車椅子でおでかけ|『シネマ歌舞伎』映画館で気軽に歌舞伎初体験はいかが?
興味はあっても敷居が高くてむずかしいというイメージがある歌舞伎。ただ、最近はテレビなどでも歌舞伎役者を見る機会が増え、以前よりは身近に感じられつつあるようだ。それでも、なかなか劇場まで行く機会がないという人におすすめなのが、歌舞伎を映画館で楽しむという新しい観劇スタイル「シネマ歌舞伎」。歌舞伎の舞台映像が映画のように全国の最寄りの映画館で上映されているので、気軽に楽しむことができる。
「シネマ歌舞伎」ならではの魅力とおすすめ演目、そして、車椅子でのおでかけについての情報を紹介しよう。
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東京・東銀座にある歌舞伎座は、明治以来百二十余年、同じ場所で歌舞伎を上演してきた、まさに歌舞伎の殿堂。建て直されて新しくなった歌舞伎座が2013年4月にオープンしたニュースは記憶に新しいのではないだろうか。
その建て替えのために、歌舞伎座は3年間の休館に入ったが、その直前、2009年1月から2010年4月までの16か月間は、「歌舞伎座さよなら公演」と銘打たれて、永遠に語り継がれる名舞台が次々に上演された。
玉三郎、海老蔵、獅童…豪華役者が出演『天守物語』をシネマ歌舞伎で
その中のひとつの『天守物語』が、7月5日から11日まで「シネマ歌舞伎」として全国の映画館で観ることができる。
『天守物語』は、泉鏡花の戯曲の中でも屈指の名作とされる作品。白鷺城(姫路城)の最上階には異形の者たちが住むという伝説に、世にも奇怪な物語を巧みに織り交ぜて、鏡花は、美しい異界の者と人間との恋のドラマとして描きあげた。
今回上映される2009(平成21)年7月の歌舞伎座さよなら公演版は、主役の富姫を演じる坂東玉三郎ほか、市川海老蔵、中村勘九郎、中村獅童、片岡我當といった豪華な役者陣が顔をそろえ、ひときわ、華麗な舞台に仕上がっている。
「シネマ歌舞伎」では、このときの舞台がまるごと見られだけでなく、本編開始前に、玉三郎が鏡花に対する思いを語る特別インタビュー映像も付け加えられている。HD高性能カメラでの撮影と巧みなカメラワークによって、俳優の息づかいや衣裳の細かな刺繍まで見ることができる映像の美しさは、シネマ歌舞伎ならではの魅力といえる。
「シネマ歌舞伎」は2005年に第1作『野田版 鼠小僧』を皮切りに、これまでに30作以上の作品を公開している。『天守物語』はその中からの再上映だが、11月8日には、昨年7月大阪松竹座で上演された新・松本幸四郎と市川猿之助の共演による『女殺油地獄』が新作として公開される。
新作も加わり、ますますの充実が期待できる「シネマ歌舞伎」の上映館数は、『天守物語』が全国33館、新作の『女殺油地獄』が全国57館と、作品によって異なるなめ、まずはホームページでチェックをしよう。
→「シネマ歌舞伎」のホームページの作品一覧はこちらをチェック!
車椅子で鑑賞!「シネマ歌舞伎」の上映館のバリアフリー状況
「シネマ歌舞伎」は、通常の映画と同じように映画館(主にシネコン)で上映される。近年、映画館におけるバリアフリー化は進んでいるが、場所によって対応が異なってくる。
今回は、おすすめ演目の『天守物語』『女殺油地獄』の2作品とも上映する京都の「MOVIX京都」と埼玉県の「MOVIXさいたま」におけるバリアフリー状況をリサーチしてみた。
●「MOVIX京都」(12シアター)
・車椅子のまま鑑賞できるスペースの用意あり
・シアター内にスロープあり
・多目的トイレは、各階にあり
●「MOVIXさいたま」(12シアター)
・車椅子のまま鑑賞できるスペースの用意あり
・シアター内にスロープあり
・多目的トイレは、ロビーにあり
※両シアターとも、車椅子スペースのチケットは、劇場に直接電話をするか、劇場ロビーの有人チケット窓口でスタッフに声をかけて購入する。(インターネットでは購入できません)
電話は、音声ガイダンスから番号操作で劇場事務所に。
※障がい者手帳をお持ちの方は、提示により、通常料金2100円のところ、本人と連れの方2名まで割引料金で鑑賞できる。1500円(ただし、演目によって異なる場合があります)
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「すべてのお客さまに映画の素晴らしさを楽しんでいただけるよう、バリアフリー化を進めております。何かご不明な点がございましたら、劇場スタッフにお問い合わせください」とは、両館を運営する松竹マルチプレックスシアターズの担当者からのコメント。
「シネマ歌舞伎」に興味がわいたら、ホームページから上演スケジュールと劇場をチェック。最寄りの劇場があったら、電話をかけてみよう。敷居が高いと思い込んでいた歌舞伎だが、「シネマ歌舞伎」なら身近に接することができる。しかも、その映像は素晴らしい。きっと歌舞伎が好きになるにちがいない。
【データ】
「MOVIX京都」
電話:050-6865-3125
受付時間:10:00~22:00
「MOVIXさいたま」
電話:050-6865-4351
受付時間:9:30~22:00
取材・文/堀けいこ