「夕食は18時までに」「食後は体を動かす」など食後高血糖を予防する「食べ方」「習慣」8選【医師・管理栄養士解説】
健康診断の結果で気になる項目の1つである血糖値。血糖値は食事をすると上昇し空腹時は下がるが、食事をした2時間後も血糖値が140mg/dl以上続く場合は「食後高血糖」の疑いがある。「食後高血糖」が続くと糖尿病や心筋梗塞のリスクが高まるため注意が必要だ。上手に食後の血糖値をコントロールして、あらゆる病気・不調を予防し健康寿命をのばす極意を専門家に教えてもらった。
教えてくれた人
鶴田加奈子さん/つるた内科クリニック院長・糖尿病専門医、望月理恵子さん/健康検定協会理事長・管理栄養士
炭水化物は一番最後!野菜→肉・魚の順番で食べれば血糖値の上昇を抑えられる
食後血糖値をコントロールするためには、食べ方が大きなファクターになる。
都内在住の阿部智子さん(55才・仮名)は食事の糖質量に注意していたが、職場の健康診断で糖尿病の手前と診断された。
「なんでも、ダイエットのために朝食を抜いていたのがいけなかったようで…」(阿部さん)
鶴田さんが説明する。
「食べすぎを気にして朝食や昼食を抜く人がよくいますが、1食抜くと軽い飢餓状態に陥る。すると体を守るために血糖値を上昇させるホルモンが分泌され、その状態で食事をすると急激な高血糖が生じるのです。食事は1日3食に分けて、バランスよく食べる方が、食後血糖値をコントロールするうえでも、またダイエットにも効果的です」
その際、「1食の中における食べる順番が大事」とつるた内科クリニック院長で糖尿病専門医の鶴田加奈子さんは続ける。
「食物繊維が豊富な野菜を先に食べることで、腸管からの糖質吸収を穏やかにし、急激な血糖値の上昇が抑えられます。次に肉や魚を食べればたんぱく質と油分によって満足感が得られ、最後に食べる炭水化物の摂取量を抑えることができる。この順番をしっかり守ることで、糖尿病治療の内服薬1錠に匹敵する効果が期待できます」
夕食の時間が早いほど血糖値は上がりにくい
3食のうちで最も気をつけるべきは「夕食の時間」と望月さんは言う。
「遅い時間になるほど『食事誘発性熱産生』と呼ばれる、食後に糖などを熱に変換する力が50%も低下することが明らかになっています。同じ食事を18時と21時に食べた比較では、21時の方が食後血糖値が大きく上昇したという報告もある。遅い時間に食べるほどリスクが高くなります。できれば18時までには食事をすませたい」
そうはいっても現実的には厳しいことも多いだろう。
「ホエイプロテインにはインスリンの分泌を促すインクレチンが多く含まれており、食事の前に摂取することで食後血糖値の上昇を抑えられます。どうしても遅い時間に食事をする場合は、夕方頃に職場で野菜ジュースなどを摂取してからおにぎりなど炭水化物を食べておいてください。その後、帰宅したら牛乳やヨーグルトを飲んでから野菜料理とたんぱく質を摂取すれば、血糖値をコントロールできます」(健康検定協会理事長・管理栄養士の望月理恵子さん)
糖質を避け、なるべく吸収を抑えるよう力を尽くすことが食後血糖値をコントロールする要であることは明らかだが、パスタや白米など糖質を多く含む料理を控えたメニューが続くのはあまりにも味気ない。血糖値を上げずに食事を楽しむ方法はあるのか。
「例えばパスタだとしたら野菜や肉など具材が多いものや、糖質の吸収を抑えるオリーブオイルを使ったメニューを選んでください。クリーム系は避けること。白米を食べる場合、温かいご飯より冷えたご飯の方が血糖値が上がりにくいので、おにぎりがおすすめ。食べるときは“ゆっくり、よく噛む”ことを意識してください。噛むことでインスリンの分泌が促され、ゆっくり食べることで糖質の吸収も緩やかになります」(望月さん)
食後30分の軽い運動と約7時間の睡眠が「食後高血糖」を防ぐ
食事をした後はソファでまったり横になりたくなるが、そこはがんばりどころ。
「食後1~2時間以内に30分ほどの軽い運動をすると食事によって増えた血中のブドウ糖を消費するため、食後血糖値の上昇を抑えられます。散歩などがベストですが、時間が取れない場合、食後にすぐ休まず、食器洗いなどの家事で体を動かしてください」(鶴田さん)
食後に限らず、適度な運動は血糖値を抑えてくれる。
「スクワットなどの筋トレで筋肉量が増えればそれだけ糖質がより多く消費されることになり、血糖値の上昇を抑えることができます。また、ウオーキングなどの有酸素運動も血流が促されることで、血中の糖が筋肉に吸収され、血糖値が下がる。1日30分を目標に取り組んでいきましょう」(望月さん・以下同)
睡眠も重要だ。寝不足が慢性化すると空腹時血糖値が上昇しやすくなり、糖尿病のリスクが上がる。
「新潟大学の研究では毎日7~7.5時間寝ている人は糖尿病リスクが低いとわかっています。また、昼夜逆転生活で体内リズムが崩れるとインスリン分泌の機能に異常をきたすので、朝型生活を送ってください」
できることからコツコツと―積み重ねた健康的な生活が、万病に至る食後高血糖を防ぐなによりの手段となる。
食後高血糖を予防する主な「食べ方」「習慣」8選
【1】1日3食バランスよく食べる
【2】よく噛んで食べる
【3】野菜から先に食べ、ご飯など主食は最後にとる
【4】夕食はできる限り18時までにとる
【5】朝型生活にする
【6】7~7.5時間の睡眠
【7】食後に軽い運動をする。できなければ食器洗いなどの家事で体を動かす
【8】スクワットなど筋トレをして筋肉量を増やす
写真/PIXTA
※女性セブン2023年11月23日号
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