眼科では教えてもらえない近視の直し方 改善に役立つ「40センチルール」「コーヒーブレイク習慣」とは?
眼鏡やコンタクトレンズによる矯正で不便なく生活はできるものの、眼科に行っても根本解決はできない「近視」。しかし、不便はないからと言って放置した結果、近視が進んでしまうと、緑内障などの罹患リスクを上げてしまう。そこで、裸眼視力2.0を持ち、『最新の視力研究で導き出した 何歳からでも目がよくなる方法』(アスコム)を上梓したブライトアイ代表の平賀広貴さんに、近視の進行を抑制するための方法について教えてもらった。
教えてくれた人
ブライトアイ代表・平賀広貴さん
監修
眼科専門医・松岡俊行さん
まつおか・としゆき。医学博士。眼科専門医。1992年、京都大学医学部医学科卒。眼科研修の後、1996年、京都大学大学院医学研究科。2001年、ロンドン大学客員研究員。京都大学大学院在学中に「Science」、ロンドン留学中に「Nature」に論文掲載。2008年、京都大学大学院医学研究科准教授。2019年、江坂まつおか眼科開業。2021年、医療法人アメミヲヤ設立。著書に『眼科医が考案 1日1分読むだけで目がよくなるマジカルフレーズ』(アスコム)、『スマホアイ 眼科専門医が教える目と脳をと体を守る方法』(同)など。
疾患とされておらず、眼科では治してもらえない「近視」
平賀さんによると、そもそも「近視」は医学的な定義では疾患とはされていないのだという。目の中に入る光の屈折が異常な状態で、目が見えにくくても、眼鏡などで補正すれば問題が解消されるためだ。
「実際に目が見えにくいと感じて眼科に行っても、検査をして近視と判断されれば、屈折度数に合わせた眼鏡やコンタクトレンズの処方をされることになります。多くの場合、近視の治し方は眼科で教えてもらえないのです」(平賀さん・以下同)
眼軸は一度伸びると戻せない
近視の大半は、眼球の奥行方向が物理的に伸びてしまう「軸性近視」で、光の焦点が網膜より内側に来るため見えなくなる症状だが、手術するには眼球を傷つけてしまう可能性が高く、さらに有効な薬もない。
視力を改善する手術としてレーシック手術があるが、これは角膜の形を変えて光の屈折を変える手段であり、近視の根本原因である、伸びた眼軸を正常な長さに治すものではない。
「眼軸は一度伸びてしまうと縮める方法がなく、もとに戻す方法はないとされています。通常、20代以降は眼軸の長さが安定しますが、無理な近業(近くを長時間見ること)により、大人でも眼軸が伸びることがあります」
近視を進行させないために行いたい「近業抑制」
近視による不便さは眼鏡やコンタクトレンズで対処できるが、近視が強度に進むと、緑内障や網膜剥離などに罹患する確率を上げてしまう。そこで、近視を進行させないために行いたいのが「近業抑制」だ。
特に現代では、パソコンやスマートフォンの画面を見ることが多いが、画面を見ているうちに画面に目が近づき過ぎて、近距離で長時間見てしまったり、まばたきの回数が減り、ドライアイの症状が出やすくなったりしている人が多い。
「文字をスクロールすることで見る対象が動き、それを追うために目の周りにある眼輪筋や毛様体筋も疲れてしまい、いわゆるデジタル眼精疲労も出やすくなってしまいます」
近業抑制に効果的な「40センチルール」
無意識な近業を防ぐために採り入れたいのが、画面から最低40センチの距離を取る「40センチルール」だ。「新聞紙の一面の横幅くらいとイメージするといいでしょう」と平賀さん。40センチ以上離れたうえで、ディスプレーの高さが目の前に来るようにし、首の血管の圧迫防止のため、猫背にならないよう注意するのがポイントだ。また、一度の作業は最長でも1時間までとし、時々離席して歩くことも大切だ。
「ちなみに、携帯電話のiPhoneには、眼精疲労や近視リスクの抑制のために、『画面との距離』機能が搭載されています。これは顔を近づけすぎて操作している時間が長くなると、遠ざけるように注意してくれるものです。そういった機能を積極的に活用することも、デジタル時代においてはとても有効といえるでしょう」
目をよくするために採り入れたい「コーヒーブレイク」習慣
厚生労働省では、1時間のVDT作業(液晶画面を見て行う作業)の後に15分の目を休める時間を取り入れるよう指導しているが、ただ目を休めるだけとなると、シンプルであるがゆえに、なかなか習慣として定着させるのは難しいもの。そこで平賀さんがおすすめしているのが「コーヒーブレイク」だ。
「ただし、席でパソコンを見たまま缶コーヒーを飲んだのではあまり意味がありません。席を立ってコーヒーを淹れることで、本当の意味で休憩になります」
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