腎機能を低下させる食材とは?【「腎臓」と「前立腺」を守る12の秘訣を名医が解説】
腎臓や前立腺は加齢とともに機能が低下しやすく、「尿が出にくい」「トイレに行く回数が増えた」といった排尿の悩みを訴える男性も増加傾向にある。自覚症状が分かりにくい腎臓や前立腺の病気を予防&改善する、名医が自らの知見と経験をもとに実践している「寿命を延ばす」日常の知恵を聞いた。
教えてくれた人
上月正博さん/腎臓専門医・山形県立保健医療大学学長
永井敦さん/泌尿器科医・川崎医科大学附属病院病院長
減塩&血糖値を上げない食事と運動で腎臓の働きを改善
異変を自覚しづらく「沈黙の臓器」と言われる腎臓。気づかぬ間に腎機能が冒され慢性腎不全になると、人工透析が必要になる場合がある。
山形県立保健医療大学学長で腎臓専門医の上月正博さんが語る。
「辛い人工透析の治療を我慢すれば生き続けることはできますが、腎不全で怖いのは合併症のリスクが高まること。心筋梗塞や脳卒中など循環器系の病気のほか、免疫力が下がることでがんを発症しやすくなります」
腎臓の健康を保つために上月さんが実践しているのが、次の習慣だ。
「減塩、血糖値を上げない食事、運動が大切です。運動は30分程度の速歩きを毎日続けるのが理想ですが、私の場合は難しいことがあり、朝、始業前の仕事場で『なんちゃって腕立て伏せ』で筋トレもしています」
上月医師の腕立て伏せは「肘を軽く曲げるだけ」だというが、「1日1000回を週2〜3回」こなしているという。
「始めた10年前は20回やるごとに休憩が必要でしたが、徐々に回数が増え、68才となった今は100回を1日10セットできるようになりました」(上月さん)
食生活にも工夫が。
「高血糖状態が続くと、腎臓の糸球体が障害を受け濾過機能が低下します。だから私は血糖をコントロールするため、白米やパンの代わりに毎食豆腐を1丁食べています。ただし、醤油はかけません。味が物足りなく感じたら、ラー油やチューブ入りの刻みニンニクや生姜、粉末の和風出汁などで“味変”をします」(上月さん)
塩分の多い味噌汁やラーメンを避けるのはもちろん、「食卓に塩や醤油などの調味料は置かない」と話す上月さん。
「腎臓がんのリスクを低下させると言われる緑茶は毎日飲みます。逆に飲まないようにしているのは果物や野菜のジュース。糖分過多になるので、甘すぎる果物も控えます」
「リン」の過剰摂取にも注意が必要だという。
「腎機能の低下に繋がるリンはソーセージなどの加工肉やスナック菓子に多く含まれます。私は極力食べません」(上月さん)
だが、たまの“ご褒美”も必要と笑う。
「2週間に1度の出張時、仙台駅で好物のかき揚げそばを食べます。油と塩分と糖質だらけで、これが美味しいんだ(笑)。この息抜きがあるから、日々の節制が維持できているのかもしれません」
41度以上の熱い風呂やサウナはNG!前立腺やEDの予防法とは?
腎臓以外の泌尿器系でも、年を重ねると様々な機能の衰えが目立つようになる。川崎医科大学附属病院の病院長で泌尿器科医の永井敦さんは、排尿障害や頻尿など、前立腺に関するトラブルを防ぐために「定期的な射精」を心がけているという。
「射精が健康の証しなのは医学的に明白。射精はいわば前立腺の有酸素運動で、血流改善効果が高い。前立腺肥大症の予防や前立腺がんの抑制につながると考えられます」
米ハーバード大学公衆衛生大学院の調査(16年)では、「月に21回以上射精する男性」の前立腺がんリスクは、「月4〜7回の男性」に比べて約22%も低かったと報告されている。
「年52回以上の射精をする人は、それ以下の人に比べて長生きしたとの海外のデータ(20年)もあります。最低でも、週1回は射精を維持するよう心がけたいですね」(永井さん)
定期的な射精はED(勃起不全)対策としても有用だ。永井さんが言う。
「前立腺疾患やEDの予防には、男性ホルモン(テストステロン)の維持も大事。その材料となる肉類や魚、卵、乳製品などの動物性タンパク質、大豆などの植物性タンパク質を摂るよう意識しています。テストステロンの産生を促すため、肉や魚に抗酸化作用の強いニンニクやタマネギ、オリーブオイルと合わせた地中海料理もよく食べます」
日常生活では「朝勃ちの有無」の確認も重要なポイントになるという。
「糖尿病や高血圧など基礎疾患が原因の器質性EDの場合、朝勃ちがなくなります。一方、睡眠障害を除く心因性EDの場合は基本的に朝勃ちはなくならない。朝勃ちは体の異常の有無を示すサインになるのです」(永井さん)
前立腺の健康にとって避けるべき習慣は何か。
「精子の劣化や精巣の萎縮につながる恐れがあるので、41度以上の熱い風呂やサウナには入りません。精巣を包む陰嚢を涼しく衛生的な環境に保つため、下着は通気性の良い素材を選ぶことを心がけています。また長時間の座位は前立腺の血流を阻害するので、1時間に1度は立ち上がり軽い運動をしています」(永井さん)
「沈黙の臓器」と「前立腺」を守る12の秘訣を名医が解説
分野のプロだからこそ分かる「寿命を延ばす」日常の知恵を紹介する。
「腎臓病」を防ぐ習慣・招く習慣 (上月さん監修)
<防ぐ習慣>
【1】簡単腕立て伏せをする
肥満、糖尿病は腎臓機能を低下させる。それを防ぐために運動が大切。身体に負担をかけない腕立て伏せをする
【2】豆腐を食べる
カロリー調整とタンパク質摂取のために豆腐を毎食食べる。塩分を取りすぎないためにカツオ、昆布の合わせダシ粉をつける
【3】2週に1度のかき揚げそば
節制だけでは長続きしない。2週に1度、自分へのご褒美でカロリー、塩分多めの「かき揚げそば」を食べる。ガス抜きも大切
<招く習慣>
【4】スナック菓子を食べる
リンの摂りすぎは腎機能低下を促進する。スナック菓子やベーコン、ソーセージなどにはリンが多く含まれている
【5】白いパンを食べる
精製小麦で作られる白いパンは炭水化物が多く血糖値が上がりやすいため、腎機能の低下を招く
【6】野菜ジュースを飲む
野菜ジュースは大量の糖分が入っている。糖分の過剰摂取は肥満や血糖値の上昇を招き、腎機能の低下に繋がる
「前立腺疾患・ED」を防ぐ習慣・招く習慣 (永井さん監修)
<防ぐ習慣>
【7】肉とタマネギを一緒に食べる
テストステロンの材料となる肉、魚、卵、大豆などの良質なタンパク質と抗酸化作用の強いタマネギやニンニク等を合わせて食べる
【8】定期的な射精を心がける
米・ハーバード大学の論文では月に21回以上射精する男性の前立腺がんリスクは、月4〜7回の男性に比べて約22%も低かったと報告
【9】朝勃ちを確認する
朝勃ちは糖尿病や高血圧などの疾患や睡眠障害など身体の異常を示すサイン。朝勃ちの有無を確認し、思い当たる節があれば改善する
<招く習慣>
【10】ハードな運動をする
肥満・運動不足はEDのリスク因子だが、疲労の大きな運動はかえってテストステロンを低下させるため筋力維持程度にとどめておく
【11】熱い湯に浸かる
熱い湯温での入浴は精子の劣化や精巣の萎縮につながる恐れがある。41度以上の湯温は避ける
【12】厚手のパンツや重ね穿きをする
精巣を適度に冷やすため、パンツの中が蒸れて熱を帯びるような厚手素材や重ね穿きはやめ、通気性のよい素材のものを穿く
※週刊ポスト2025年2月14・21日号
●尿漏れ・夜間頻尿に悩む人へ「排尿問題」を改善して幸福度を上げる8つの方法を医師が解説
●沈黙の臓器<腎臓>を守る食事と運動法「注意すべき食品添加物2種、自宅でできるゆったり運動2選」【医師監修】
●尿に泡、トイレの回数が増えたら要注意!“沈黙の臓器”腎臓の機能が低下するリスク、改善に役立つ「5つの食材」を医師が解説