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連載

認知症で要介護4の母が家の中で姿を消した!寒さで震える母を発見してゾッとした理由と対策

 岩手・盛岡に暮らす母を東京から遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。帰省していたある冬の朝、家の中で母の気配がない――。外出した様子はなく、いったい母はどこへ行ってしまったのか?認知症介護を11年続ける工藤さんが母を見つけて「ゾッとした」という体験とその後の対策を教えてくれた。

執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(80才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。

著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

認知症の母が暮らす実家で母の気配がない!

 母は足が不自由なので、ひとりでは外に出られません。デイサービスや通院など外出のない日は家に居るので、居間か台所か寝室を探せば簡単に見つけられます。

 ところがこの日は家の中が静まり返っていて、母の気配が全く感じられません。盛岡市の朝の最低気温は、マイナス8.3度。こんな寒い朝に、母はどこへ行ってしまったのでしょう?

 母の姿が見えないとはいえ、必ず家のどこかにいるはずです。すぐに見つかるだろうと思い、母を探す前に洗濯機を回すことにしました。

 洗濯かごにあまり洗濯物は入っていなかったので、2階の自分の部屋にあった洗濯物を取りに行き、1階の洗濯機まで戻ったのですが、その途中でも物音は一切しませんでした。

 まさか、母は家の外に出て行ってしまったのだろうか?

母が居た意外な場所とは?

 洗濯機に洗濯物と洗剤を入れてボタンを押したところで、すぐ横にある扉の向こうから「ガタッ」という音がしたのです。

 何か物が落ちたのかもしれないと思い、扉を開けるとそこに母が居ました。

 ――その場所とは、浴室です。

 母は風呂用の小さな椅子に黙って座っていました。まさかそんな場所に母が居るとは思わなかったので、

わたし:「うわっ、びっくりしたー。ここで、何やってるの?」

 と声を掛けました。なぜびっくりしたかというと、母は家のお風呂には入らないからです。

 家の浴槽は深く、転倒の危険があります。また浴室の手すりが使いづらく、ヒートショックの危険もあるため、人の見守りがあるデイサービスのお風呂を利用しています。

 なぜ母は、いつも使っていない極寒の浴室に黙って座っていたのでしょうか。

浴室の椅子に座る母の姿を見て気づいたこと

 母はシャワーを浴びようとしたのかもと思ったのですが、上半身は服を着ていました。

 下半身はズボンを下ろして、バスブーツをはいた状態でお風呂の椅子に座り、手にはシャワーヘッドを持っていて、シャワーの使い方が分からない様子でした。

 母が下半身だけ服を脱ぐ場所と言えば、トイレです。

 母はどうやら浴室とトイレの場所を間違えて、浴室で用を足そうとしていたようです。おそらくトイレのスリッパの代わりがお風呂用のブーツで、便座の代わりがお風呂の椅子だったのかもしれません。

わたし:「ちょっとー、ここはお風呂でしょ!トイレは向こう!」

 母は、寒さで震えていました。上半身は服を着ていたから良かったものの、もし間違えて冷水のシャワーでも浴びていたらと思うとゾッとしました。

 まずは母にズボンをはいてもらい、そのまま立ってもらおうとしたのですが、お風呂の椅子の高さが低すぎて立ち上がれません。手すりも位置が合わず、使い物にならなかったので、台所から椅子を持ってきて、脱衣所に置きました。

 その椅子に手をついてもらって、なんとか立ち上がることができ、寒い浴室から脱出できたのです。

母を浴室からトイレへ誘導しながら考えたこと

 浴室の床は全く汚れていなかったので、母が用を足す前に見つけたようです。母をすぐにトイレへ誘導し、改めてこう伝えました。

わたし:「ほら、ここがトイレでしょ」

母:「あらっ、本当だ。こっちがトイレよね。わたしバカねぇ」

 以前にも母はトイレに行こうとして、浴室へ向かったことがありました。

 その時はあまり気にならなかったのですが、わたしの気づかないところで、浴室とトイレの場所を何度も間違えていたのかもしれません。重度まで認知症が進行すれば、十分あり得ることです。
 
 浴室とトイレの場所を間違うこと自体は、それほど問題ではありません。お風呂の掃除は面倒ですが、それでも何とかなります。むしろ寒い浴室に入ることのほうが危険で、冬場に起こりやすいヒートショックになるのではと心配になりました。

 たとえ入浴しなかったとしても、暖かい居間と浴室の温度差は、ヒートショックの基準となる10度以上はあります。今後同じようなことが起きないよう、早速2つの対策をしました。

お風呂とトイレを間違えないための対策

 1つ目の対策は、浴室の扉についていた鍵を、冬場だけかけることにしました。扉に鍵がついていたこと自体知らなかったのですが、母は自宅のお風呂は使わないので、問題ないと思っています。

 もう1つの対策は、浴室とトイレの扉に「おふろ」、「トイレ」と書いた貼り紙を貼りました。

 昨年末に母の血圧の上が190になったかと思えば70の日もあって、血圧が安定せずにフラフラして体調を崩したことがありました。ひょっとすると、浴室とトイレの間違いを繰り返していたために、ヒートショックのような状態になっていたのかもしれません。

 どんなに認知症が進行しても、50年以上住んでいる家だから、浴室やトイレの場所は体が覚えているものだと思っていました。

 これまでは問題なかったのですが、今後はトイレまでのルートが分かるよう、廊下に矢印で表記するなどの工夫が必要かもしれません。

 今日もしれっと、しれっと。

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