか?
いわゆる“成功体験”がないからではないでしょうか?
学生時代に古典などを読んで、そこから自分の生き方や考え方に大きな影響をもたらされたという経験がある人は、本の面白さや魅力を知っています。本から得られる情報ほど豊富で、かつ安価なものはないことを身をもって知っているのです。
このような人は、むしろ社会に出てからの方が自由に好きな本を読めることに気づきます。若いころよりずっとお金もあり、多少高い本にも手を出すことができます。前述したように、時間を捻出することなど難しいことではありません。
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書・三宅香帆)がベストセラーになったそうですが、私から言わせると、『なぜ働いているのに本が読めないのか』というタイトルになるわけです。
ちなみに著者の三宅さんは面白い分析をされています。結局、仕事などに直接関係のない情報をノイズとして認識できない人が増えているというのです。
三宅さんいわく、すぐに役に立たないノイズ情報をたくさん持っている人ほど、いざ環境が変わったり、想定外の状況に置かれたときの対応力や応用力が高いと言います。私も同じ考えです。
言い換えると、ノイズこそが教養であるということです。それが新たな知識欲や勉強欲につながり、読書への意欲につながっているということです。
他人とのセッションで「知識」は「生きた教養」に
広く教養を深めるためには、興味のある分野のセミナーや勉強会、読書会などに参加するという手もあります。読書会などでは、テーマについて学ぶことはもちろんのこと、そこに参加している人たちと知り合い、交流を持つきっかけが得られることもあります。興味や関心が近い人が集まっているため、打ち解けるのも早いでしょうし、結びつきも強くなるはずです。
教養とは、こうした交流を通じて、知識や情報をぶつけ合うことで、はじめて生きた教養として育まれるものと考えます。単に情報や知識を集めたから、教養が身につくというものでもないのです。
知識や情報を集めるだけでは、いわゆるオタクにすぎません。人間関係の中でそれらをブラッシュアップしてこそ本物の教養であり、教養人だということです。
◆作家・佐藤優さん
さとう・まさる。元外務省主任分析官。同志社大学神学部卒業、同大大学院神学研究科修了後、外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。北方領土問題など対ロシア外交で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2009年、最高裁上告棄却。2013年、執行猶予期間を満了し刑の言い渡しが効力を失う。著書に『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)、『残された時間の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。
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