井上順さんが語る補聴器生活20年「難聴を公表したらたくさんの優しさに巡り会えた」
誰しも年を取ると聞こえが悪くなってくるものだが、それを放っておく人が意外と多い。最近のオバ記者もそのひとりで、「見て見ぬフリならぬ、聞こえないのに聞こえてるフリをすることがある」という。そこで頼ったのが、補聴器歴20年の井上順さん(76才)。補聴器と聞こえについてうかがった。
井上順さん×オバ記者の耳より対談「耳を酷使してきた過去」
オバ記者(以下、オバ):井上順さんといえば、われわれ世代の大スター。いまでも、ヒット曲の数々を口ずさめます。
井上順さん(以下、井上):そうですか、ありがとうございます。
オバ:いまの歌手はコンサートなどで“耳ガード”をしているようですが、当時のミュージシャンはどうだったんでしょう?
井上:そういうのは一切ありませんでしたね。大音量が耳に悪影響を及ぼすなんて、そもそも思ってもいませんから。当時は縦横2~3mあるアンプがわれわれの後ろに3つも4つもあって、ドンジャカガンガン大音量が響くわけです。
オバ:ひゃー、過酷。
井上:バックの音に負けないよう大声で歌い出すと、それを聴いたバンドメンバーが「負けちゃいられん」と演奏がヒートアップする。すると、歌う側も音に負けまいとさらに大声に。そんな競い合いの繰り返しです。
オバ:あれほどの大音量で演奏する音楽って、順さんたちのGS時代くらいからでしょうか。以来、ずっと耳を酷使されてきたんですね。
井上:当時はいまのように歌詞が足元のモニターに映し出されるわけじゃなく、プロなんだから覚えてくるのが当たり前。だから、新曲を覚えるためにヘッドホンステレオのイヤホンを耳にさしたまま寝落ちしたなんてこともザラ。そんなふうに耳を酷使するのは歌手の宿命で、難聴に苦しむミュージシャンが実は少なくないんですよ。
50代で感音何難聴と診断
オバ:そんな順さんが聴力の低下を感じたのはいつ頃からですか?