後期高齢者の保険料が4月から負担増へ 対象になる人は?いくら増える?増額しない都道府県も【FP解説】<増加金額リスト>
4月から保険制度の見直しにより、後期高齢者の保険料の負担額が増えた。どんな人が対象となり、いくらくらい負担が増えるのか。また都道府県によっては増額なしの場合もあるという。ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。増加額をリストにまとめたので参考にしてほしい。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、内外資系の生命保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/
後期高齢者の保険料4月から増額へ
令和7年度における後期高齢者医療制度の被保険者一人当たりの平均保険料は、全国平均で月額7,192円となる見込みです。
令和6年度の7,082円から月額110円、年額1,318円の増加(1.6%の引き上げ)となりました。以下で詳しく解説します。
後期高齢者医療制度とは
後期高齢者医療制度は、都道府県別にすべての市区町村が加入する広域連合が運営しています。
例えば、東京の場合、都内全ての市区町村が加入する「東京都後期高齢者医療広域連合」が主体となり、市区町村と連携しながら運営をしています。
対象者(被保険者)は以下のようになっています。
【1】75才以上の人(75才になると自動的に加入)
【2】65~74才で一定の障害があり、広域連合の認定を受けた方
保険料は、被保険者一人ひとりに均等に賦課(ふか)される「均等割」と、所得に応じて決まる「所得割」の合計額で、被保険者一人ひとりが納めます。
令和6、7年度の全国平均における年間保険料額は、均等割額が50,389円、所得割額は「賦課のもととなる所得金額×10.21%」で算出されます。昨年と比べて、負担増加となる差額は、以下の通りです。
増加額(昨年との差額)
年額/令和6年度:84,988円|令和7年度:86,306円…差額:1,318円
月額/令和6年度:7,082円|令和7年度:7,192 円…差額110円
※厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/newpage_00009.html
保険料の負担割合「2割になった人」は要注意
毎年8月1日を基準日として住民税課税所得及び収入に基づいて一部負担金の割合が決まります。原則1割負担で、「現役並み所得者」のかたは、3割負担になります。
なお、令和4年10月1日から一部負担金の割合の区分に新たに「2割」が追加されました。
後期高齢者の窓口負担割合は1割・2割・3割の人がいる
<3割>区分:現役並み所得者|判定基準:同じ世帯の被保険者の中に課税所得が145万円以上のかたがいる場合。
※一定の基準・要件を満たす場合、窓口負担割合が1割または2割になるケースがある。
<2割>区分:一定以上の所得があるかた|判定基準:下記(1)と(2)の両方に該当する場合。
(1)同じ世帯の被保険者の中に課税所得が28万円以上のかたがいる。
(2)同じ世帯の被保険者の「年金収入」+「その他の合計所得金額」の合計額が以下に該当する。
・1人の場合は200万円以上
・2人以上の場合は合計320万円以上
<1割>区分:一般の所得者|判定基準:上記の2割、3割に該当しない場合。
※政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/202209/1.html
2割負担になった人の軽減措置(9月30日まで)
なお、窓口負担割合が1割から2割になってしまったかたには、令和4年10月1日から令和7年9月30日までの3年間、軽減措置が設けられています(入院の医療費は対象外)。
同じ病院(外来)で支払う自己負担額の増加分が3,000円を超えた場合、それ以降は1割負担分のみを支払います。
また、異なる医療機関を受診した場合も同様の計算になります。
ただし、自己負担額が上限額である月18,000円、または、6,000円+(医療費-30,000円)×10%のいずれか低い金額を超えた場合は、申請により超えた分が後から支給されます。
※年間上限額は144,000円。
例えば、窓口での一部負担金が1割で、外来医療費の月額が50,000円の場合、自己負担額は5,000円です。これが2割負担になると自己負担額は10,000円となり、5000円の負担増額となります。
しかし、軽減措置により3000円を超えた分の負担増額の差額(2,000円)が払い戻され、結果として、自己負担額は8,000円になります 。
令和7年9月30日以降はこの措置が終了するため、負担額が増えることになります。
都道府県別・保険料の増加額「増えない県もある」
後期高齢者の保険料は、年金収入や都道府県によって増加額が変わります。
令和7年度の年金収入195万円の場合、全国平均の保険料額(月額)は、令和6年度と比べて262円の増加となります。
都道府県別に見ると、最も増加額が大きいのは沖縄県で497円の増加、次いで大分県が325円、兵庫県が322円となっています。
一方で、保険料が変わっていない地域もあり、福井県と富山県は令和6年度と同額となっています。このように、都道府県によって保険料の増減に若干のばらつきが見られます。
都道府県別・保険料の増額
厚生年金受給者の標準的な年金額(年金収入195万円)
全国平均|令和6年度:5,411円→令和7年度:5,673円…差額262円
・増額トップ3
沖縄県 令和6年度:5,913円|令和7年度:6,410円…差額497円
大分県 令和6年度:6,184円|令和7年度:6,509円…差額325円
兵庫県 令和6年度:5,812円|令和7年度:6,134円…差額322円
・増額なし
富山県 令和6年度:5,033円|令和7年度:5,033円…差額0円
福井県 令和6年度:5,458円|令和7年度:5,458円…差額0円
※ 厚生労働省 「後期高齢者医療制度の令和6・7年度の保険料率について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001255180.pdf
後期高齢者保険料アップへ【まとめ】
後期高齢者医療制度は、原則75才以上が対象で、今後も保険料の増加が続くと予測されています。令和7年度には、被保険者一人当たりの平均保険料が全国平均で月額7,192円となり、令和6年度から110円の増加が見込まれています。
平均寿命の延びに伴い、健康維持の重要性が高まる中で、もしものために経済的な準備も欠かせません。しっかりとしたライフプランを立て、将来に備えることが大切です。