酒やラーメン、肉の脂身もOK!日常生活で実践したい【中性脂肪・コレステロール値】をコントロールする生活習慣を医師が解説
「私が診察する患者さんのうち、中高年男性の2人に1人は中性脂肪が高い傾向があります」
そう指摘する栗原さん。そうした傾向が見られるのは、「炭水化物(糖質)の摂りすぎと運動不足が原因」だという。
「つまり、必要なのは食生活の改善と運動であり、実際、中性脂肪は生活習慣を改めることでほぼ完全に数値を下げることができます。しかし、現実には脂質異常症の患者に対して、LDLの数値を下げるための薬が処方されるケースも多いです」
コレステロール薬といえば、悪玉を下げる「スタチン系」が多く利用されることが知られているが、必ずしも中性脂肪に対して効果が望めるわけではないという。
「悪玉のLDLが160mg/dLを超えるとスタチン系がよく処方されますが、これはLDLを下げる効果は高くても中性脂肪を下げる効果は低いとされます。スタチン系には肝機能障害や横紋筋融解症などの副作用もあるので、遺伝的にLDLが高くなる『家族性高コレステロール血症』以外では、薬に頼らずに中性脂肪の数値を下げたほうが動脈硬化対策には有効と言えます」
栗原さんの近著『自分で無理なくコレステロール・中性脂肪を下げる!』(日東書院本社刊)でも「食生活の改善」が強調されている。
食生活を見直すうえでは、数値が高くなる原因を正しく認識することが大切だ。
「中性脂肪の値が高くなるのは脂もの(脂質)の摂りすぎが原因と思われがちですが、実際は炭水化物(糖質)の影響が圧倒的に大きいのです。ご飯や麺類、甘いもので摂取した糖質は、体内でブドウ糖となって小腸で吸収され、エネルギーとして使われますが、余ると肝臓に運ばれて、新たな中性脂肪の材料となるからです」
炭水化物(糖質)の摂取が多ければ、脂質を控えても意味はないという。中性脂肪を増やさないための食事の工夫とは、具体的にどんなものか。
「まずは食べる順番に注意しましょう。糖質の少ない野菜や海藻類から食べ始め、主菜、最後に炭水化物の順番で摂ると血糖値の急上昇が抑えられて、エネルギーを脂肪に変えて蓄える性質を持つインスリンの分泌も抑えられます。そして、血糖を急上昇させる早食いをやめる。急いで食べるとインスリンの多量分泌につながりますから、食事はよく噛んでゆっくり食べる習慣を身につけましょう。あと、夜遅くに食事を摂ることを避ける。睡眠中のエネルギー代謝が落ちることで脂肪になりやすいからです。翌朝、食欲が湧かずに朝食を抜き、また夜にたくさん食べるという悪循環も招きかねません」
栗原さんが中性脂肪を減らす食材として推奨するのが「オサカナスキヤネ」の頭文字となる9品目だ。
「オはお茶・オリーブオイル、サは魚、カは海藻、ナは納豆、スは酢、キはきのこ、ヤは野菜、ネはネギ類です。例えばお茶に含まれるカテキンは中性脂肪を減らすポリフェノールの一種として注目されています。また、青背魚に多く含まれるEPAやDHAはHDLを増やし、LDLと中性脂肪を減らすという非常に優れた作用を持つ食材です。9品目を毎日摂るのが理想ですが、3日で9品目をすべて摂れば、効果が期待できます」
ビールや日本酒、ワインはOK。アルコールの効能で中性脂肪を下げる
また、血液中の脂質は単に減らせばいいというわけでもないという。
「LDL(悪玉)が低すぎると免疫力が低下し、がんの発症リスクが高まるとの報告があります。65歳を過ぎたら肉の脂身などを適度に摂るほうがよく、脂質と炭水化物が多く含まれるラーメンでも、週1回程度なら問題ありません。私は店で『麺硬め』をリクエストし、ほうれん草やメンマ、チャーシューなどのトッピングの後に麺を食べるようにしています。糖質の吸収を遅らせて満腹感が高められるからです」
糖質が多いフルーツや菓子類は控えるべきだが、カカオ含有率70%程度の高カカオチョコレートは「コレステロールの酸化を防ぎ、血糖の上昇を緩やかにする食物繊維が豊富なので積極的に摂りたい」という。
さらに、適度な飲酒は「むしろ中性脂肪や脂肪肝に好影響を及ぼす」と栗原さんは言う。
「飲酒量と中性脂肪や脂肪肝などの関係を調べた研究結果では、アルコール量が20〜40g未満(日本酒なら1〜2合、ビールなら500ml程度)であれば、中性脂肪が上がらないことが判明しています。この研究では、飲酒量が増えるほどHDLは増加し、LDLは減少する傾向も見られました。肝臓はアルコールを分解する際に糖質をエネルギーとして使うので、血糖値と同時に中性脂肪も下がると考えられます。ただし、ビールや日本酒、ワインに含まれる程度の糖質は許容範囲ですが、フルーツ果汁やシロップ入りのサワーなどは糖質が多く注意が必要です」
日常生活で実践!中性脂肪&コレステロールがどんどん改善する生活習慣【食生活編】
【1】炭水化物(糖質)を控える
ご飯やパン、甘いもの、果物はできるだけ控えて
【2】早食いをしない
血糖値の急上昇で中性脂肪を増やす原因に
【3】お酒は適量なら問題なし
ビールは1日500ml缶1本、日本酒は1合(180ml)程度
【4】65歳以降は「脂身」を積極的に摂る
免疫力低下を防止する「上質な脂質」摂取を
※週刊ポスト2025年3月28・4月4日号
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