兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第260回 面談ラッシュ!】
家中どこにでも排泄してしまう認知症の兄の症状に奮闘してきた妹のツガエマナミコさんでしたが、病状が急変した兄は現在歩くことができなくなり、ベッドの上だけの生活になったことで、在宅介護の状況にも大きな変化が訪れています。
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区分変更の申請をしました
先日、うっかり鍵を持たずにゴミ出しに出てしまい、オートロックゆえに思わぬ締め出しを食らったツガエでございます。土曜日の朝7時40分。「ゴミの日なんだから誰か出てくるだろう」と思いましたが、静かなマンションは足音一つ聞こえてきません。8時にはヘルパーさまがいらっしゃるので「ヤバイ…」と思っていると次第にトイレにも行きたくなってくる始末。やっと駐車場に向かう第一住人を発見し、「すみません」と事情を説明して家に入れたのはヘルパーさまが到着する5分前でございました。兄が歩けた頃には、ゴミ出しでも必ず鍵をかけて出ていたので、そんな失態はなかったのですが今後は気を付けなければと肝に銘じた出来事でございました。
先週から訪問看護師さまも入って万全の態勢になりました。契約書を交わして早速、便秘気味なので摘便(肛門に指を入れて便を出す医療行為)をしていただきました。両手いっぱいに出て、「水分がしっかり摂れていて、いい便ですよ」と褒められたのが、介護者としては嬉しいことでした。
ケアマネさまによると、介護保険の点数がすでにギリギリなので今のところ訪問看護師さまは週1回のみ。先日、介護認定の区分変更を申請したところで、じつは本日夕方に介護認定員の方が来訪されることになっております。要介護3だった兄ですが、これで要介護4か5になる見込み。そうなると介護保険内で使えるサービスは今より増え、訪問看護師さまは週2回お願いできます。しかし月々の支払も増えることは確実で、要介護度が上がれば特別養護老人ホームを利用する料金もしっかり上がります。
もうあまりお金のことを考えておらず、「かかるものはかかる」と諦めておりますが、施設入居後は兄の年金だけでは到底収まらないので、わたくしの生活設計も考えなければなりません。61歳、ツガエマナミコ、悩み多きお年頃でございます。
本日は、その介護認定員の方の前に、特別養護老人ホームの方がいらして面談をいたします。じつは、先日もう一軒のホームの面談もございました。じっくり兄の状況や状態をヒアリングされて、施設の説明も丁寧にしていただき、2時間たっぷりかかったので本日もそんなコースだろうかと思います。
後日、施設見学もさせていただかなければなりません。なにかと来訪者が多く、家から出られない中を縫っての仕事や見学の外出。売れっ子ではございませんが、マネージャーを付けたい気分でございます。
特別養護老人ホームに関しては、過去に痛い目(第229回)に遭っているので、お話の中で「WELCOME」な印象があっても期待をしないように自分に言い聞かせております。職員の方は面談にはいらしても「持ち帰って検討します」というスタンスなので、こちらが「ここがいいな」と思っても片思いで終わることもありましょう。「では契約を」と判子を付くその瞬間まで気を抜かずに最悪のケースを考えていようと思います。
そういえば、先日の病院の診察で驚いたことがございました。なんと診療代もお薬代も0円だったのです! 我が兄上の「自立支援医療受給者証」によると月額負担上限額は2500円。それを超えたので支払わなくてもいいそうなのです。上限額があることは知っていましたが、その恩恵にあずかれたのはこれが初めてでした。先生に診ていただいてお薬もいただいてお金を1円も出さないことに、どこか後ろめたさを感じました。そんな優れた保険制度がある日本に生まれたことに感謝しつつも、「これじゃ国の医療費がかさばるのも無理はない」と大いなる矛盾を感じた次第でございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
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