樋口恵子さん91才で要支援1「手すりのある暮らしはいいですよ」介護保険制度の生みの親が明かすサービス活用法
「身びいきですが、介護保険はいいですね」――2000年の制度開始から約四半世紀経った今年6月、「要支援1」の認定を受けた樋口恵子さんはそう笑う。実際、どんなサービスを受け、どう感じたのか。“自慢の子供”に成長した介護保険制度の「使い倒し方」を生みの親に聞いた。
教えてくれた人
樋口恵子さん(91)/1956年、東京大学文学部を卒業後、時事通信社や学習研究社などを経て評論活動に入る。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長、東京家政大学名誉教授、同大学女性未来研究所名誉所長を務める。
樋口恵子さん「90才を迎えて感じた、未知との遭遇」
84才のときに建て替えたバリアフリーの行き届く都内の一戸建てで、60代の娘と猫4匹と暮らす評論家の樋口恵子さん(91才)。昨年、晴れて卒寿を迎え、現在も生涯現役を掲げてこの家でバリバリと仕事を続ける日々を送っているが、心身の衰えを感じることが増えてきたという。
「60~70代くらいのときに想像していた90才と、実際に迎えた90才はまるっきり違いました」(樋口さん・以下同)
女性が高齢になっても幸せに暮らせる社会をめざして奮闘した彼女にも、90才という年齢は「未知との遭遇」だった。
「近年は家の中で転倒を繰り返すようになりました。幸いにも体が柔らかいので骨折はしていませんが、周囲にはハラハラものです」
高齢者の転倒は骨折から寝たきりにつながる恐れがある。樋口さんは年齢を自覚し、備えの必要性を痛感した。
そんな彼女が頼りにしたのは、かつて自ら成立に尽力した「介護保険」だった―。
「最近は足腰が弱まって壁を伝いながらヨロヨロ歩くようになり、立ち上がるときも“よっこらしょ”と大変になりました。添い寝する甘えん坊な猫をベッドから起こさないよう静かに立ち上がろうとして、自分がベッドから落っこちたこともあります(笑い)」
制度の生みの親、自ら介護保険を申請してみたら…
こうした転倒のリスクや寝起きのふらつきを心配する周囲のすすめで、今年6月に介護保険を利用することにした樋口さん。介護保険の内容を議論する厚生省(当時)の審議会のメンバーとして「制度の生みの親」のひとりで内容を熟知していたため、すぐ手続きに取りかかることができた。
介護保険のサービスを利用するには、まず地域包括支援センターへの要介護認定の申請が必要となる。その後、自治体の調査員が自宅等を訪問し、本人や家族から聞き取り調査を行って生活機能や身体機能などを確認する。
「申請してみると、“認定まで1か月半ほどかかります”と言われました。実際に1か月ほどで調査員が自宅に来て、聞き取りの調査を受けました。普段の生活の様子をお話ししたり、調査員の前でヨロヨロ歩いてみたり…(笑い)。面談は1時間ほどでした」
その後、調査結果と主治医の意見書の項目がコンピューターに入力され、全国一律の判定方法で要介護の「一次判定」が行われる。さらに介護認定審査会による「二次判定」によって要介護度が判定される。