40代から始まる「のどの老化」に注意!死に至る怖い誤嚥性肺炎を予防する「のどトレ」で飲み込む力を鍛えよう|のどの老化チェックリスト付き【医師監修】
年を重ねるごとに衰えていく飲み込む力。なかでも誤嚥によって引き起こされる「誤嚥性肺炎」は死に至る恐ろしい病気だが、日々のわずかな努力で防ぐことができる。嚥下(えんげ)力を鍛える1回5秒の「のどトレ」を名医が伝授する。
教えてくれた人
西山耕一郎さん/西山耳鼻咽喉科医院・院長
誤嚥性肺炎で亡くなる人が増えている
「病気とは無縁だった父が高熱を出し、呼吸困難で救急搬送されたのは今年3月のこと。『誤嚥性肺炎』と診断され入院治療を行ないましたが病状は改善せず、約1か月後に他界しました」
そう話すのは、70代の父を誤嚥性肺炎で亡くした遺族の男性だ。
「倒れる前々日まで友人と釣りに行くなど元気な様子だったので、突然、肺炎で命を落とすなど思いもしませんでした。1年ほど前から食事中にむせる、食べ物が飲み込みにくい、声がかすれるなどの症状はあったものの、本人も『年のせいだろう』とさほど気にしていなかった。誤嚥性肺炎の徴候に気づけなかったことが悔やまれます」
厚労省「人口動態統計」によると、2023年の肺炎による死者は約13万6000人(うち約6万人が誤嚥性肺炎)で、がん、心疾患、老衰に次ぐ死因の第4位となった。なかでも誤嚥性肺炎による死者は急増しており、2030年には現在の2倍に達するとの予測(2018年、東京都健康安全研究センター年報)もある。
『肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい』(飛鳥新社)をはじめ数多くのベストセラー著書を持ち、これまで1万人以上の嚥下障害患者を診てきた誤嚥性肺炎予防の第一人者・西山耕一郎医師(西山耳鼻咽喉科医院・院長)が解説する(以下、西山医師)。
「誤嚥性肺炎は、食べ物や飲み物、唾液など本来食道に入るべきものが、誤って気管から肺に入り細菌が増殖、炎症が起こる疾患です。通常はのどの入り口にある『喉頭蓋(こうとうがい)』というフタのような器官が防波堤となり、瞬時に喉頭を覆って気管への異物侵入を阻止しますが、加齢や病気でのど仏まわりの筋肉が衰えると、この動作が上手くいかなくなり誤嚥を起こしやすくなるのです。また、脳卒中などの病気が原因で、誤嚥時に咳をして異物を押し出そうとする反射機能が低下することがあります。そうなると、一段と誤嚥性肺炎のリスクが高まります」
のど仏が下がったら嚥下機能が低下している徴候
のどの筋肉は40〜50代から衰え始めるが、60代以降の男性は特に注意が必要という。
「定年後は人と話す機会も減り、通勤時の歩行など日常的な運動習慣が無くなることで全身の筋力が低下しがちです。のどの筋力も低下し、嚥下機能が急激に衰え始めます。男性は見た目でも分かるほど、のど仏が大きく下がってくるケースが目立つので、鏡を見てのど仏が首の中心より下がっていたら、嚥下機能低下の徴候と考えたほうがよいでしょう」
そのほか「水を飲むと咳が出る」「錠剤が飲みにくくなる」「声がかすれる」など、チェックリスト(下記参照)でひとつでも該当する症状があれば、のどの老化が始まり「飲み込む力」が低下していることを疑うべきだという。
「嚥下機能は体力に相関するので、年を重ねれば機能の低下は避けられません。『肺炎は老人の悪友』と言われるほど身近な病気で、75才以上の高齢者の肺炎は約8割が誤嚥性肺炎という報告もあります。治療が遅れ回復が困難なケースも少なくありませんが、嚥下機能を鍛えることで誤嚥のリスクを低下させることは可能です」
ひとつでも当てはまれば注意!「のどの老化」チェックリスト8
<1>食事中、むせたり咳き込むことが増えた
<2>水を飲む時もむせることがある
<3>大きい錠剤が飲みにくくなった
<4>「ごっくん」したとき喉仏が上がりにくい
<5>食中、食後に咳や痰が出る
<6>食事のスピードが落ちた
<7>声がかすれる
<8>以前より声が小さくなった