血液型別かかりやすい病気、かかりにくい病気一覧|血液型で病気発症リスクが異なる!?その対策は?
さんざん議論し尽くされたかに思える“血液型あるある”。しかし実は医学の世界では、データにもとづいた最新研究が日夜進んでいる。かかりやすい病気から食生活や運動の方法まで“根拠アリ”の健康法を徹底取材。「たかが血液型」なんて侮るなかれ――。
血液型別性格診断は科学的根拠が乏しい
「A型は几帳面」「O型は大らか」「B型はマイペース」「AB型は天才肌」――わが国では定期的に「血液型別性格診断」のブームがやってくる。
火付け役となったのは1971年に発売されベストセラーとなった『血液型でわかる相性 伸ばす相手、こわす相手』(青春出版社)だとされる。
その後も、ドラマやCM、流行歌などで血液型別の性格や行動パターンは繰り返し描かれてきた。しかし、東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一さんは、血液型別性格診断には科学的な根拠に乏しいと一刀両断する。
「血液型別性格診断が広まっているのは日本と、そこから飛び火した台湾、韓国くらい。白血病の治療で骨髄移植をすると血液型が変わることがあるのですが、それによって性格まで変わったという患者は聞いたことがありません」
ただし、中川さんは続ける。
「近年、血液型によって病気の発症リスクが異なることが医療の分野ではエビデンスとともに明らかになってきている。それもまた事実です」
つまりA型にはA型の、O型にはO型のかかりやすい病気があるということ。しかもそれが医学的根拠のあるものであれば、知っておかない手はない。
O型の血は“サラサラすぎる”
「大けがをして救急車で運ばれたとき助かるかどうかは血液型による」…そんなショッキングな事実が科学的に裏づけられつつある。
東京医科歯科大学が2018年5月に発表したデータによれば重大事故で救急搬送された患者のうち、死亡者の血液型別割合を調べたところ、O型はほかの血液型に比べ、実に2倍以上も死亡者が多いことが明らかになった。
調査を行った、同大学特任助教授で医師の高山渉さんが解説する。
「理由を探ったところ、驚きの事実が判明しました。血液の成分の中には血を固めて止めるのに必要な『凝固因子』というたんぱく質があるのですが、O型はほかの血液型より30%も一部の凝固因子が少なかったのです。少しくらいの切り傷ならば問題ありませんが、生きるか死ぬかのような事故で重傷を負うと、この“30%”の差が生存か死亡かを分けることになった可能性があります」
つまり、O型の血はほかの血液型に比べて“サラサラすぎる”可能性があるというのだ。
同調査の対象となった病院は首都圏関連施設の2か所。現在、高山さんは全国の医療機関に対象を拡大し、研究を続けている。
「まだ調査中の段階ですが、全国的にみても、けが人が出血を原因として死亡してしまう確率は、やはりO型の人が高くなる傾向があると推測されます」(高山さん)
血液の性質が体に影響を及ぼすのは、O型だけではない。
血液型で病気リスクが異なる理由は「血漿」
長年、血液型と病気の関係を研究してきた東京医科歯科大学名誉教授で医師の藤田紘一郎さんが解説する。
「血液型によって病気のリスクが異なるのは、血液から血球を取り除いた残りの液体部分である『血漿(けっしょう)』に理由があります。血漿には、外部から侵入したウイルスや毒素を排除する役割を持つ抗体が含まれているのです」
この抗体の持つ特徴が、血液型によって異なるという。
「A型の人の血漿には『抗B抗体』が含まれており、B型の人は『抗A抗体』を持っています。O型の人は『抗B抗体』も『抗A抗体』も両方持っていますが、AB型の人はどちらの抗体も持っていません」(藤田さん)
この抗体の違いが、病気への対抗力の違いを生む。異なる抗体を持つようになった背景には、血液型の成り立ちに理由がある。
人間は、もともと全員O型だった!!
藤田さんが続ける。
「そもそも、人間は全員O型でした。A型が出現したのは紀元前2万5000~1万5000年、B型は紀元前1万年ごろ。地域ごとの食物消化に適合する血液型として生まれました。その後、AB型が誕生したのは、ほんの1000年ほど前のことです」
血液型を決める1つの要素として挙げられるのは腸内細菌だという。
「長い期間を経て食生活が変化したことにより、血液型も変化していったと考えられます」(藤田さん)
食生活とともに血液型と密接にかかわってくるのは過去に流行した病気だ。例えばペストやコレラ、マラリアなどの病気が大流行した際、それらに強い血液型の人が多く残り、そのまま現在に受け継がれているというケースもある。
長浜バイオ大学教授で『血液型で分かる病気のリスク』(幻冬舎)の著書がある永田宏さんも言う。
「アフリカや南米ではマラリアに強いO型が多く、全員がO型という原住民の部族もあるほど。一方で、東南アジアではコレラに強いB型が4割近くを占める。世界を見回すと、ざっくり言って『北A南O』『西A東B』という分布になっています」
つまり、血液型別の病気リスクを知る鍵は、抗体の性質と食生活、そして過去に流行した病気であるということ。ここからは、血液型別にかかりやすい病気をみていきたい。