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「ケアハウス」なぜ安い?費用や入居条件、グループホームとの違いを理解【専門家監修】

「ケアハウス」は、家族との同居が難しいなど自宅での生活が困難になった人が生活のサポートを受けながら暮らす施設で、比較的安く利用できるのが特徴です。ほかの介護施設と比べてなぜ安いのか?費用やサービス、入居条件、「グループホーム」との違いなどをわかりやすく説明します(監修・社会福祉士/ライトさん)。

ケアハウス

「ケアハウス」とは?特徴を簡単に解説

「ケアハウス」とは、社会福祉法人や地方公共団体などが運営する高齢者施設のことで、「軽費老人ホームC型」とも呼ばれています。

 家庭環境や身体的にひとり暮らしが難しい高齢者のための施設で、比較的低料金で入居でき、少人数でアットホームな雰囲気のなか生活できます。

「ケアハウス」とは、ひとり暮らしが難しくなった高齢者が、生活のサポートを受けながら暮らせる施設のこと

「ケアハウス」の種類とタイプ

 軽費老人ホームには、A型、B型、C型、都市型などいくつかの種類があり、軽費老人ホームC型のことを、「ケアハウス」と呼びます。

 現在は、A型やB型は新設が認められておらず、C型の「ケアハウス」に一本化されています。

 また、都市型は、東京23区や神奈川・西宮市など地域が限定されています。

 ケアハウスには、「一般型」と「介護型」の2タイプあります。大きな違いは、介護型は、介護保険法による「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設のことを指します。

→東京都で増加中!年金で入れる「都市型軽費老人ホーム」とは?料金や入居条件を解説

一般型

 基本的には自立はしているものの身体的機能が衰え、ひとり暮らしに不安がある60才以上の高齢者が入居できる高齢者向けの施設です。介護サービスを利用するには、外部のサービスを利用しなければなりません。

介護型

 生活援助サービスや食事提供に加え、施設の介護士らによる介護サービスが受けられます。介護保険制度による「特定施設」の指定を受けているため、スタッフによる介護サービスが受けられます。

 施設によっては、要介護度の重い方でも入居でき、リハビリなどを受けることも可能です。健康・服薬管理や近隣の医療機関などとの連携もされています。

 なお、介護型の「ケアハウス」は、施設によっては、一般型を併設しているところもあります。

「ケアハウス」の入居条件

●一般型:自立から介護度の低い60才以上

●介護型:要支援1~要介護5の65才以上

 一般型は、入居時は自立して生活できていても、介護度が上がってしまった場合は、退去やほかの施設への移動を求められることもあります。

「ケアハウス」のサービス内容

一般型

 食事や洗濯など家事などの生活援助のサービスを受けられます。自由に外出や外泊もできます。介護サービスを受けたい場合は、訪問介護・訪問看護、デイサービスなど外部の在宅サービスを利用することになります。

介護型

 居室の掃除・洗濯・買い物などの生活支援に加え、食事・入浴・トイレなどに関する介護や機能訓練や医療支援などが受けられます。

 基本的には、医療連携・認知症にも対応しており、介護度が上がっても住み続けることができ、看取りまで対応している施設もあります。

「ケアハウス」の人員体制基準

【一般型】

●施設長:1人

●生活相談員:要支援者・要介護者120人ごとに1人

●介護職員:30人以下の場合は常勤1人

●栄養士:1人以上

【介護型】

介護型は「特定施設入居者生活介護」※の基準に従って人員を配置しています。

●施設長:1人

●生活相談員:要支援者・要介護者100人ごとに1人

●看護・介護職員:要支援者10人に1人、要介護者3人に1人

●看護師また准看護師:30人に1人

●機能訓練指導員:1人以上

●計画作成担当者:介護支援専門員1人以上

※参考/厚生労働省「特定施設入居者生活介護」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000648154.pdf

「ケアハウス」の居室と設備

【居室のタイプと広さ】

個室:14.85㎡(1人)、31.9㎡(2人)

ユニット型:13.2㎡(1人)、23.45㎡(2人)

「ケアハウス」は基本的に個室が主ですが、ユニット型(※)や、一般型には、夫婦で入れる2人部屋がある施設もあります。トイレ・浴室などが共有スペースにあります。

 また、施設規模は、収容人数が50~100人前後までと幅があります。

(※)ユニット型/複数の個室をグループ化し、プライバシーを確保すると同時に介護をしやすくした居室の形態のこと。

※参考/厚生労働省「R2.8.3 第1回住まい支援の連携強化のための連絡協議会 資料10」
https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000656699.pdf

「ケアハウス」の費用と内訳

 一般型・介護型とも、入居一時金と月額利用料がかかります。

 月額利用料の内訳は、居住費・食事や光熱費などの生活費・掃除や洗濯などのサービス提供費などです。介護型については、要介護度に応じた介護サービス費がかかります。

 一般型は、介護サービスが提供されないため、外部サービスを利用した分だけ発生します。

一般型

入居一時金:0~約30万円

月額利用料:約9万円~15万円(所得により異なる)

介護型

入居一時金:0~約300万円

月額利用料:約10~20万円(所得や要介護度により異なる)

「ケアハウス」のメリット・デメリット

「ケアハウス」は、地方自治体や社会福祉法人が運営し、自治体からの助成を受けているため、民間が運営する施設よりも比較的費用が安価です。また、本人や扶養義務のある家族の世帯収入によって、費用の減額措置も利用可能です。

 また、比較的安く利用できる施設には、特別養護老人ホームがありますが、要介護3以上からしか入居できません。介護型の「ケアハウス」は要支援1から対象となるので、介護度の低い人から高い人まで幅広く受け入れてくれるのがメリットです。

 一方で、介護型はとくに人気が高く入居待ちが多いというデメリットもあります。

 【メリット】

●一般型

要介護認定を受けていない人も対象

外出・外泊などもできて自由度が高い

食事、洗濯など生活の世話をしてもらえる

利用料金がほかに比べてリーズナルブル

介護型

要介護度が高くても入居対象

生活の世話から介護までが受けられる

医療連携もあり、24時間の介護なので安心

看取りに対応する施設もある

利用料金がほかに比べてリーズナルブル

【デメリット】

 ●一般型

介護サービスや医療ケアは必要に応じて外部のサービスを利用しなくてはならない

介護度や認知症の症状が進んだ場合、退去やほかの施設に移る必要があるケースも

 ●介護型

人気があり待機者が多く、すぐに入居できないことが多い

「ケアハウス」と他の施設の違いを解説

 「ケアハウス」と「ケアホーム」の違いは?

「ケアハウス」と「ケアホーム」は、対象者が異なります。

 前述の通り、「ケアハウス」(介護型)は、65才以上で家族との同居が難しく、ひとりで生活することに不安がある高齢者を対象としています。

 一方、「ケアホーム」(共同生活介護)は、65才未満の障がいのある人が対象となっており、お住まいの地域で自立した生活を送ることを目的とし、食事や入浴など生活支援や介護を受けることができます。なお、「ケアホーム」は、2014年から障がい者のための「グループホーム」(共同生活援助)に一元化されています。

「ケアハウス」と「グループホーム」の違いは?

「ケアハウス」と「グループホーム」の大きな違いは、対象者です。「認知症型高齢者グループホーム」とは、認知症に特化した小規模の施設のため、医師から認知症と診断されている人が対象となります。対象者は認知症のかたで、医師の診断書が必要になります。

 一方、「ケアハウス」は、認知症に該当しなくても入居対象となります。

「ケアハウス」の入所までの流れ

施設に直接問い合わせ、見学しましょう。介護型「ケアハウス」の場合は、介護認定を受ける必要があります。

1.見学

 施設に直接電話などで問い合わせ、見学し説明を聞く

2.申し込み

 申込書・健康診断書・収入申告書などの書類を提出

3.面接

4.入所判定

5.結果通知

6.契約・入所

 契約書・身元保証人の記入など各種手続き

                     ***

 長期に生活するかもしれない施設だけに、比較的安価で入居できる「ケアハウス」は魅力。しかし、特養と同じように人気で待機者も多いので、気になる施設があれば、早めに電話で相談したり、実際に見学しておくことが必要だ。

取材・文/本上夕貴 構成/編集部 イラスト/イメージマート

監修者

社会福祉士・ライトさん

地域包括支援センターの社会福祉士として勤務。Instagram「ライト@介護保険のスペシャリスト」として情報を発信し、2万人を超えるフォロワーに支持されている。介護保険サービスの活用から、高齢者施設の解説など、スライドを駆使しながらわかりやすく伝えている。Instagramで2年間発信し続けた集大成として『世界一わかりやすい介護保険サービスの教科書』(電子書籍)と『世界一わかりやすい介護保険サービスの解説動画』を2023年9月2日にリリースし、好評販売中。
https://note.com/light_blog/n/nd0e2b21bd38f

→「介護保険をわかりやすく解説!」ライトさんの記事

「ケアハウス」に入居した父親の実例「退去時の注意ポイント」

 父親が「ケアハウス」に入居していた経験をもつ、ファイナンシャルプランナー・行政書士の河村修一さん。利用料の明細や、退去時の注意ポイントなどについて教えてくれた記事から一部を抜粋してご紹介する。

               ***

 私の父は70代後半に、アルツハイマー型認知症と診断されました。ただし、本人は自覚がありませんので、「介護保険」を利用するという認識はありません。

 父親に介護保険の利用をすすめても、自分は元気だからと拒否するのみです。

 食事は、毎日外食で、食生活も乱れ、生活費が足りなくなり、電話代未納のため連絡もつかないときなどもありました。

 ひとり暮らしの父と連絡がとれなかったときは大変心配になり、何度か地域包括支援センターや社会福祉協議会の方々等にご協力をいただきました。その折に、地域包括支援センターの方々等から自立型の「ケアハウス」をご紹介していただきました。

 入居後は、食事も3食あり、個室で利用料も比較的安く、生活の自由度も高いため、父親は大変満足していました。私たち家族も父親が満足していたので、とても安心しました。

 父が暮らしていた「ケアハウス」は月額約10万円で、年金収入で賄うことができました。

 

 ところが、その後、認知症が進行し、施設長から「このまま住み続けるのは難しいかもしれません」と言われていた矢先、父親が脳梗塞を発症して入院することになったのです。

 父が入居していたのは自立型の「ケアハウス」だったので、認知症や病気により介護が必要となった場合は、退去しなければなりませんでした。

ケアハウス退去時の注意ポイント

 このような経緯から、父は「ケアハウス」を退去することになりました。

 なお、注意すべきなのが、「ケアハウス」の退去時には、居室の原状回復費等が必要になることです。入居時に敷金などが不要だった父の場合、「ケアハウス」に約4年弱暮らしましたが、約15万円強の退去料がかりました。

初出:年金で入れる「ケアハウス」とは?種類や入居条件、費用、サービスを解説 入居した父親が退去を余儀なくされた実例も【FP解説】

●老健、ケアハウス、サ高住どれが入りやすい?利点、欠点は?専門家が解説

●東京都で増加中!年金で入れる「都市型軽費老人ホーム」とは?料金や入居条件を解説

●高齢者住宅に住み替えるタイミングはいつ?種類や暮らし方、予算に合う選び方を専門家が解説

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