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《80代でゲームアプリ開発して脚光》90歳のICTエバンジェリスト・若宮正子さん、「のんびりしたいですか?」の質問への答えにみる“若さの秘訣”

81歳でスマートフォン向けのゲームアプリを開発し、「世界最高齢のプログラマー」として世界中の注目を集めた若宮正子さん(90歳)。現在は講師としてICT(情報通信技術)活用法などを伝えている。「シニア女性こそITに接してほしい」と話す若宮さんに、その心を聞いた。

もうすぐ90歳の今、時代の変化にワクワクする

――若宮さんは高校卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に就職されましたね。

若宮:世間的に信用があると思ったし、給料がいいから(笑い)。当時の銀行はまだ機械化が進んでいなくて、計算はそろばんでしょ、お札は手で数えていたし、お客さんの通帳にはインクをつけて記入していました。

私は不器用なので、先輩から遅いって叱られてばかりいたのですが、そのうちにデジタル化していって、人間の手でする仕事の比率がだんだん下がってきたので、仕事が楽しくなりました。

退職後の今は、プログラマーを経てICTエバンジェリストとして主に講演活動をしています。昨年は140回くらい講演を行いました。プログラミングは、もうしていないんですよ。AIの進化により、プログラマーの需要は減ると考えているんです。プログラム言語のPython(パイソン)なんて、AIが書けちゃいますからね。

――講演会で全国を飛び回っているんですね。

若宮さん:規則性のない生活です。始発の飛行機に乗るために早起きをする日もあれば、仕事が終わるのが深夜になる日もあります。こういう変化のある生活は私に向いていると思います。

――もうすぐ90歳ですが、のんびりしたいと思いますか?

若宮さん:思いません。この年齢だからこそ、全国のいろんな方とお話をして刺激を受けたり、これからどんな時代になるのかとワクワクしています。

変化が著しい時代、いくつになっても生涯学習で今を学ぶことが大事

――若宮さんは何歳からでも「やりたいこと」を見つけて成長できると提唱しています。

若宮さん:せっかく21世紀に生きているんだから、21世紀らしい体験してから死んでもいいんじゃないかって思いますよ。技術革新のスピードが加速していますし、世界の情勢もどんどん変わる。アンテナを広げて興味関心を持つだけで、やりたいことが見つかるはずです。

こんなに変化が著しい時代がつまらないはずがありません。少しでも長く生きて、変化を見続けていたいですね。それとね、1人で孤立しないで、グループの中でみんなで生きていくと成長すると思います。

――年金受給開始年齢がだんだん上がっていますが、どう思われますか?

若宮さん:私の若い頃は定年55歳でしたからね。それが60歳になり、65歳になりました。今は70代でも若い人並みに働いている人もたくさんいます。人生100年時代で、しかも少子高齢化ですから、働かざるを得ないですね。

 ただ、高度なテクノロジー、特にAIによって仕事の質が変わってくると思うんですよね。例えば、昔は家を建てるのは体力勝負で、60を過ぎると肩や腰が痛くなってできなくなる。でも今は機械がやってくれるでしょ。体力のいる仕事は減ってくると思うんですよね。だから頭を使うといいと思うのですが、それも今までの日本人の頭の使い方と違う使い方ができたらいいんじゃないかと。

例えばね、これまでは学校で教わったことをそのまま受け入れていたかもしれない。でも、今はそうじゃなくて、小学校の学習指導要領でも自分で新しいことを創生していくとか、そういう時代になってきています。だから、生涯学習で今を学ぶっていうのが、これから大事だと思うんです。こんなに時代が変わっちゃってるんだもの。

シニア女性のITリテラシーを向上させたい

――これから挑戦したいことを教えてください。

若宮さん:私は挑戦したことありません。その時にやりたいこと、好きなこと、おもしろいと思うことをやるだけで、何かに挑戦してるっていう気持ちではないんです。今していることは、高齢者のITリテラシー向上のために講演会をしていて、これはもっとやらなきゃいけないと考えています。

特に日本の女性のITリテラシーは低いんです。なぜかというと、戦後80年経ったわけですけど、男性が24時間働くためには女性は専業主婦になってご主人を支える、そういうライフスタイルが長い間、推奨されてきたわけです。私やもう少し下の年代は、そういう「奥様業」に従事していた女性が多かった。

そうすると社会との接点がないので、どうしてもITに接する機会が少なかったんですね。だから日本のこの年代の男性と女性とのITリテラシーの差は非常に大きいんです。

日本は世界的に、大人の学力テストはトップクラスなんです。なのに、そういう学力を今の時代に活かすっていうことを全くやっていない、やれていないんです。大学で高齢者を対象とした生涯学習科があるのですが、内容が偏っているように感じます。シニアもしっかりと学び続けて、生涯輝き続けてほしいと思います。

◆若宮正子

わかみや・まさこ/1935年4月19日、東京生まれ。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)を定年退職後、パソコンを独学で学習し、70代で表計算ソフトのエクセルを使って図案を描く『エクセルアート』を考案。81歳でひな人形を正しくひな壇に並べるiPhone用ゲームアプリ『hinadan』を公開。その実績から米アップルのCEOより世界最高齢プログラマーとして世界開発者会議に特別招待された。NPOブロードバンドスクール協会理事。一般社団法人メロウ倶楽部理事。

撮影/黒石あみ 取材・文/小山内麗香

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