老健、ケアハウス、サ高住どれが入りやすい?利点、欠点は?専門家が解説
入所が狭き門となっている特養。特養以外の高齢者向け住まいとして今、現実的に入りやすいとされるのが、老人保健施設(老健)、ケアハウス、サービス付き高齢者住宅(サ高住)だ。それぞれどんな利用方法がいいのか識者に聞き検証してみた。
老健、ケアハウス、サ高住、それぞれのメリットとデメリットを比較
老人保健施設(老健)
特養と同じく介護保険が適用され、比較的安価に入所できる老健。本来の目的は自宅に戻るためのリハビリ施設だが、実際には特養待ちの人で溢れているという。介護に関する著書も多い作家の本岡類さんは、こう語る。
「原則入所は6か月程度なんですが、施設によっては2年以上入所しているという人も。また、老健同士を行ったり来たりすることで、2年、3年と自宅に戻らず特養待ちをする人もいるのが現状。ただし、あくまで長期入所を目的とした施設ではないので、入れば安心というわけにはいきません」(本岡さん)
メリット:安い費用で入所可能。そもそも病院から自宅に戻るための介護施設なので、機能訓練も受けられる。介護費用なども費用に含まれているため、余分なお金がかからない。
デメリット:原則6か月程度の利用で、長期入所できない。入所期間中は老健の常勤医の指示に従うため、普段のかかりつけ医に診てもらえないことも。
ケアハウス
職員が常駐し、何かあったときはサービスが受けられるケアハウス。個室と食事サービスをする食堂や大浴場などが完備されている。室内には緊急連絡コールボタンもあり、安心度も高い。また、NPO法人「特養ホームを良くする市民の会」の理事長を務める本間郁子さんは、こう語る。
「ケアハウスも人気が高く、何年も待つことがありますが、いちばんの長所は先着順だということ。例えば、65才のときに申し込んでおけば、たとえ5年待ったとしても70才。そのときにまだまだ元気で家で生活できそうであれば入所順番を後回しにすることもできます。また、通常のケアハウスは自立の人向けですが、同じ施設内に特養があったり、終末期ケアまで行う施設もあります。ここは先着順のメリットを最大限に使うべき」(本間さん)
メリット:入所費用が比較的安い。個室タイプなので、プライバシーが守られる。要支援者向けで、食事サービスがあり、生活に困った時に相談する職員が常駐していて安心。
デメリット:通常のケアハウスは要支援者向けのため、要介護状態になると退所を求められることも。介護サービスは外部から受けるため、別途費用がかかる。
サービス高齢者住宅(サ高住)
最近増加しているのが、安否確認と生活相談サービスが受けられる高齢者向けの賃貸住宅・サ高住。国の補助金があるため、民間企業が参入しやすく、続々と新設されている。
申し込みから入所までは比較的短く費用も安価なのがメリットだが、一般的な有料老人ホーム以上にサービスに差があるのが現状だ。
メリット:バリアフリー構造になっている高齢者向け住宅で、生活の自由度が高く、安否確認や生活相談などのサービスがついている。入所一時金は敷金のみの場合が多く、入所しやすい。
デメリット:月額費用、サービス、ハードの面で施設ごとの差が大きい。外部の介護サービスを利用するため、要介護度が高くなると、費用も高額に。
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「しっかりと見学をしに行かなければ、満足できる最期を迎えられない可能性もあるので、特に見学が必須な施設です。また、介護サービスは基本的に課金制のため、要介護度が上がれば上がるほど膨大な費用になるケースも多い。特養までの仮住居として考える人も多いです」(本岡類さん)
「自立の状態で老人ホームに入るとなると、世間ではまだまだ『子供が介護すればいいのに』と思われがち。でも、親と介護サービスをつなぐサポートだってちゃんとした親孝行だと思うんです。在宅介護ができる状態でないのに“親のため”と無理するのではなく、親が快適に過ごせる場所がないか、どんな生活を親が望むのかを充分に話し合ったり選択肢を提示してあげることだって、子供にしかできない立派な役割だと思いますよ」(本間郁子さん)
教えてくれた人
本岡類さん/作家。介護職員として特養勤務経験があり、著書に『大往生したいなら老人ホーム選びは他人にまかせるな!』(光文社新書)ほか。
本間郁子さん/NPO法人「特養ホームを良くする市民の会」理事長、著書に「間違えてはいけない老人ホームの選び方』(あけび書房)ほか。
イラスト/鈴木清美
※初出/女性セブン