花粉症対策<最前線レポート>薬の選び方や人気の治療法を医師が解説「即効性が期待できる漢方薬は3つ」
花粉症治療は投薬だけではない。即効性が期待できる注射治療をはじめ、自分に合った治療法を知っておこう。
ゾレア皮下注射
重い花粉症の人に有効。人気の最新治療
2019年に承認された新しい治療法。花粉症の諸症状が重症で、内服薬や点鼻薬でも改善しない人や、抗ヒスタミン薬による眠気の副作用が強く出てしまう人を対象にしている。
「治療を受けられるのは、左のリストにある7項目をすべて満たした人のみなので、誰もが気軽に受けられるわけではありません。基本は1回の治療で1~2本の薬剤を注射し、これを花粉のシーズン中、2週間に1回、または4週間に1回のペースで行います。花粉が飛散し始めてから始めても間に合うのがメリットです」(長友さん・以下同)
体重や免疫グロブリンの値によって投与量や回数が異なるため、費用には個人差があるが、保険適用(3割負担・以下同)で約5000~7万円かかる。高額だが、副作用が少なく高い治療効果が認められると需要が急増している。
「花粉症の時期は、受験などの大事な行事と重なりがち。どうしても症状を抑えたいときだけ取り入れる人もいます。かかりつけ医に相談してみましょう」
【治療を受ける条件】
□ 季節性アレルギー性鼻炎の薬を使用したことがある
□ 内服薬を使用しても効果が不充分で、重症もしくは最重症の状態であると判断される
□ 血中の総IgE値が30~1500IU/mlである
□ アレルギーテストでスギ花粉症と診断されている
□ 12才以上である
□ 体重が20~150kgの間である
□ その他合併症や既往症歴がなく医師が治療を許可している
その他の注射製剤
安価で副作用が少ないのがメリット
【ノイロトロピン】
高齢者の慢性的な痛みの緩和などに使われてきたが、花粉症の諸症状にも有効性が判明。
「花粉のシーズンに入ってからも治療でき、長期連用しても副作用がほとんどないことがメリット。ただし効果には個人差があります」(岡宮さん・以下同)
治療は原則1週間に1回のペース。症状がある間は継続が望ましい。費用は保険適用で1000円程度。
【ヒスタグロビン】
いまある症状を緩和するノイロトロピン注射と違い、アレルギー体質そのものの改善に働く。
「50年以上前から世界中で使われている注射製剤です。花粉症だけでなくさまざまなアレルギー症状に、効果があるとされています」
花粉シーズン中は1週間に1回ほどのペースで、6回ほど治療を行うと効果が約3か月持続する。費用は保険適用で1500円程度。
舌下免疫療法
現状、唯一の根治療法。ただし時間がかかる
アレルギーの原因であるスギ花粉のエキスが入ったタブレットを毎日服用して、少しずつ体内に吸収させていく治療法。多くの花粉症治療が、いまある症状を緩和する“対症療法”であるのに対し、現状では唯一の“根治治療”とされている。
「簡単に言うと、スギ花粉が体にとって敵ではないことを毎日根気よく教えていく治療法です。最近はこの治療を希望する人が増え、薬が不足している状況です」(長友さん・以下同)
3年以上は治療が必要なため根気がいるが、7~8割の人が治療開始後1年目から効果を感じているという(保険適用)。
「副作用は口の中にかゆみを感じる程度で、5才以上であれば内服可能です。ただし、花粉の飛散中は治療を始められないのがデメリット。最近は薬の安定供給が確保されず、希望者が治療を受けられないケースも多いようです」
手術療法
レーザー治療と神経切断がメイン
主に鼻づまりがひどい人には、鼻の粘膜を焼灼するレーザー手術や、鼻腔内の神経を切断する「後鼻神経切断」手術などがある。
「レーザーは簡単な手術で即効性もありますが、再発率の高さが課題のひとつです」(長友さん)
レーザー治療は保険適用で1万円程度。効果は1~2年続く。神経切断手術は保険適用で20万円程度。充分に神経が切断されていれば効果は持続するとされる。
ボトックス点鼻療法
鼻水だけでなく目のかゆみにも効果が
しわ改善などに使われるボトックスを点鼻する方法。
「花粉が鼻の粘膜にくっつくと、神経伝達物質のアセチルコリンが鼻腺を刺激し、鼻水を出します。このアセチルコリンの放出をブロックしてくれます」(銀座ケイスキンクリニック院長・日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・慶田朋子さん)
1回の点鼻で約2~4週間効果が持続。自由診療となり費用は約1~2万円。
取材・文/植木淳子 イラスト/なとみみわ
※女性セブン2024年2月22日号
https://josei7.com/
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