年を重ねると歩行姿勢が悪くなる原因は? 形成外科専門医が解説する「健康になる質の高い歩き方」のコツ
歳を重ねるごとに、歩くのがつらくなってきた…。そんな悩みを抱える人は、まず歩くときの姿勢を改善するべきだと語るのは、『1日3000歩 歩きたいのに歩けない人のための すごい足踏み』(アスコム)の著者で形成外科専門医・菊池守さん。菊池さんが教える、加齢と歩行の関係性と歩行の質を高める歩き方について紹介する。
教えてくれた人
菊池守さん/日本形成外科学会認定・形成外科専門医
2000年、大阪大学医学部卒業。国内の医療機関に勤務した後、アメリカ・ジョージタウン大学創傷治療センターに留学し、足病学に出会う。帰国後、佐賀大学医学部附属病院形成外科診療准教授、日本初の足の総合病院「下北沢病院」院長を歴任した足の専門医。一般社団法人「足の番人」理事長、ウェブサイト「教えて、足病先生!」(https://ashibyo.com/ashibyo.com)の校長も務める。
なぜ中高年以降は姿勢の悪い歩行になるのか
菊池さんによると、中高年以降の人は、歩くときの姿勢が崩れているケースが少なくないという。特によく見られるのは、ひざが曲がったままの歩行姿勢だ。
「これは、加齢が原因でひざが曲がったと思われがちですが、実は腰が曲がった前傾姿勢が原因です。
これまでの生活習慣に加えて、背骨や腰回りの組織の変化によって腰が前方に曲がっていくのが中高年以降の世代。腰が曲がったことによる前傾姿勢を正すために上半身を起こすと、体はひざを曲げてバランスを取ろうとするのです」(菊池さん・以下同)
加齢とともに歩行に変化が現れる
年齢を重ねるにつれて、先ほどのように腰やひざが曲がったままの姿勢で歩こうとすると、歩幅が狭くなる、左右の足の間隔が広がる、つま先が外を向くようになるなど、悪循環を生む歩き方につながると菊池さんは語る。
「ひざが曲がると、歩幅が必然的に狭まり、トボトボ歩きになります。そして、ギッコンバッタンとリズムが崩れた歩き方をしている場合は、足などに何らかの障害がある可能性が考えられるため、その障害のケアや治療をする必要があります」
質を高める歩き方のコツ
それでは、どのように改善するべきか。歩行の質を高めるために意識したいことを教えてもらった。
「まず、歩幅を意識しましょう。歩くときの間隔は、大きすぎず小さすぎずがベストです。無理に大股歩きをする必要はありません。筋肉量がそこまで多くない人がふくらはぎの筋肉を過度に使うと、むしろ早く疲れてしまって逆に筋力が落ちる可能性があるからです。
また、目線を起こしてしっかり前方を見るようにして歩くことも大切です。地面ばかり見て歩いていると、いつのまにか前傾姿勢になり、体のさまざまな部分に負荷がかかるため、悪影響が連鎖してしまいます。できれば、自分の体が上からつり上げられているかのように、背筋を伸ばすようにしてください。
最後に、横断歩道を渡りきれる程度の、少し早歩きになるスピードで歩くことを意識しましょう。1日平均歩数が8000歩以上、その内に早歩きのような中強度の活動を20分以上行うことで、生活習慣病など代表的な11の疾患が予防できるのです」