「一度にたくさん食べられない…」高齢者の食事に”ちょい足し”で栄養アップする簡単テク12選【管理栄養士提案】
高齢の親が「以前より食事の量が減ってきている」「介護中の家族がしっかり栄養が摂れているか心配」。そんな食事の悩みを抱えている場合、管理栄養士の川鍋仁美さんは、「一度でたくさん食べられない場合には、普段の食事に“ちょい足し”」をしてみるのがおすすめだという。効率よく栄養素をプラスするためのアイデアを教えてもらった。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
少量でも高カロリー!効率よく栄養を摂る「ちょい足し」アイデア
高齢になると、消化機能が低下してしまうため食べられる量も減ってしまいます。活動量も低下しているので、空腹感を感じづらいこともありますが、食べる量が減ってしまうと筋肉量の減少につながり低栄養になりやすいので注意が必要です。
何か特別な食事を作らなくても、普段の食事にちょこっとだけプラスして栄養を補っていくのがおすすめです。効率よく栄養をプラスする「ちょい足し」方法を考えてみましょう。
【1】ご飯やお粥に「たんぱく質、ミネラル」
毎日食べている主食のご飯やお粥に、食材をちょい足しすることで栄養価がアップします。ポイントは、たんぱく質。鮭フレーク、鶏そぼろ、しらす干し、卵などたんぱく質を多く含む食品をプラスしましょう。
高齢者のかたは、ご飯のお供といえば漬物を好まれることが多いのですが塩分が高め。漬物よりも、たんぱく質を含むものを選んで欲しいですね。
また、高齢者のかたの中には、亜鉛不足によって味覚を感じにくくなっているケースも。海苔やふりかけは、亜鉛のほかミネラルなども補えます。
【2】麺類には「揚げ玉や温泉卵」
ご高齢のかたの栄養相談でお話を伺うと、昼食では「麺類」を食べているというかたが結構多いんです。麺類、そうめんやうどん、そばなど単品で食べてしまうと、栄養価が偏りがちです。
あと1品、野菜やたんぱく質を含むおかず(冷ややっこなどでもOK)を追加することが理想的ですが、難しいときは、麺の器にちょい足しをしましょう。
たとえば、調理不要な温泉卵やさつまげ、かまぼこでたんぱく源をプラス。揚げ玉を加えるだけでも栄養価は上がります。
噛む・飲み込む力に問題なければ、乾燥わかめや干しえびを加えるとミネラルや鉄分などを補えます。麺をゆでるときに乾燥わかめや干し野菜を一緒に入れるのが手軽でおすすめですよ。
【3】パンには「+たんぱく質を意識」
朝食はトーストだけで済ませるというかたも多いかもしれません。パンには、マーガリンやジャムでサッと済ませるのではなく、たんぱく質を意識してプラスすることで栄養価がグッとあがります。
たとえば、食パンにケチャップを塗ってスライスチーズをのせてピザトースト風に。また、マヨネーズを塗ったパンに生卵を乗せてトーストするとたんぱく質が補給できます。
朝食でしっかりとたんぱく質を摂取できると、生活リズムが整いやすいといわれています。たんぱく質摂取の理想は「起床後1時間以内」を目安に。
食欲が落ちている時こそ、少量でも朝食をとることで生活リズムが整います。なるべく食事のリズムを一定に保つことを意識して欲しいですね。
「朝食は食べない」という場合でも、チーズやヨーグルト、牛乳1杯でも良いので、朝起きて1時間以内に何か口にすることからはじめてみましょう。
【4】食事や調理時に「油をちょい足し」
同じ食材でも調理法を変えることで高エネルギー食に変えることができます。
たとえば、「蒸し・茹で料理」を「揚げ・炒め料理」にすることで、カロリーはアップします。食べられる量が減ってきている方こそ、健康を意識しすぎてヘルシーなもの選ぶよりまずはカロリーをアップして十分な栄養をとることが先決です。
ドレッシングなどを選ぶときも、あえて「ノンオイル」ではなくオイル入りのものを選んでもよいでしょう。
亜麻仁油やMCTオイルなどはクセがないので、ヨーグルトやコーヒー、お椀のみそ汁などに1さじ程度さっとかけて食べるのもおすすめです。
【5】調味料に「マヨネーズで栄養価アップ」
調味料をちょい足しすることでさらに栄養価を高められます。卵や油が主成分のマヨネーズは意外とカロリーアップに便利な調味料です。
たとえば、魚にマヨネーズを塗ってホイル焼きにしたり、魚のムニエルにマヨネーズを添えて一緒に食べたり、ちょい足しで手軽にカロリーアップができます。
同時に、魚のパサつきも抑えられるので唾液量が減少している高齢者には食べやすくなるので一石二鳥です。マヨネーズは、サラダとも相性が良いので使いやすいです。
【6】みそ汁に「豆乳」で減塩にも
大豆を使った食材は、ちょい足しにおすすめの食材が多いです。
「油揚げ」や「厚揚げ」をみそ汁に。野菜だけの場合よりもたんぱく質もとれますし、油で揚げてあるのでカロリーアップにもつながります。
また、みそ汁を作るときに、いつも使う水分の半分を豆乳に変えてみるのもおすすめです。豆乳はコクとまろやかさがプラスされるので、みその使用量も抑えられて、塩分量を減らすことにもつながります。
【7】万能ちょい足し食材「きな粉」
「きな粉」は、いろんな食材に”ちょい足し”しやすい食材です。乳製品との相性も良いので、ヨーグルトや牛乳、コーンフレークやオートミールを食べるときにもプラスするといつもと風味をかえられるので手軽なアレンジになります。
【8】食べる前に「チーズ」をちょい足し
パスタやスープには「粉チーズ」をプラスして栄養価をあげましょう。粉チーズやとろけるチーズなど、食べるときにかけるだけなので手軽にちょい足し出来ます。
噛む、飲み込む力に問題がないかたであれば、プロセスチーズや裂くタイプのチーズも間食としておすすめです。甘いものが好きなかたには、クリームチーズを甘く味つけした市販のデザートも手軽に食べられるのでおすすめです。
【9】飲み物に牛乳や豆乳をプラス
コーヒーや紅茶をよく飲むかたは、牛乳や豆乳をプラスしてカフェオレやミルクティーにするのもおすすめです。ちょい足しでもストレートで飲むときよりもカロリーはアップします。
牛乳が日常的に買いに行けない場合は、スキムミルクを常備してコーヒーや紅茶に1さじほど加えるだけでカルシウムやたんぱく質を補うことができます。
【10】ヨーグルトにちょい足し
ヨーグルトには、フルーツをトッピングするのもいいでしょう。生のフルーツよりも缶詰のほうがシロップの甘さがある分、高カロリーとなります。
またアマニ油やえごま油などの良質な油をスプーン1杯程度プラスすると栄養価も上がり、便秘予防も期待できます。
【11】栄養補助食品を手軽にちょい足し
薬局やドラックストアなどでは高齢者向けの高栄養補助食品が販売されています。栄養補助食品は栄養素がバランスよく配合されているので、効率よく栄養を摂ることができます。
市販の栄養補助食品は、ドリンクタイプやゼリー、ムース状、アイスなど形状や味も色々と選べます。
ゼリーやムースタイプには、デザートとして食べる甘いフレーバーのほか、とうふ味や茶碗蒸しといった和風のテイストもありますので、副菜としても活用できるでしょう。
『アイソカル(R)ゼリー ハイカロリー』(ネスレ日本) とうふ味
少量で効率よくカロリー補給。1カップでご飯一杯分のカロリー(150Kcal)が摂れる。フルーツやチョコレートなど多彩な味があるが、食事の副菜として「とうふ味」が便利。
実勢価格(編集部調べ):1367円(8個セット)
https://healthscienceshop.nestle.jp/blogs/isocal/isocal-jhc-index
和風だし香る茶碗蒸し(森永乳業クリニコ)
80gの食べ切りサイズで、たんぱく質5.0gと茶碗に小盛り白米の半分相当の100 kcalのエネルギーが摂れる。
価格:4536円(1ケース24個入り)
https://www.clinico.co.jp/products/assistance/jelly/chawanmushi.html
【12】市販のプロテインをちょい足し
高齢者向けのプロテインパウダーも販売されています。大容量の袋タイプのものもありますが、初めての場合はスティックタイプのものがおすすめです。
普段の飲み物や食事に加えるだけで手軽に効率よく良質なたんぱく質を取り入れることができます。高齢者の筋肉量減少(サルコペニア)の予防にはたんぱく質が必要不可欠です。
たんぱく質は一度にたくさん摂っても、吸収量には限りがあるので少量でも3度の食事や間食、飲料などでバランスよく取り入れることが大切です。
明治 メイプロテイン(明治)
食事に1包サッと振りかけてたんぱく質5g補給。亜鉛やカルシウム、鉄分なども。使いやすいスティックタイプ。
実勢価格(編集部調べ):1080円(14包)
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高齢者や介護が必要なかたは、なかなか自分で食事量の変化に気づきにくいかもしれません。家族や介護をされているご家族が食事を残していないか、食べににくそうにしていなかなど、ちょっとのサインに気づいてあげられると早めに対応することができます。
食が細くなってきた場合、味覚障害や便秘、入れ歯など歯の問題や嚥下機能の低下による噛みにくさ、飲み込みにくさが原因になっていることも。適切な治療や食材の調理法で改善できる場合もあります。食事量の減少が心配な場合は、早めにかかりつけ医や管理栄養士に相談してくださいね。
普段の食事で毎食のちょい足しが、栄養価をアップに繋がります。栄養価の高い食材や補助食品を上手に取り入れて、低栄養の予防を意識しましょう。