【認知症の人の食事サポート】「味がわからない?」「食べ方を忘れてしまう…」困った問題への5つの工夫【管理栄養士解説】
厚労省によると65才以上の5人に1人が認知症という推計もあり、自分も親のことも気になるところ。認知症の親の介護をしている人もいるだろう。認知症になったとしても欠かせないのが日々の食事だ。そこで介護施設やデイサービスなどで栄養相談を担当する管理栄養士の川鍋仁美さんに、認知症の人がおいしく、安心して食事するためのポイントについて解説いただいた。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
認知症になると食事の味はどう感じるのか?
高齢者施設やデイサービスの栄養相談を受けていると、認知症のかたやご家族は、「食事量が減った」「食事の仕方を忘れてしまった」「食事がなかなか進まない」など、さまざまな問題を抱えているかたがいらっしゃいます。
また、認知症の進行にともない、「いつか味がわからなくなってしまうのでは…」と、不安に感じているかたもいらっしゃるかもしれません。「食事をおいしく食べる」ことは生きる楽しみにもつながるもの。そこで、認知症と味覚について考えてみたいと思います。
そもそも加齢により口内環境が変化し、味を感じにくくなることはあります。
認知症の進行によって「味を感じなくなるか?」といえば、そんなことはありません。実際には味覚そのものが失われるわけではなく、味の「感じ方」や「受け取り方」が変化していると考えられます。
認知症による食事の味の変化や懸念点
これまで私が接してきた認知症の利用者さんのケースから、味覚に関する変化と対処法を提案していきましょう。
味の識別が難しくなる
「甘い・しょっぱい」といった味の違いは感じてはいるものの、その味わいを「判断」することが難しくなり、なんとなく味がぼやけて感じる、別の味のように判断しているなどのケースがあるようです。
その結果、よりわかりやすい味やご自身が心地良く感じる味のものを求め、「甘いもの」「濃い味のもの」に偏ってしまう傾向も見られます。
食への関心の低下
認知症のかたの中には、「食事そのものへの関心」が低下してしまうケースもあります。「食べること」への意欲が低下すると、「おいしさ」も感じにくいため、食欲低下につながり、結果的に低栄養を招いてしまうこともあります。
認知症のかたへの食事提供で気をつけたいこと
認知症だからといって味が消えて感じなくなるわけでなく、「味をどう感じて」「どう受け取るか」が変化している可能性があるわけです。こうした問題を解決するために、食事で工夫できる点を考えていきましょう。
食事提供の際に気をつけたいのは、「ご本人の負担なく、安心して食べられる」環境づくりが大切です。
【1】食事に集中できる環境づくり
テレビなどの音や周囲がざわざわ話している環境など周りの刺激が多い環境では食事に集中しにくくなります。できるだけ落ち着いた環境で「いまは食事の時間」としっかりと認識してもらうことで食べることに集中しやすく、味や風味など食に関する情報を整理しやすい環境づくりは重要です。
食べこぼしなどが気になる場合は、ご本人が気に入りそうなエプロンや、介助者の負担を減らせる使い捨てエプロンなども取り入れてみるといいかもしれません。
【2】食事の提供の順番を考える
一般的には料理は品数が多いと嬉しいものですが、認知症のかたの中には、お皿がたくさん並ぶと、どれから食べていいのかわからなくなり、混乱を招いてしまうこともあるようです。
1皿ずつ、1品ずつ提供するのもよいでしょう。また、たんぱく質をしっかり摂って欲しいので、肉や魚などの主菜の皿を先に提供するなど、優先的に食べてほしい食事から提供するなど、「シンプル」な食卓を意識しましょう。
また、1枚のお皿に副菜や主菜、ご飯などを盛り付けた「ワンプレート」も、小皿がいくつも並ぶよりは「食べやすい」と感じるケースもあるようです。
【3】食卓はシンプルに、皿やカトラリーに工夫を
箸やスプーンなどカトラリー使い方や、食器の持ち方がわからなくなってしまうケースもあります。食卓には使うものだけを並べてシンプルに、使いやすい持ちやすいカトラリーや食器を探してみることもおすすめします。道具が変わるだけで食べやすくなり、おいしく感じていただけるかもしれません。
【4】本人の好みを尊重しながら栄養バランスを考えてみる
認知症になると、好き嫌いが極端になり偏食になるケースも多いようです。
以前まで食べられていたものを急に食べなくなる場合もあり、対応に困ることもあるかもしれません。体調に注意は必要ですが、医師と相談してどのくらいのものを食べてよいのか確認しながら、なるべくご本人が好まれるものを提供して欲しいと思います。
栄養バランスは大切ですが、食事量が減って低栄養になる方が心配です。「食べたい」という意欲がある限り、お好きなものを召し上がっていただきながら、1日の中で栄養量バランスを取れるのが理想的です。1日の献立をトータルで考えてみましょう。
栄養が偏っているなと感じる場合、栄養補助食品なども活用し必要な栄養素を補えるといいですね。
【5】声かけの工夫を
認知症のかたの食事サポートで最も重要といえるのが「声かけ」です。
食事を提供するご家族や介助者も時間がなく余裕がないときは、「食べて食べて!」と急かしたくなるものですが、ご本人が「安心して食事をすすめてられる」ように声がけを心がけたいものです。
食材の説明をする
どんな料理なのか、食べる前に声をかけてみましょう。食材を細かく刻んだ料理や炒め物など、ご本人が何かわかるように食材の中身を具体的に伝えることで、混乱せず、安心して食べることにつながります。
たとえば、「今日は豚肉と玉ねぎのハンバーグですよ」「ほうれん草を刻んだ和え物ですよ」と、具体的に伝えることで安心して食べてもらえるサポートになります。
栄養面の話題をプラス
「わぁ、おいしそうですね」「どんな味ですか?」といった合いの手や、「お肉は筋肉のもとになるから大切ですね」「ほうれん草のビタミンで肌も髪もキレイになりますね」といった栄養面の話題などもいいかもしれません。「食べてみよう」という前向きな気持ちを後押しするような声がけを考えたいですね。
身近な人の優しい言葉かけや会話は、食事は「楽しい」「おいしい」と感じる手助けになると思います。
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認知症のかたの食事サポートは、「きれいに、きちんと食べる」ことよりも、「安心して食べてもらう」工夫が大切です。食事の提供仕方や声かけを実践しながら、いつまでも「おいしいと感じてもらえる」ための、食事環境を整えられるとよいですね。
