東京都で増加中!年金で入れる「都市型軽費老人ホーム」とは?料金や入居条件を解説
老人ホームにはさまざまな形態があるが、年金生活の高齢者にとって毎月の費用が気になるところ。そこで今注目なのが「都市型軽費老人ホーム」だ。年々施設数が増えている「都市型軽費老人ホーム」。年金だけで入れるのだろうか?ファイナンシャルプランナー・行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
公的年金の制度をおさらい
公的年金制度は、20才以上60才未満のすべての人が加入する国民年金と、会社員・公務員の人が加入する厚生年金の2階建て構造になっています。
自営業者等の人は国民年金のみ、会社員・公務員の人は、国民年金と厚生年金の2つの年金制度に加入していることになります。
年を取ってから受け取る「年金」とは、65才以降に受給できる「老齢年金」。国民年金から「老齢基礎年金」を生涯受け取ることができ、厚生年金に加入していた人は「老齢厚生年金」が上乗せされます。
老人ホームなどに入居する場合、月々の費用は老齢年金で支払いたいと考える人は多いのではないでしょうか。いったいどんな施設なら入居できるでしょうか。
まずは、老齢年金の受給額について確認してみましょう。
→退職金の受け取り「一括」と「年金」どっちがお得?メリット・デメリットをFPが解説
年金だけで老人ホームの利用料は賄えるのか?
老齢年金の受給額はいくらでしょうか。目安として、「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和4年12月厚生労働省年金局」を参考にしてみます。
令和3年度末現在で老齢基礎年金の平均年金月額は5万6479円、老齢厚生年金(老齢基礎年金含める)は14万5665円となっています。
現役時代、厚生年金に加入していたのか、自営業者等で国民年金だけだったのかによって老後の年金収入は大きく変わってきます。
・年金の受給額(全国平均)
自営業など国民年金を支払っていた人:5万6479円
会社員などで厚生年金も払っていた人:14万5665円
※「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況 令和4年12月厚生労働省年金局」
高齢者施設の中でも、入居費用が比較的安い「都市型経費老人ホーム」について解説します。
都市型軽費老人ホームとは?
都市型軽費老人ホームは、ケアハウスとも呼ばれる軽費老人ホームの1つです。東京都を中心に施設数は毎年増加しており、令和3年度末で91施設※となっています(東京都89施設、西宮市2施設)。
都市型軽費老人ホームは、自治体からの財政支援で設立・運営されており、食事や日常生活に必要なケア、介護度に応じた身体介助などを受けながら、比較的低価格で入所できる施設として注目されています。
都市部においては、地価等の影響で居住費を含む利用料が高額となるため、居室面積や職員配置基準の特例を設けることによって、利用料が抑えられています。
※グラフ出典
厚生労働省「令和3年度福祉行政報告例の概況」
厚生労働省「平成28年度福祉行政報告例の概況」
都市型軽費老人ホームの入所要件
都市型軽費老人ホームの入所要件は、身体機能の低下等により自立した日常生活を営むことに不安があり、家族による援助を受けることが困難な60才以上の低所得の人。住民票のある市区町村のホームしか入所することはできません。
また、特別な事情を除き、身元保証人は必須で、感染症がなく、通院や服薬等の自己管理ができる等の要件があり、介護が必要になった場合には、外部サービスを利用することになります。
なお、市区町村によって多少の違いがありますので、詳しくはお住まいの自治体等にお問い合わせください。
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都市型軽費老人ホームの入所定員や設備は?
都市型軽費老人ホームの入所定員は20名以下(最少5名)、居室は原則個室で7.43平方メートル以上となっています。
一般的なケアハウスは、部屋は個室で広さは21.6平方メートル以上(2人部屋は31.9平方メートル以上)が基準となっているので、都市型軽費老人ホームは、それより狭いつくりになっています。
都市型軽費老人ホームの入所費用は?
ケアハウスの場合は一時金が必要ですが、都市型軽費老人ホームは、入所するのに一時金は不要です。
毎月の利用料10~12万円で、介護サービス費などが別途かかります。なお、収入に応じた減免措置等があります。
都市型軽費老人ホームの入居費用の内訳
【1】サービスの提供に関する費用(事務費)
【2】居住に要する費用(家賃相当分)
【3】生活費(食費・共用部の光熱水費)
【4】専用部分の光熱水費
合計:10万円~12万円
※医療費、介護費用、嗜好品など個人的な費用は別途必要になります。
前述の通り、会社員などで厚生年金も払っていた人の老齢年金の平均額は、14万5665円なので、都市型経費老人ホームは年金だけで月額利用料を賄うことができるといえるでしょう。
※都市型軽費老人ホームは東京都の基準を参考にしています。
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都市型軽費老人ホームはデメリットも
都市型軽費老人ホームには、比較的安く利用できますが、その分、入所要件が細かく定められているなどのデメリットもあります。
施設数は、年々増加していますが、ほとんどが東京都になります。
老後の収入源は公的年金という高齢者にとっては、心強い施設であることは間違いありませんが、年金の金額によっては、貯蓄を切り崩して毎月の費用の不足分を補てんする必要がありそうです。
※参考サイト
東京都福祉保健局「都市型軽費老人ホーム施設の特徴と事例」
東京都軽費老人ホームの設備及び運営の基準に関する条例施行規則
執筆
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
CFP(R)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行政書士、認知症サポーター。兵庫県立神戸商科大学卒業後、複数の保険会社に勤務。親の遠距離介護の経験をいかし、2011年に介護者専門の事務所を設立。2018年東京・杉並区に「カワムラ行政書士事務所」を開業し、介護から相続手続きまでワンストップで対応。多くのメディアや講演会などで活躍する。https://www.kawamura-fp.com/