<介護美容>に関する実証研究レポート「8割の施設で継続希望、認知機能の維持にも期待」
今や多くの介護施設で取り入れられている「介護美容」。高齢者向けの美容サービスが、介護の場でどのような効果をもたらすのか。「第25回 日本認知症ケア学会大会」で発表された「介護美容が高齢者ケアに与える効果」に関する研究の結果をもとに、介護美容の最前線をレポートする。
介護美容で「高齢者の生活の質」の向上へ
政府の発表によると2040年には65才以上の高齢者の6~7人に1人が認知症になると予測されており、認知症の重症化予防は今の日本が抱える大きな課題だ。その予防策のひとつとして、高齢者の生活の質向上を図る「介護美容」が注目されている。
介護美容とは、介護の場において高齢者に美容サービスを提供することをいう。主にヘアカット、メイク、ネイルケア、アロマテラピーなどを行い身なりを整えることで、高齢者の心身全体へアプローチすることを目的としている。
介護美容のプロフェッショナル育成を専門とした「介護美容研究所」を運営するミライプロジェクトは、2024年6月15日、16日に行われた「第25回 日本認知症ケア学会大会」において、介護美容が高齢者ケアに与える効果に関しての実証研究の結果を発表した。
ミライプロジェクトは、2023年7月~2024年1月の約半年間、東京都と大阪府の施設に介護美容の専門家を派遣。介護美容施術が高齢者の身体・精神・認知的側面にどのような効果を与えるのかの実証研究を行った。
本研究は「介護美容」の医学的/科学的なエビデンスを収集/分析し、研究成果を「介護美容サービスのさらなる普及」と「安心/安全な介護美容サービスの開発」へ繋げ、高齢者の質の高い生活を守っていくことを目的としている。
介護美容サービス提供の結果を考察
今回の学会で発表された演題は、【1】「介護美容導入の効果と持続性-高齢者施設における実践と評価」と【2】「データに基づく介護美容の有効性の検証-ネイル施術による要介護認定高齢者への身体・認知・社会的側面への影響」の2つだ。
介護美容は高齢者施設で「8割が継続を希望」
まず、【1】については、介護美容施術を行うことで高齢者の身体・精神への改善傾向が一部みられたため、さらなる検討が必要と判断された。
また、施設職員への聞き取り調査を行ったところ、80%の施設職員が介護美容施術の継続を希望したという。施設職員や家族の理解による継続性の確保は必要と考えられるだろう。
ネイルなど複合的な美容施術「認知機能の維持に期待」
次に【2】については、複合的な美容施術により、要介護認定を要する高齢者のリハビリへの参加頻度の上昇、認知機能の維持などの効果が見られたという。
これらの結果は、介護美容施術が認知症高齢者の生活の質向上への一助となっていることを示していると言えるだろう。
介護美容を介してウェルビーイングな未来へ
ミライプロジェクトは、今後も実証研究を継続し、介護美容の有効性についての知見を広め、高齢者の生活の質の向上を目指していくようだ。
超高齢化社会へ突入し、増え続ける認知症高齢者へどう向き合っていくかが課題となる現代日本だが、介護美容による認知症予防が当事者と介護者のウェルビーイングの一端を担う場面も増えていくことだろう。
【データ】
ミライプロジェクト
https://www.mirapro.net/
スクール紹介
第25回 日本認知症ケア学会大会
https://ninchisyoucare.com/taikai/25kai/index.html
※ミライプロジェクトの発表したプレスリリース(2024年6月24日)を元に記事を作成。
写真/ミライプロジェクト提供 構成・文/秋山莉菜