樋口恵子さん91才で要支援1「手すりのある暮らしはいいですよ」介護保険制度の生みの親が明かすサービス活用法
「面談後、半月ほどで『要支援1』と認定されました。最初に連絡してから1か月半ほど要しましたが、介護保険は国の制度で、公金を使うので手続きにある程度の時間がかかるのはやむをえません。ただし、急を要する場合は緊急対応をしてもらえるはずです」
認定は症状に応じて、要支援1から要介護5までの7段階、および非該当に分かれる。認定を受けた人は要介護度に応じてさまざまな介護サービスを利用できる。
要支援1の樋口さんが選んだのは「福祉用具貸与」だった。住み慣れたわが家で自立して暮らすにあたり、介護ベッドや手すり、スロープ、歩行器など適切な福祉用具を選ぶための援助、取りつけ、調整などを行い、福祉用具を貸与してもらえるサービスだ。
「認定を受けてすぐに福祉用具の業者を提案してもらい、歩行や寝起きが難しくなってきたので、自宅に手すりを設置してもらうことにしました」
要支援認定を受けてから1か月後、ベッドと段差のある玄関、門扉から玄関までの合計5か所に手すりと、一部に突っ張り棒が設置された。
「費用は全額介護保険で賄いました。工事とは異なり、家に傷をつけずしっかりした手すりを設置してくれました。特に絨毯(じゅうたん)が敷いてある玄関への設置には娘が難色を示しましたが、絨毯は傷つけず、頑丈な手すりを設置していただいて助かりました」
手すりというセーフティーネットに守られた暮らしは、これまで以上に快適で安全になったという。
「手すりのある暮らしはいいですよ。タクシーで帰宅後、それまでは秘書にすがりついて歩いていたけど、いまは秘書が支払いをする間に車から降りて玄関に設置した手すりを使ってひとりで歩けます。
それから何といってもベッドからの起き上がりが劇的に変わった。突っ張り棒を握って足の力ではなく、腕の力でスッと立つ。本当に楽になったし、腕が鍛えられる気もします。
ちょっと身びいきになりすぎることを承知で申し上げますと、介護保険はいいですね(笑い)。みなさん保険料を払っているのだから、どんどん利用すべきですよ」
主な「介護保険サービス」
【1】居宅介護支援
ケアマネジャーに相談した内容のもと、ケアプランが作成され、それに沿って適切な介護サービスの提供者や事業者が調整される。
【2】訪問介護(ホームヘルプ)
ヘルパーが自宅を訪問して食事、入浴、排泄などの身体介護や掃除、洗濯、調理などの生活支援を行う。
【3】訪問入浴
看護師を含めたスタッフが自宅を訪問し、事業者が持参した浴槽で入浴介助をする。
【4】訪問看護
看護師などが自宅を訪問し、病気や障害に応じた医療行為や療養生活のアドバイスをする。
【5】訪問リハビリ
医師が必要と認めた場合、理学療法士や作業療法士などのリハビリ専門職が訪問してリハビリを行う。
【6】定期巡回・随時対応型訪問介護看護
24時間365日、定期的な巡回など必要なケアを必要なタイミングで受けられる。介護と看護が一体となったサービスも。
【7】通所介護(デイサービス)
利用者が日帰りで介護の専門施設に通い、食事や入浴などの日常生活の支援、機能訓練などのサービスを受ける。
【8】通所リハビリ(デイケア)
医師が常駐した介護施設や病院、診療所などに通い、日帰りでリハビリを受ける。
【9】短期入所生活介護(ショートステイ)
週に1泊など短期の宿泊で入浴や食事の介助を受けられる。本人はもちろん、自宅で介護する家族の休息にも必要。
【10】小規模多機能型居宅介護
施設への通いを中心に宿泊や訪問を組み合わせたサービス。地域住民と交流しながら、生活支援、機能訓練が受けられる。
【11】訪問歯科
歯科医が自宅を訪れ、口腔ケアや虫歯の治療、入れ歯の調整などを行う。
【12】訪問薬剤師
薬剤師が患者に合わせた用量・用法の薬を持って自宅を訪問し、お薬カレンダーに服用すべき薬をセットしてくれる。
【13】福祉用具貸与・販売
介護ベッドや歩行補助杖などの介護用品のレンタル・購入費用の助成が受けられる。
【14】居宅介護住宅改修費
介護保険制度により1人20万円を上限に、介護のリフォーム費用が助成される。ケアマネジャーと相談の上でのみ利用可能。
写真/時事通信社、PIXTA
※女性セブン2023年11月30・12月7日号
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