日本型「デザイナーフーズ」12の食品群とは|がん予防には栄養バランスが大切

 がんサバイバーの筆者が常日頃大切にしているのが、生活のリズム。食事、運動、睡眠をバランスよくとることで、体の不調を改善してきた。なかでも自分の体と向き合いながら、試行錯誤で学び続けているのが「栄養のバランス」だ。

 10年前に乳がんを患い、手術、抗がん剤治療、ホルモン治療等を行った本誌記者(59才・その後、再発なし)が、各種治療とともに真剣に取り組んだのが「食生活の見直し」。食事、運動、睡眠など日々の生活が、がん予防にいかに大切か、自らの体験を踏まえつつレポートします。

 * * *

食品化学で解析!栄養バランスが重要な理由

 1990年、アメリカでスタートした「デザイナーフーズ」計画。アメリカ国立がん研究所が中心となって「がん予防」に対する生活環境や食品を研究する国家的プロジェクトである。この取り組みによって示された指針は大きな成果をもたらし、アメリカのがんによる死亡者数の減少へとつながった。

 農学博士の大澤俊彦さんも、このプロジェクトに参加した学者のひとり。がんを抑制する食品の有効成分などを科学的に解明し、実際の食生活にどう応用すべきかを検証してきた。そこでわかってきたことが、がん予防の食事で最も重要なのが「栄養のバランス」であるということ。

 では、私たちはどうやってバランスをとればいいのか。どんな食品を組み合わせれば効果的なのか。大澤さんに教えていただいた。

―─栄養のバランスが健康維持に重要な理由を教えてください。

大澤 私たちが普段口にしている食材には、さまざまな効能があります。ブロッコリーなどのアブラナ科植物は免疫機能を高め、がん抑制に有効であったり、にんにくを日常的に摂取すると胃がんの発生率が非常に低くなるなど、数多くの調査報告があります。しかし、同時にそれら健康によいとされる「非栄養素」には、微量なりとも毒成分が含まれていることを忘れてはなりません。健康によいからと、サプリメントなどで1つの栄養ばかり多量に摂取すると逆に害を及ぼすことがあります。例えばアブラナ科植物などに多く含まれている「イソチオシアネート」。健康によい成分として一般的によく知られていますが、取りすぎると甲状腺肥大を起こしたり、がん化させたりします。ところが、別の野菜に含まれるポリフェノールやビタミンCを一緒に取ると、イソチオシアネートが解毒されて体に有効となります。このように多種類の食材をバランスよく取り入れることで、健康によい食事になるんです。

アメリカの研究結果に日本での食品を加えた12の食品群

─―どうやって食品の偏りをなくせばよいのでしょうか。

大澤 アメリカで行われたデザイナーフーズ・プロジェクトでは、多種多様の植物性食品の中から、がん予防の可能性の高い約40品目の食品が実験対象に選ばれました。研究の結果、効果が期待される最上位にランキングされたのが、「ユリ科のにんにく」、「アブラナ科のキャベツ」、「ショウガ科のしょうが」、「マメ科の大豆」、「セリ科のにんじんとセロリ」。ご覧の通り「○○科」という植物の分類学的種類が多彩で、それぞれ含まれている有効成分の特徴も違います。そこで私は最近、このデザイナーフーズに、日本で機能性研究が進められてきた食品「きのこ類のしいたけ、えのきたけ、マッシュルーム、きくらげ」、「キク科のごぼう、春菊」、「海藻類のひじき、わかめ、昆布」を加えた「12の食品群」に分類しました(下記参照)。この12の食品群を偏りなく摂取することが、がん予防や健康維持につながると考えています。

がん予防の可能性が期待できる12の食品群

●アブラナ科
キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー、大根、かぶ、芽キャベツ
イソチオシアネート、インドール、フラボノイド。
血管の老化を防ぎ、動脈硬化を予防。ユリ科に次ぐ、強いがん抑制効果が認められている。

●ナス科
トマト、なす、ピーマン、じゃがいも
アルカロイド、カロテノイド、フラボノイド。
アルカロイドは、薬にもなり毒にもなる抗がん剤として使われている天然由来の有機化合物。

●ユリ科
玉ねぎ、にんにく、あさつき、にら
機能性が期待できる主なファイトケミカル(植物中に存在する化合物)は硫化アリル、フラボノイド。
免疫機能の向上、強いがん抑制効果がある。

●セリ科
にんじん、セロリ、パースニップ(白にんじん)、パセリ、せり
カロテノイド、テルペノイド、フラボノイド。
カロテノイドは植物色素の総称で、強力な抗酸化力を持ち、眼病や生活習慣病、がん予防に効果的。

●ウリ科
きゅうり、かぼちゃ、メロン
ポリフェノール、テルペノイド、カロテノイド。
ポリフェノールは植物に含まれる苦みや色素成分で、有毒物質を無害物質に変える作用がある。

●キク科
ごぼう、春菊
食物繊維、テルペノイド。
水溶性食物繊維のイヌリン成分は、大腸の運動を活発にし、腸内の善玉菌を増やす働きを持つ。がん予防にも有効。

●ミカン科
オレンジ、レモン、グレープフルーツ
アスコルビン酸、フラボノイド、テルペノイド、カロテノイド。
アスコルビン酸(ビタミンC)は、がんや動脈硬化予防、老化防止に有効。

●きのこ類
しいたけ、えのきたけ、マッシュルーム、きくらげ
β-グルカン、食物繊維、エルゴチオネイン、ポリフェノール。
β-グルカンは血糖値上昇抑制、免疫活性、抗腫瘍効果、感染症予防効果などがある。

●海藻類
ひじき、わかめ、昆布
ヨウ素、ハロゲン化フェノール。
ヨウ素は細胞の成長を促す人間に不可欠なホルモンの一種。ただし取りすぎると甲状腺腫を発症することも。注意。

●穀類・豆類・油糧種子
玄米、全粒小麦、大麦、亜麻、からす麦、大豆、インゲン豆、オリーブ
セレン、ポリフェノール(リグナンなど)、フィチン、食物繊維。
セレンはビタミンEなどと一緒に働き細胞の酸化を防止、がん予防に役立つ。

●香辛料
しょうが、ターメリック(うこん)、ローズマリー、セージ、タイム、バジル、タラゴン、カンゾウ、ハッカ、オレガノごま、しそ
テルペノイド、リグナンやクルクミノイドなどのポリフェノール類、アルカロイド。
テルペノイドはリラックス効果、高血圧や炎症抑制に効果的。

●嗜好品
緑茶、紅茶、ウーロン茶、ココア、コーヒー、チョコレート
カテキン、プロアントシアニジンなどのポリフェノール類、アルカロイド。
カテキンは抗酸化作用、抗ウイルス作用が強く、がん予防に効果がある。

12の食品群をバランスよく食べる

─―12の食品群をなるべく均等に取ると効果があるのですね?

大澤 この食品群からそれぞれ1~2種類選択して、それに肉類や魚類を加えて献立を考えるとよいでしょう。自分の食事に「何科」の食品が足りていないかを判断し、できるだけ違うタイプの栄養成分を取るように心がけてください。例えばアブラナ科の食品を多く取ったら、解毒力の強いポリフェノールを多く含んだチョコレートなどを食後のおやつに食べてバランスをとるなど。野菜と果物とターメリックなどの香辛料を一緒に摂取すると、大腸がんや食道がん、肝臓がん、前立腺がんや皮膚がんなどの発症を抑制するという報告もなされています。

─―サプリメントに頼る生活ではなく、朝昼晩の食事が大切なんですね。

大澤 その通りです。サプリメントはあくまでも補助的栄養素。昔はそんなに1つのものを大量に取るという食習慣はなかったはずです。植物の毒性分も、苦みや辛みなど舌で感じることで食べる量を制限し、体に役立てていました。サプリメントだけに頼ると、人間が本来もつ味覚も鍛えられなくなります。また、カロリー制限や塩分摂取制限のような「守りの栄養学」だけでは体の機能を高められません。これからは、もっと食品の機能を学び、バランスのとれた栄養を積極的に取る「攻めの栄養学」が必要となるでしょう。

バランスよく食べるレシピ!アンチエイジング弁当

●インド風サグカレー弁当

インド風のカレー風味野菜炒めやチキンが入ったお弁当

●キャベツのサグ

<材料>(3~4人分)

にんにく(みじん切り) 10g
しょうが(みじん切り) 10g
玉ねぎ(スライス) 150g
キャベツ(ざく切り) 400g
にんじん(ざく切り) 50g
マッシュルーム(スライス) 50g
いんげん豆(一口大) 50g
オリーブオイル大さじ 1
<A>
カレー粉大さじ 1
塩小さじ 1
しょうゆ大さじ 1
水大さじ 3
レモン 少々(好みで入れなくてもよい)

<作り方>

【1】フライパンにオリーブオイルをひき、にんにく、しょうが、玉ねぎを炒める。
【2】【1】にキャベツ、にんじん、マッシュルーム、いんげん豆を加え、ふたをして蒸し焼きにする。
【3】野菜全体がしんなりしてきたら、Aを加えて軽く炒める。

●鶏手羽元の塩麹焼き

<材料>(3~4人分)
鶏手羽元 5本
オリーブオイル大さじ 1
<A>
塩麹大さじ 1
しょうゆ小さじ 1
レモン汁小さじ 1
カレー粉大さじ 1

<作り方>
【1】Aを合わせた調味料に鶏手羽元を一晩漬け込む。
【2】オリーブオイルをひいたフライパンに【1】の鶏肉を入れて軽く焼き、ふたをして弱火で中に火が通るまで焼く。

※弁当はこのほかに、ゆで卵、きのこと小松菜のソテー、いちごとキウイを加えた。

●子供用・ボールおむすび弁当

ボール型のおむすびやおかずが並んだお弁当

●ボールおむすび

<材料>(1人分)
白米ご飯 茶碗1杯分
具 【1】ひじき、にんじん(しょうゆとみりんの甘辛煮)。【2】ちりめん、白ごま。【3】ほうれん草のソテー、鮭。【4】梅干し。【5】のりの佃煮。【6】しいたけのソテー。

<作り方>
朝食や前日の夕飯のおかず、作り置きや薬味をバランスよく利用。小さく丸めたご飯にそれぞれ具を混ぜる。

●ボール野菜

<材料>(1人分)
<A>
じゃがいも 1/2個
豆類 少々
<B>
じゃがいも 1/2個
純正ココア、砂糖 適量
<C>
かぼちゃ 50g
トマト 少々
塩、こしょう 少々
オリーブオイル 少々

<作り方>
【1】じゃがいも、かぼちゃは電子レンジで約6分温め、それぞれ崩してペースト状にし、塩こしょう、オリーブオイルで味を調える。
【2】<A>【1】のじゃがいもと豆類(缶詰)を混ぜて丸める。
<B>【1】のじゃがいもを丸めて、砂糖適量を入れた純正ココアをまぶす。
<C。【1】のかぼちゃと、細かく刻んだトマト少々を混ぜ合わせて丸める。

※おかずは前日に作り置きしておくと便利。このほか、きのこと鶏の照り焼き(サンドイッチレシピ参照)、茹でにんじん、ほうれん草のソテー、いちご。

●ヘルシー4色サンドイッチ

きのこと鶏肉の照り焼きやたまごなどが色とりどりに挟まれたサンドイッチがランチボックスに入っている

●きのこと鶏肉の照り焼き

<材料>(2~3人分)
鶏もも肉 1枚
玉ねぎ(スライス) 1/4個
しいたけ(スライス) 1個
しめじ 1/2房
塩、こしょう少々
オリーブオイル適量
<A>
酒大さじ 1
みりん大さじ 1
しょうゆ大さじ 1
砂糖大さじ 2/3

<作り方>
【1】塩こしょうをした鶏もも肉をAに約10分ほど漬け込む。
【2】オリーブオイルをひいたフライパンで玉ねぎ、しいたけ、しめじを炒め皿に取り置く。
【3】【1】の鶏もも肉をフライパンで軽く焼き、ふたをして弱火で中に火が通るまで焼きあげる。
【4】【2】を加え、鶏もも肉を漬け込んだ調味料Aの余りをからめて軽く火を通せば、サンドイッチの具が完成。

※ほかサンドイッチの具は、【卵】(ゆで卵を崩してヨーグルトを少々入れて、塩こしょう、オリーブオイルで味付け)、【かぼちゃ】(電子レンジでやわらかくしたかぼちゃに、刻んだトマトを加え、塩こしょう、レモン汁、オリーブオイルで味付け)、【魚のみそ煮缶】(魚の身にオリーブオイルを少々入れ、レタスに挟む)。

教えてくれた人

農学博士・大澤俊彦さん/1946年、兵庫県生まれ。東京大学大学院農学研究科博士課程修了。オーストラリア国立大学リサーチフェローを経て名古屋大学農学部へ。カリフォルニア大学デービス校客員教授。名古屋大学名誉教授。愛知学院大学心身科学部特任教授(人間総合科学大学特任教授兼任)。著書に『食べてガンを防ぐスプラウト健康法』など多数。

撮影/茶山 浩 料理協力/新谷君子

※女性セブン2019年7月4日号

●がんに克つ食事|抗がん作用のある天然のサプリメントスプラウト健康術

●北里大学名誉教授が教える|がん治療を補完する漢方と薬食同源レシピ

●がんの免疫治療研究者が教えるきのこ菌活でがん予防|免疫力を鍛えるきのこ料理レシピ

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