58才記者の悩み「ひざがポキポキ鳴る」原因は変形性膝関節症の初期症状だった!対処法を医師が解説
人は誰しも加齢とともに歩行や日々の動作に支障が出るようになるが、関節に痛みやこわばりを感じても病院で治療せずそのまま放置してはいないだろうか。ひざの痛みを抱える本誌記者Y(58才)が整形外科を訪れてみると、意外な病状が明らかに…。診断から保険適用の治療法まで実際の体験談をレポートする。
教えてくれた人
丸山公(こう)さん/整形外科医。関町病院院長。変形性膝関節症のエキスパート。
健康保険で「ひざ痛」は治せる?
昔からひどい肩こりがあり、姿勢の悪さからくる腰痛を以前から自覚していた本誌記者Yだが、昨年から、椅子から立ち上がる際にひざがポキッと鳴り、時々痛みを感じるようになった。これくらいの症状で医者にかかってもよいものか…。
「痛みや違和感があれば、検査して異常がないか診てもらえばいい。症状があれば保険適用ですし、何もなければ安心ですよね」と言うのは、関町病院(東京・練馬)の院長で、膝関節症のエキスパート・丸山公さんだ。
ひざの音を放置すると変形性膝関節症に?
「ひざを曲げたりしたときに、『ギシギシ』『ボキボキ』といった音がするのは、加齢などで軟骨内の水分量が減り、軟骨の摩耗が進んで軟骨同士が擦(す)れやすくなるためと考えられています。ただ、軟骨の摩耗が進むと、ひざ関節の内側を覆っている膜が炎症を起こして水がたまるため、音が鳴っているのがわからなくなることがあるのです」(丸山さん・以下同)
そのため、痛みが強くなり、歩行に支障が出てから整形外科を受診する人が多いのが現状だという。
「音がしなくなっても軟骨の摩耗は進み、変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)の症状が悪化することがあるので注意が必要です。下記のチェックリストに1つでも当てはまることがあれば、ひざケアを始めた方がいいでしょう」
違和感があったら注意!ひざの音、危険度チェック
□ひざから、いつもと違う音がする
□ひざにこわばりを感じる
□動き始めるときにひざの音がする
□曲げ伸ばしするとひざの音がする
□階段を上り下りするときにひざの音がする
□ひざが腫れている、または熱感がある
□激しいスポーツをしている、していた
□過去にひざにけがをしたことがある
□座ったり立ったりが多い生活をしている
□最近歩き方が変わってきた
※1つでも当てはまる項目があれば、ひざケアを始めるべし!
本誌記者Yが検査を受けてみると病状が明らかに…
さっそくチェックリストを見てみると、記者Yは4つに該当。そう伝えると、問診の後、レントゲン撮影をして、しっかり検査した方がいいということに。
レントゲンは計4枚撮影した(「体育座りをした状態で上から<下の写真【A】>」「ベッドに寝て片足ずつひざを曲げた状態で内側から<同【B】【C】>」「足を伸ばして立った状態」の4枚)。
【レントゲン写真A】
【レントゲン写真B】
【レントゲン写真C】
「ひざを直接触り、足の曲げ伸ばしをするなどの診察も大切ですが、ひざの内部は見えません。正確に判断するためには、多角的にひざを診る必要があります。Yさんの場合は、左ひざのお皿(膝蓋骨)が不安定ですね。レントゲン写真【A】を見ると、左ひざ(L)の脛骨(けいこつ)(ひざ下の太い方の骨)と膝蓋骨の間が狭くなっており、レントゲン写真【C】では、膝蓋骨がやや低い位置にあり、曲げたときに膝蓋骨と大腿骨の間の関節の圧が上がりやすくなっています。ここが擦れて左ひざが時々痛むのでしょう。変形性膝関節症の初期症状です」
この先、歩けなくなってしまうのだろうか…。
「変形性膝関節症は女性に多いといわれていますが、この状態のうちに確認できたのはよかったですね。これなら消炎鎮痛剤の処方のみで充分でしょう。重症化するとヒアルロン酸ナトリウム注射を繰り返し行い、最近では再生医療の多血小板血漿法(たけっしょうばんけっしょう/保険適応外で約13万~30万円)をすることもあります。関節破壊が進むと人工膝関節置換術をせざるをえなくなります。いまからひざのケアを心がければ、予防もできますよ」
ひざをケアするためには、1日20~30分程度のウオーキングやラジオ体操など、ひざに過度の負担をかけない運動を行い、正座やあぐらなど足に負担となる体勢を続けないことが重要。
さらに、体重をコントロールして、ひざを温め、血流を促すこともケア&予防になるという。
「ひざの痛みは、関節を滑らかに動かす役割の軟骨が擦り減ることで起こります。軟骨の生成に必要な栄養素を、食事やサプリメントで摂ることも有効です」
ひざの痛みに効果的な栄養素として最近注目を集めているのが「コラーゲン・トリペプチド」だ。
これらには軟骨の破壊を軽減させ、摩耗をやわらげる効果がある。
「10週間におよぶ臨床実験で変形性膝関節症を患う被験者のひざの痛みを軽減させたという報告(※2)」もあるというから心強い。
年齢を重ねても自分の足で立って歩けることは大切なこと。サプリメントを取り入れながら、ひざに負担をかけない体重にする!
これが今年の目標だ。
(※2)日常的にひざ関節の摩擦音を自覚している被験者を対象に、家庭用ゼラチンパウーダーで知られる食品会社『ゼライス』と丸山さんが共同実施した実験による。