テレビの音量や話し声が大きくなったら要注意。65才以上の約40%が該当する「加齢性難聴」とは?【耳の老化チェックリスト付き】
最近“聞き返し”が多くなっていませんか?聴力の低下は自分で気付きにくく、放置すれば症状が悪化していく悩み深い問題だ。「耳の老化」の進行を窺わせるサインを、チェックリストにまとめた。自分が難聴の疑いがあるか確認してみてほしい。
教えてくれた人
坂田英明さん/医師、川越耳科学クリニック院長、埼玉医科大学客員教授
65才以上から増え始める『加齢性難聴』
「最近、妻から『テレビの音量が大きすぎる』と注意されまして。自分では気付いていなかったのですが、会話の際に聞き返されることが増えたとも言われた。聴力が衰えてきたのかと思いショックでした」
都内在住の60代男性はそう嘆息し「これからさらに聞こえなくなっていくのでは……と思うと怖くて仕方ない」と漏らす。
年齢とともに聞こえが悪くなる症状は、医学的には「加齢性難聴」と呼ばれる。
聞こえづらさを訴える数多くの患者を治療し、「難聴の名医」と呼ばれる川越耳科学クリニック院長の坂田英明医師(埼玉医科大学客員教授)が言う。
「『加齢性難聴』の患者は65才以上から増え始め、同年代では男性の40%近くが『軽度難聴以上』の症状があると推計されています」
なぜ年を重ねると聞こえづらくなるのか。
「空気の振動として耳に伝わる音は、外耳から中耳、鼓膜を経て内耳に届きます。内耳で聴覚を司る『蝸牛(かぎゅう)』の中には無数の『有毛細胞』があり、そこで振動が電気信号に変換されて脳へと伝わり、 “具体的な音”として認識されます。老化により有毛細胞が損傷したり減少すると、次第に聞こえにくくなり、進行すると加齢性難聴を発症します」
特に聞こえづらいのが高い音
加齢性難聴が厄介なのは、音が聞こえないのではなく、「どんな音かを判別するのが難しい」状態であることだ。
「内耳に異常が起きて、言葉を聞き分ける能力や音を識別する機能がうまく働かない状態を感音難聴と呼びます。その一種が加齢性難聴で、雑音のある環境下での聞き取りや、早口での会話の理解が困難になるなどの特徴があります。症状はじわじわ進行するため自覚しづらいのが難点です」
そうした「耳の老化」の進行を窺わせるサインは「聞き返しが増える」ことだけではない。
「呼びかけられても気付かない、テレビの音量や話し声が大きくなった、なども耳の老化のサイン。また、運転中にサイレンを鳴らす救急車がどこから来るかわからないなど、音が鳴っている方向がわからないケースも。か行、さ行、は行の音の聞き分けが難しくなり、 “佐藤さん”を“加藤さん”と聞き間違えることもあります」
加齢性難聴では特に高音域が聞こえづらく、体温計やタイマー、スマートフォンなどの電子音に気付かないこともある。それらの症状は音への反応速度が低下していることを示すサインだという。
気になる人は下のセルフチェックリストを確認してほしい。
「一見してわかりづらい加齢性難聴は周囲の理解を得にくく、『年のせいだから』と諦めてしまう人がたくさんいます。しかし、聴覚機能の状態によっては、治療による改善や維持も可能です。難聴対策には症状の自覚が何より重要です」
「耳の老化」セルフチェックリスト
該当項目が1~5個あれば「耳の老化」が進行中、6個以上は難聴がかなり進行している可能性あり!
※監修・坂田医師
□ 聞き返すことが多くなった
□ 「テレビの音量が大きい」と言われることがある
□ 話し声が大きいと言われることがある
□ テンポの速い会話に付いていけない
□ 「佐藤さん」と「加藤さん」が聞き分けにくい
□ 体温計などの電子音が聞き取りにくい
□ 時間などの聞き間違いが増えた
□ 人の話し声が途切れ途切れに聞こえる
□ 駅などで声をかけられても気付かないことがある
□ ざわざわした街なかでの会話が聞こえづらい
□ 誰かと会話をすることが少なくなった
□ 何をするのも億劫に感じる
※週刊ポスト2024年11月29日号
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