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最高齢の女性BAとしてギネス世界記録に認定!100才現役ポーラレディ、若さの秘訣「スキンケアは8つのアイテムを使って毎晩入念に」

 2023年現在、日本人女性の平均寿命は87.09才で、「100才以上」の女性は約8万人とされる。だが、そのうちの何人が日々自分の足で歩いたり、働いたりすることができているかは定かではない。世界を驚かせた“ギネス級ポーラレディ(※)の”100年の足跡を追った。

(※)現ビューティーディレクター

教えてくれた人

堀野智子さん 100才。大手化粧品メーカー・ポーラの現役販売員。福島県福島市のポーラ桜水ショップ所属

“若手”も驚く伝説級の仕事ぶり

 2~3kgはありそうな大きなバッグを軽々持って、早足でバス停に向かう女性。大手化粧品メーカー・ポーラの桜水ショップ(福島県福島市)に所属する「100才の現役販売員(ビューティーディレクター)」、堀野智子さんだ。

 勤続年数は60年以上。現在は週に一度、自宅から7km離れた桜水ショップまで、バスとタクシーを乗り継いで通っている。

 2023年8月、「最高齢の女性BA(ビューティーアドバイザー)」としてギネス世界記録に認定され、授賞式では「生きている限り、仕事を続けたい」と語った堀野さん。その背中について行くと、人生100年時代を美しく、そして健康に過ごす秘訣が見えてきた。

 ショップに到着するや、堀野さんは商品の発注確認や入金作業をテキパキとこなす。その仕事ぶりはまごうことなき、現役のポーラ ビューティーディレクターだ。

「私たちは売り上げがなければ席がなくなりますからね。月に一度の勉強会にも、必ず参加していますよ。お客さまのためにも、新製品のことをちゃんと覚えておかなきゃ」(堀野さん)

 ポーラのビューティーディレクターには定年がない。年を重ねた女性がイキイキ働ける環境が整っており、実際、全国に約2万5000人いるうちの約25%が70代以上。移動が難しい顧客には訪問販売も行っている。

 堀野さんも週に一度、ショップに出勤して接客するだけでなく、自宅に顧客が訪ねてきたり、電話で相談や注文を受けることもあるそう。そのため、毎朝8時には誰が訪ねてきてもいいように、たとえ休日であってもフルメークをして身支度を整える。夜も顧客からの電話に対応できるよう、21時までは入浴せず、居間で過ごしているという。

 その仕事ぶりは同僚にも大きな影響を与えていると話すのは、同地区を管轄する、南東北ユニットの大場恵美子さんだ。

「多数のビューティーディレクターの中でも、堀野さんは“レジェンド”。研修時にその働きぶりを紹介すると“自分よりずっと年上の堀野さんが頑張っているから、私も”と、とても大きな反響があるんです」

脳年齢は“実年齢マイナス30才”

 精力的に働く堀野さんを支えるのは、日々のルーティンだ。

 休日も必ず6時半起床とフルメーク、23時15分就寝を守っている堀野さんは、ひとり暮らしのいまも毎日必ず台所に立ち、1日3食、自分で用意した食事を食べる。入浴時の軽い体操と、スクワットも欠かさない。スキンケアは8つのアイテムを使って毎晩入念に。趣味の編みものは、周囲の人から“発注”がくるほどの腕前にまで極めている。

 結果、100才にして健康診断では一切の異常がなく、脳のCT検査ではなんと「70代」という結果が出たほど。10kg近いウオーターサーバーのタンクの交換まで軽々行えるほどの筋力も保っている。そんな堀野さんが大切にしているのは「好きな仕事に夢中で取り組み、楽しく過ごすこと」だという。

「99才のとき“もう100才ですね”と人に言われて初めて、自分が100才になるって意識したの(笑い)」(堀野さん・以下同)

◆100まで現役!「若さと長寿をつくるルーティン」

6:30 起床。化粧をして身支度を整える。

8:00 朝食。主菜とごはん150g、みそ汁、自家製の大根の酢漬けを必ず食べる。乳酸菌飲料、緑茶、青汁、ヨーグルトも毎日摂る。「その後、趣味の編みものをします。セーターは1週間、靴下は1日半で編んで、ポーラの社員さんや近所の高齢者施設にプレゼントしています」

12:40 昼食後、ショップに向かうため家を出る。12時45分発のバスに乗車。
「バスで福島駅まで行き、駅からショップまでタクシーを使うと片道2000円くらいかかるんですが、駅の手前でバスを降り、そこからタクシーに乗れば1560円くらいで行けることに気づいてからは、乗り継いでいます(笑い)」

13:30頃 ショップ着。事務作業、接客などの業務。

17:00頃 終業。駅ビルで買い物を済ませてからバスで帰宅。

18:30頃 夕食。「21時まではお客さまから電話がくるかもしれないので、居間で待機しています。好きな時代劇をスカパーで見ることも」

21:30頃 入浴。「湯船に入る前には腕を上げる運動をしたりスクワットをしたり、足首を上下させたり、軽い体操をしてから入ります」

22:00頃 入浴を終え、『報道ステーション』(テレビ朝日系)を最後まで視聴。

23:15 就寝。

口紅も持っていなかったが「憧れのポーラ」へ

 今日までの100年を「“楽しく苦労して”過ごしてきた」と話す堀野さんだが、夢中で歩いてきたその道のりは決して平坦なものではなかった。

 堀野さんは大正12(1923)年4月9日、5人きょうだいの長子として生まれた。女学校を卒業後、電電公社(現在のNTT)勤務を経て、23才のとき、1才年下の慶一さんと結婚した。

「終戦直後だったから、結婚式なんてやる余裕はなし。仕事も住む場所もなく、苦労しましたよ。大卒が珍しかった当時、早稲田大学を出ていた夫は、地元では雇ってもらえませんでした」

 その後3人の子宝に恵まれてからも、暮らしは苦労の連続だったという。

「薬の箱を糊づけする内職やりんご農家の手伝いをしながら食べ物をツケ払いで買って、なんとか日々をしのいでいました」

 そんな堀野さんの苦労を知ってか知らずか、慶一さんは堀野さんに「口紅くらいつけたら?」というひと言を投げかけたこともあった。家計のやりくりと子育てに追われ、化粧をするほどの時間とお金の余裕もなかった当時の堀野さんはそれでも、夫の言うとおりに街まで出かけて、口紅を買ってみたのだという。

「福島駅前まで行って手に入れていざつけてみても、なんだか変。何もしていないのに、いきなり口紅だけつけてもだめなのよね。当時の私はわからなかったんです。それから少しして、同じ市営住宅に住む知人のところに、とてもきれいな女性が訪ねてきたんです。私の目には30代に見えたけれど、実際には50代だっていうの。その人が“ポーラ化粧品を使ってるのよ”って言うから、私も絶対使ってみたいと思った。それが出会いです」

 当時は化粧水が250円、乳液が350円。厳しい暮らしを必死にやりくりしながらやっとの思いで月賦払いで使い始めると、友人から「最近、きれいになったわね」と言われるようになった。

「私が“ポーラを使ってるのよ。月賦で買えるわよ”と言うと、お友達もみんな使い始めた。その頃からポーラの仕事がしたいと思うようになりました」

 実際にその一歩を踏み出したのは、いちばん下の子供が小学校に上がった39才のとき。友人に誘われてのことだった。

1億円の売り上げよりお客さまとの会話が幸せ

 堀野さんは、その売り上げもレジェンド級。85才のときには累計売り上げ1億円を達成し、表彰されたこともあるという。4年前にけがで入院していた病室の中でさえ、15万円を売り上げた。

「バスに乗るとき、段差をジャンプしているせいで、滑って脛(すね)を折っちゃったの(笑い)。でも、足以外は元気だから、夜はスキンケアをするわけです。すると同室の患者さんが“私も使ってみたい”とおっしゃって。“結構、高いんですよ”って言ったんですけど、最高級ラインをまとめて買ってくださいました。でもね、売り上げがいいからうれしいんじゃなくて、お客さまがきれいになって喜ぶ姿を見るのが、たまらなくうれしいんです」

 桜水ショップの鈴木よ志枝さんは、堀野さんの業績は「当たり前のことを真面目にこなし続けてきた賜物(たまもの)」と話す。

「注文が入ったらすぐに商品を手配し、入金の手続きもすぐに行い、アフターフォローをこまめに行い…こうした業務は年齢とともにおっくうになりがちな中、堀野さんはどれも完璧に対応しています」(鈴木さん)

 苦労の中できれいになる楽しさを知り、いまではそれを広めている堀野さんは「美しさをあきらめている人ほど、手入れすれば見違えるほどきれいになる」と語る。

「仕事や子育てで疲れ果てている人や“もう何をやってもムダ”と思っている人ほど、いまより少しだけでも手をかけてみてほしいんです。その日の汚れをきちんと落としてから寝るだけでもいい。洗顔したら10回以上すすぐこと。私だって、もっと若い頃に出会っていたら、もっときれいになれたのにって思いますから(笑い)」

 その一方で、年を重ねるほどに、避けることができない悲しみに直面することもある。

「常連のお客さまにそろそろお伺いをしようと電話をかけて、ご家族に“亡くなりました”と言われると、とてもがっかりします。そのお客さまが住んでいたお宅の前を通るたびに思い出して寂しくなります。長く生きていると、そういうことも増える一方です。だけど、いまも私を慕ってくださるお客さまがたくさんいらっしゃる。お客さまと顔を合わせていろいろな話をするのが楽しくて、生きがいになっているんです。だから、この仕事は辞められませんね」

 取材を終え、記者と握手しながら「私の手、あったかいでしょう。体温が高いの」と微笑む堀野さん。ポジティブでエネルギッシュな“大先輩”の歩んできた道のりは、私たちに、元気で美しく生きるためのヒントをくれそうだ。

撮影/浅野剛

※女性セブン2023年12月14日号
https://josei7.com/

●100才越えの人に共通している10のコト|食生活・性格を大公開

●100才まで元気に生きるための8つのメソッド「趣味をもつ、免許返納は年齢で決めない、ぽっちゃり体形を目指す」

●100才の三田村鳳治さんが毎日実践している6つのこと「毎朝の読経や兵隊歩き」

 

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