倉田真由美さん「ナマモノにハマる世代」くらたまね~&らいふVol.9
漫画家の倉田真由美さんが夫を失ってから、よく考えるのは「これからの人生をどう楽しんで生きていくのか」ということ。知人が出演する舞台を観に行ったときのこと。これまであまり触れてこなかった生のお芝居、「ナマモノ」に触れ、感じたことは――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。新たな描きおろし漫画も収録した最新の書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
ナマモノにハマる世代?
お芝居やライブ、コンサートなどの「ナマモノ」にはあまり触れてこない人生でした。
映画は好きなので家でもよく観ますし、映画館で観ることもあります。でも舞台での演劇を観に行くことはほとんどしてきていません。夫もそうだったので、我が家で「ナマモノ」鑑賞は、子どもが小さい時の遊園地で行われるイベントくらいのものでした。夫が抱っこした小さい娘が、「妖怪ウォッチ」のライブを観ながら踊っているのは、元気な頃の夫が映った貴重な動画の一つです。
でも最近、近い世代の友人や知人がナマモノにハマっている話を耳にするようになりました。落語やミュージカル、演劇。そしてとうとう、「俳優をやることになったから、観に来て!」という知人まで出てきました。
ナマモノにはあまり馴染みがない私ですが、知っている人が出る舞台ならすんなり入っていけそうです。
そういえば、去年は私の著作「だめんず・うぉ〜か〜」の朗読劇を観に行く機会がありました。数年ぶりの「ナマモノ」です。朗読劇なので役者の動きはほとんどなかったですが、自分の作品の舞台化なのでやはり特別な思いで鑑賞しました。
知人が出演する舞台、飲み会で飲んだくれている様子しか知らない理系女子Rがどのような演技を見せてくれるのか、劇団アフリカ座の「不思議の国のアリンス」を上演している大塚駅から程近い萬劇場に足を運んできました。
知人が出演する舞台を観て感じたこと
劇場は満席でした。令和のキャバ嬢3人が江戸時代の吉原にタイムスリップし、花魁たちとひと悶着、ふた悶着あって一体どうなる…?というお話。舞台って、背景が映画のようには変わらないのに、ちゃんと違和感なく物語に入れるのが不思議です。
そして圧倒的に伝わる、演者の方々の熱気。これは直接実物が目の前にいるからこそ、ナマモノの醍醐味です。
人間の、真剣さ。緊張。力のこもった声、喋り方。
他人のエネルギーを浴びることで自分の中の何かが刺激を受けるというか…まるで演者から目に見えないほどの小さな粒子が飛び散ってそれに打たれるかのような。これは、映像を通してでは体験できない感覚です。
ナマモノにハマった人が、同じ舞台を何度も観に行くのを、「なぜ同じ話を…?」と不思議でしたが、少しその気持ちが分かったような気がしました。
知人Rの演技も想像していた素人演技を超えていて、立派に女優でした。芝居で食べていくのは大変と聞きます。実際、ほとんどの舞台俳優さんはアルバイトなど他の仕事をしながら舞台に立っているそうです。でも好きな舞台に立つために、日々頑張っている。生き甲斐ってこういうものだよなあ、と感慨深いものがありました。
私の生き甲斐はなんだろう。
若い頃は仕事、恋愛と明確にあったものが見えなくなって随分経ちます。
観劇後の帰り道、エネルギーに当てられた私は、以前から行きたいと思っていた豪華すぎるパフェを勢いに乗って食べに行きました。「フルーツすぎ」の4200円のいちごパフェ、「これも一つの生き甲斐だな」と思いつつ、いちごのずば抜けた美味しさに舌鼓を打ちました。
