シニア世代の“声ダメージ”に 声帯を大事にする3つの行動と喉を潤すオススメ食材4選【浜本千恵さん・専門医師監修】
シニア世代の悩みに「声が出しづらくなった」という人が多い。声をダメージから守るには、声帯を鍛えながら、口内を潤して乾燥を防ぐことが重要。そこで、人気管理栄養士の浜本千恵さんと専門医の方に「声がよく出る食材」と「声帯を大事にする3つの行動」を教えてもらった。日々のケアと食事で声帯を若々しく保とう。
教えてくれた人
●浜本千恵さん/管理栄養士
女性誌や料理雑誌でレシピを提案、メタボ予防や美肌、介護予防などをテーマにした講演、栄養指導を行う。
●楠山敏行さん/耳鼻咽喉科医
東京ボイスクリニック品川耳鼻咽喉科院長。声と喉の疾患を専門とし、声に悩む患者の診察、治療を行う。
声帯を大事にする3つの行動
「最近、声が出づらいなと感じたら、次の3つの行動を確認してみましょう」と言うのは、東京ボイスクリニック品川耳鼻咽喉科院長の楠山敏行さん。
■1つ目は、無理して大声や高い声を出していないかどうかだ。
「乾燥した場所で大声や高い声を出すと、声帯を損傷させます。必要以上に大声や高い声を出すのは控えましょう」(楠山さん・以下同)
■2つ目は、話していてだんだん息苦しくなっていないかどうか。
「息を吐く力である“呼気”は、声の駆動力ですが、加齢とともにその力は低下します。それを防ぐには『声の上下運動』がおすすめです。
『あー』という声を出しなら、どんどん音程を高くして、“ここが自分の最高”というところまできたら、今度はいちばん低い音まで徐々に下げていきます。これを1セット5回、1日2セット行うことで、肺活量も高まり、声が出しやすくなります」
■3つ目は、10分以上話すと声が出にくいと感じていないかどうか。
「日中ひとりで過ごすことが多いと声を出す機会も減少します。声を出さないと、声帯も衰えてしまうので、予防のために1日10分程度の朗読がおすすめです」
これらの改善と、喉を潤すことが声帯を守る上では何より重要だ。そこで、日常でできるケア法を紹介しよう。
声帯を守るために“喉を潤す” 4つの日常ケア
1. ミント系のタブレットやあめをなめる
手っ取り早く声帯を潤すためには“あめ”をなめること。
「おすすめはミント系のあめやタブレット。タブレットは粒が小さいので、上唇と歯ぐきの間に挟むとサラサラした唾液が出て口の中も潤い、声がよく出るようになります。それに日々の食事も大切です。飲んだり食べたりすると口内の渇きを改善でき、声帯も潤います」。
2. 話をする際は水を10分おきに飲む
声帯を鍛えるためにも声を出すのはいいこと。だが、声帯が乾燥したまま長時間話をするのはかえって声帯を傷めることになる。
「連続して30分以上話す場合は、意識して10分おきに水かお茶を一口ずつ飲みましょう。冷水でも常温でもOK。1日1.5L程度の摂取が望ましいですね。砂糖入りのジュースやスポーツドリンクは胃に負担をかけ、胃酸を多く分泌させるのでおすすめしません」。
3. マスクをする
喉や鼻は水分を含む粘膜で覆われているため、常に潤っている状態だが、空気が乾燥していると乾きやすくなる。
「夏でも冷房が効いている部屋は乾燥しやすい。それに、加齢に伴い体内の水分量も低下するため、鼻や口が乾きやすくなります。特に口呼吸をしている人は、口内が渇きやすいので要注意。口を閉じ、鼻呼吸を意識しましょう。喉がイガイガする人は、マスクをするのも有効的です」。
4. 喉用のスチーマーの活用も○
冷房の効いた室内は乾燥しやすいため、加湿器を使用するのもいいが、喉専用のスチーマーを使うのもおすすめ。
「喉用のスチーマーは喉に直接ミストがかけられるため、口内や喉がより潤いやすい。特に歌うのが好きな人や教師など話をする機会が多い人は、1日3回くらいスチーマーを当てるといいですね。私はプロの歌手には、『口の中がびしょびしょになるまでスチーマーを当ててください』と指導しています」。
喉用のスチーマーは家電量販店のほか、ネットでも販売されており、喉だけなら数千円程度。喉と鼻を洗浄し潤すタイプは1万円台で手に入る。
■『スチーム吸入器(EW-KA65)』1万3860円/パナソニック
約43℃のスチームで喉や鼻の奥まで潤す。
■『家庭用超音波吸入器 のどモイスチャー NK8021』8980円/日光精器
極小ミストで喉を潤す。コンパクトサイズで持ち運びにも便利。
※価格は編集部調べ。
喉を潤す食事方法
喉の健康を守るため、シニア世代が特に気をつけたいのが逆流性食道炎だ。
「この病気は、胃酸が食道に逆流することで食道から喉にかけて炎症が起こります。声帯まで影響が及ぶと喉の痛みや圧迫感、声枯れを起こすこともあるので、ふだんから胃酸を抑える食生活を心がけることが大切です」
と、管理栄養士の浜本千恵さんは言う。
「それには、消化のいい食事が基本。うどんや白身魚、豆腐、野菜は生野菜ではなく、軟らかく煮たスープやポタージュなどで摂るといいでしょう。冷たいものは胃を刺激するので、温かいものか常温で摂りましょう。
声帯の潤いを保つためには、かぼちゃやにんじん、レバー、肉類、大豆製品をバランスよく食べ、たんぱく質や粘膜を強化し潤いを与えるビタミンAや、良質の油を摂取し、粘膜を強くすることが大切です。
喉の調子がよくないときは、炎症を抑え、殺菌作用のあるしょうがとはちみつのドリンクを摂りましょう」
おすすめ食材
●しょうが
抗炎症作用がある
●はちみつ
抗炎症作用と殺菌作用がある
●なし、りんご
喉を潤し、炎症を抑える作用がある
●緑茶
カテキンに抗菌作用がある
「胃酸を抑える」おすすめレシピ【キャベツと卵のしょうが添えうどん】(1人前)
<材料>
キャベツ:葉2枚
うどん:1玉
卵:1個
白だし:大さじ2
おろししょうが:小さじ1
水:250ml
<作り方>
【1】キャベツは細切りに、卵は溶いておく。
【2】鍋に白だしと水を入れて煮立たせ、【1】のキャベツを入れて3分ほど煮る。
【3】【2】にうどんを入れてひと煮立ちしたら溶き卵を流し入れ、ふわっと仕上がったら器に盛る。
【4】おろししょうがを添える。
取材・文/廉屋友美乃 イラスト/鈴木みゆき
※女性セブン2024年9月5日号
https://josei7.com/