「ペットは飼った方がいい?」「趣味や推しを作るべき?」老後の暮らしを明るくする選択を専門家がアドバイス
老後を心豊かに過ごすには、お金や健康だけでなく、毎日の暮らしや人とのつながりも欠かせないと専門家は言う。人生の後半を明るく楽しく過ごすために、60代からの幸せな生き方のコツを紹介する。
教えてくれた人
たっつんさん/介護福祉士。介護士歴20年。高齢者施設などでのエピソードをSNSや著書などで発信。49才。
小谷みどりさん/シニア生活文化研究所代表理事。死生学などを研究。「ひとり終活」「ひとり死」がテーマの著書を多数執筆。56才。
横手彰太さん/家族信託コンサルタント。家族信託・民事信託の専門サイトを運営し、累計300人以上の信託を締結。53才。
「いきいき老後」or「がっくり老後」。明暗を分ける<暮らし面での選択4>
人生を最後まで豊かに楽しく過ごすために間違ってはいけない選択がある。友人関係から食事、ダイエットまで4人の専門家が直言する。
※各テーマは、個人や世帯状況といった条件で選択肢は変わる。本企画で明記した“答え”は各専門家が「自身の立場だったらどうするか」という前提で回答している。
【Q1】ペットを飼った方がいい?
<A1>飼った方がいい
「私が働く老人ホームでもアニマルセラピーを実施したことがあり、とても喜ばれました。認知症のかたでも動物たちに触れると反応があります。ペットは、家族の一員として自分に甘えてくれたり、相手をしてくれたりする精神的な支えや癒しとなり、認知症予防にも効果的。散歩に行くとなれば、運動にもなります。ですから、可能であれば飼うのはおすすめです。ただし、自分の死後、残されたペットをどうするかをしっかり考えて準備する必要があります」(介護福祉士のたっつんさん)
ペットといっても、散歩の必要がある“犬”であれば、飼った方がいいとシニア生活文化研究所代表理事の小谷みどりさんは言う。
「家にこもりがちだったり、人と接することが苦手だったりする人でも、犬の散歩のために外を歩いていると、自然と人とあいさつするようになります。そこから会話や人間関係が広がり、孤立化が防げるので、犬を飼うのはおすすめです」(小谷さん)
【Q2】趣味や推しを作るべき?
<A2>絶対に作るべき!
「私が働く老人ホームでは、歌手の氷川きよしさんのポスターを貼って推し活をしているかたがいて、生き生きしています。推し活もいいですし、読書や歌(カラオケ)、大人の塗り絵、クロスワードなどの趣味を楽しんでいるかたも多いですね。夢中になれるものがある人はとても元気です。挑戦してみたけれどハマらなかった、でもいいと思います。趣味を探す行為自体が大切で、趣味を探すことを趣味にしてもいいと思っています。女性は比較的、趣味や推しを見つけるのが上手なのですが、男性は趣味がなく、一日テレビをボーっと眺めているケースが多いので、夫婦で一緒にできる趣味があると理想的です」(たっつんさん)
小谷さんは、人間関係が広がる点でメリットがあるという。
「習い事や趣味の活動で人と会うことで、人間関係が広がります。共通の目的で会う人とは、話が弾みやすく、仲よくなりやすいので、趣味や推しは作るべきだと思います」(小谷さん)
【Q3】友達を作るべきか
<A3>「知人」をたくさん作ろう
小谷さんはボランティア活動をし、シニア食堂を開催するなどして、近所に知人をたくさん作っているという。
「シニア食堂では、私が材料費を負担し、参加者に調理などをお願いしています。普段からちょっとしたことを頼む習慣があると、いざというときも『助けて』と言いやすいと思います」(小谷さん)
友達を作るのが苦手なら別の方法もある。
「人と会う代わりに読書がおすすめ。会話の疑似体験ができ、知識も増えます。また、対面せずとも、SNSのオンラインチャットなどでコミュニケーションは取れます」(家族信託コンサルタントの横手彰太さん)
■こんな意見も「大切なのは関係性より会話」
「友人だ知人だというより、話していて楽しい友達が1人いればいいと思います。大切なのは話すこと。話さないと言葉を忘れ、表情が乏しくなって認知症の症状が進みます」(たっつんさん)
【Q4】誰との時間を優先させる?
<A4>そのとき人生を共有したい人
「子供や孫といると多少の疲れを感じるけれど、パートナーや配偶者と一緒であれば居心地がいい、という場合は後者を選びます。人はいつ死ぬかわからない。貴重な時間を誰と共有したいかという視点で考えるべきです」(小谷さん)
「パートナーや配偶者との時間を優先させた方がいいと思います。子供や孫にはそれぞれの人生があり、こちらの思い通りにはいきません。一方で、パートナーや配偶者は共に人生を歩む相手ですから。特に一緒に趣味を楽しんだり、子供や孫を喜ばせるための行動をしたりできると理想的だと思います」(たっつんさん)
■こんな意見も「孫の成長は一瞬だから…」
「孫の成長を見られるのはほんの一瞬。孫を抱っこしたり、行事に参加したりすることが、幸福感につながるなら、お子さんやお孫さんとの時間を優先してもいいと思います」(横手さん)
取材・文/桜田容子 イラスト/こさかいずみ 写真/Getty Images
※女性セブン2025年10月9日号
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