老化の新常識・非常識「コレステロール値は低いほうが健康か」「60代以上はダイエットより小太り」専門家が解説
肥満は糖尿病や心筋梗塞などさまざまな生活習慣病の原因になるとして、世を挙げてダイエットが推奨されている。お腹の肉がだぶついてきた中高年には耳の痛い話ばかり聞かされるが、過剰なダイエットは逆効果になる。
BMIの指標は「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」で算出され、肥満や低体重(痩せ型)の判定に用いられる。日本肥満学会が定めた基準では、18.5未満が「低体重」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」で、30以上は「強度の肥満」と捉えられる。
国立長寿医療研究センター理事長特任補佐の鈴木隆雄氏は、BMIと寿命の関係をこう語る。
「旧東京都老人総合研究所や国立がん研究センターなどの調査を総合的に見ると、若い世代の場合、BMI22~25程度の人が最も死亡リスクが低い。
しかし、年齢を重ねるにつれて少しずつ数値が上がってきて、65才以上で最も死亡リスクが下がるのが23~26程度、75才以上になると24~26程度になるようです。高齢期は普通と肥満の境界線、つまり“小太り”が最も死亡リスクが低いのです」
なぜこうした結果になるのか。
「60代以降は基礎代謝量が減ってきますので、摂取したカロリーが消費されずに蓄積され、小太りになりやすい。一方で体の機能低下や病気に対抗する生理機能も衰えてくるので、蓄積されたカロリーで補う必要がある。
BMIが18.5以下の高齢者は「がん」の発症率も高くなる
またフレイルのある65才以上の高齢者は、BMIが18.5未満の人は25以上の人に比べ、死亡率が3.4倍高いとする研究もあります。これはフレイルに加え、蓄えられたカロリーが少ないことに起因すると考えられます」(鈴木氏)
過剰なダイエットで病気への抵抗力が失われてしまうのは本末転倒だ。
「無理な食事制限で栄養不足になると代謝能力が低下するので、フレイルにもなりやすい。65才以上でBMIが18.5以下の人はがんの発症率も高いのです。
一説では、脂質が足りていないからだと言われています。細胞は薄い脂の膜で覆われており、その膜で細菌やがん細胞をはねのけようとします。しかし、脂質が十分にいきわたっていないと、脂の膜が細菌をはねのけられずに感染症になりやすく、がん細胞が侵入しやすい状態になる可能性も考えられます」(同前)
“痩せ型=健康”は、年齢によってはもはや正解ではなくなっているのだ。
※週刊ポスト2024年7月12日号
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