「緑内障」は40才以上の2割も!近視の人ほどなりやすい?原因や予防策を医師が解説
日本人が一日にスマートフォンを見る平均時間は2~3時間といわれる。さらに、パソコンやタブレットを使ったリモートワークや自宅学習もすっかり当たり前となった。想像以上に疲弊している現代人の“目”のケアについて、いますぐ見つめ直す必要がありそうだ。
スマホの普及で「近視」が増えている
スマホが普及した近年、至近距離で画面を見る時間が圧倒的に増加した。それによって、世界的に近視の人が増えていることが指摘されている。
中目黒眼科院長の杉本由佳さんが話す。
「近くを見る時間が増え、遠くを見ることが減ると近視になりやすくなります。現代の若い人は、スマホによって近視化傾向があると世界的に問題視されています。約30年後には世界の人口の50%が近視になると警告する意見もあります」
文部科学省発表の「学校保健統計調査」(2021年度・速報値)によれば、裸眼視力が1.0未満の児童と生徒の割合は、幼稚園で24.81%、小学校では36.87%、中学校では過去最多の60.28%という結果だった。1998年の同調査と比較すると、幼稚園児こそ大差がないものの、小中学生は約10%も増加している。
川原眼科理事長の川原周平さんが警鐘を鳴らす。
「近視が強い子供は、そうでない子供と比べて、将来的に緑内障、眼底出血、網膜剝離といった疾患を発症するリスクが高くなります。いずれも、最悪の場合は失明の危険がある疾患です」
近視の人ほど緑内障になりやすい
日本人の失明原因で最も多く、40才以上の2割を占めるのが緑内障だ。視神経が死滅していく病気で、何年もかけてゆっくり視野が欠けていくが、大きく症状が進行するまで、ほぼ自覚がない。約90%の人が発症していることに気づいておらず、治療を受けていないとされる。
一度死滅した視神経は復活させる方法がないため、治療が遅れると失明に至る恐れがある。現在も緑内障のメカニズムは解明されておらず、眼圧を下げる治療によって進行を遅らせるしか対策がない。2000~2001年に岐阜県多治見市在住の40才以上の男女4000人を対象とした緑内障の疫学調査では、40才以上の20人に1人が緑内障であると判明した。
近視の人が緑内障になりやすいといわれる理由を、杉本さんは次のように解説する。
「緑内障の原因を大きく分けると、遺伝や加齢のほか、近視も大きな因子であるとされています。近視の人は眼球の奥行き(眼軸・がんじく)が長く、網膜が引き伸ばされて薄いので、目の構造上、視神経が弱くて障害されやすい。そのため近視の人ほど緑内障のリスクが高くなるといわれます」
子供の近視は世界で予防策が講じられている中、日本が遅れをとっていることが指摘されている。
「台湾の研究によると、毎日外で2時間遊ぶ子供とそうでない子供を比較したところ、外で遊んだ子供は近視になる率が低かったとの結果が出ています。これは、太陽光に含まれる『バイオレット光』を浴びることで近視が予防されるからです。そのため、台湾やシンガポールなどでは外遊びをカリキュラムに組み込む動きが活発です」(川原さん・以下同)
バイオレット光に近視を抑制する作用があることは、2016年に慶應義塾大学が世界で初めて発見した。
昨今、「目に悪い」と常識になっている“ブルーライト”も、新たな見解が議論されている。
「実はブルーライトカットレンズを使うと、バイオレット光もカットされてしまうのです。日本眼科医会も小児にブルーライトカット眼鏡を装用させることを推奨せず、むしろブルーライトカット眼鏡が発育に悪影響を与えかねないという声明を出しています」
教えてくれた人
杉本由佳さん/中目黒眼科院長、川原周平さん/川原眼科理事長
※女性セブン2022年10月13日号
https://josei7.com/
●緑内障ほか失明につながる怖い眼の病気|早期発見チェックテスト