よりよい介護施設を見つけるために家族がやるべき3つのこと
介護が必要な親の施設入居を検討するとき、どうやって探せばいいかわからない…。そんな人は多いはず。
現在は実家に住む認知症の母を東京から遠距離で介護中、祖母、父の介護経験もある介護作家でブロガーの工藤広伸さんに、介護施設の探し方を教えてもらう。工藤さんは、介護で得た知識、ノウハウを書籍、ブログ等で広く発信していて、実体験に基づく知恵の数々は介護に役立つと評判だ。
長年介護を続けてきた家族ならではの介護施設の探し方、必見!
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母が住み慣れた自宅で生活するために欠かせないのが、介護保険サービスです。
手足が不自由な母の代わりに、ヘルパーさんが燃えるゴミを捨て、買い物をする。訪問看護師さんが、認知症のお薬を管理し、飲み忘れがないかをチェックする。母がなんとか自宅で生活できているのも、こういった方々の支えがあるからです。
この先も、母には自宅で生活してもらおうと考えていますが、介護施設に入るという選択肢は捨てていません。もし、わたしの介護負担が大きくなったら、母は介護施設に入ってもいいと言っています。
とはいえ、介護施設の種類は複雑で分かりづらいですし、施設の数も豊富にあるため、母にあった施設がどれなのか、正直分かりません。
今日はよい介護施設を見つけるために、介護家族がやるべき3つのことについてお話しします。
少しでもよい介護施設を見つける3つの方法
介護が始まったばかりの家族が、よい介護施設を見つけるのは困難だと思います。
なぜかというと、家族は介護の知識もなければ、誰に何を相談していいかも分からないからです。そんな状態で、初めて会うケアマネジャーに介護施設を勧められれば、その施設で間違いないと家族が判断してしまっても、やむを得ないと思います。
その施設が家族にも、利用する本人にも合っていれば問題ないのですが、合わなかったというケースもよくあります。
しかし、次の3つの方法で、よい介護施設を見つける確率は上がる(悪い介護施設を選ばずに済む)と思っています。
1つ目は、「信頼できる」ケアマネジャーに相談することです。
わたしは介護歴が長くとも、よい介護施設を選ぶ自信はありません。しかし、信頼できるケアマネが選ぶ介護施設ならば、間違いないと思っています。
ケアマネは、何度もその介護施設に足を運んでいます。自分の担当した家族が、その施設を利用しています。母の状態も、その介護施設の現場も分かっているケアマネが勧めるのなら、自然といい介護施設を見つけることができると思います。
この方法の一番のポイントは、ケアマネが信頼できる人かどうかということです。現在、在宅で介護保険サービスを利用しているご家族なら、ケアマネの力量、情報量、相性は分かっていると思いますし、信頼できるかどうかも判断できるのではないでしょうか?
2つ目は、介護施設の口コミを、地元の介護カフェに行って集めます。
特に地方の場合、施設の口コミはインターネットに載っていないので、介護カフェを利用して、地元の生の声を集めます。お目当ての施設の情報が得られるとは限りませんが、他の施設を利用したことのある介護家族から、ネガティブな情報を入手することもあります。
その情報に家族の主観が入っていることもありますが、それでも情報がないよりはましです。情報をたくさん集めることで、いい介護施設に出会える確率は高まります。
3つ目は、身近な医療・介護職の皆さんから、介護施設の情報を聞き出します。わが家であればヘルパーさん、訪問看護師さん、理学療法士さんに聞きますが、介護カフェや介護イベントに何度か足を運ぶと、介護家族であっても介護職の方と仲良くなることができるので、介護カフェを活用してみるといいと思います。
介護職の転職履歴を聞いてみる
介護職の皆さんは、いろいろな施設で働いてきた経験があります。わたしだけかもしれませんが、ずっと1つの施設で働いているという介護職の方に、会ったことがありません。
以前はどういった介護施設で働いていたのか、なぜその施設を退職することになったのかを聞いてみてください。
具体的な施設の名前は教えてくれないかもしれませんが、自分の家族が入居する予定の施設名を出して、相手の反応を見るだけでも、何か得られずはずです。お勧めできない施設だった場合はきっと、言葉を濁すような反応になると思います。
わたしが聞いたことのある退職理由は、施設を運営する会社の方針と合わない、経営陣の考えについていけない、職員の管理体制の不備などでした。現場職員のモチベーションが高い施設に預けたいと思うのは、どの介護家族も同じではないでしょうか?
施設に預けたら介護は終わりではない
施設に預けたからといって、家族の介護は終わりではありません。介護職の方も言っていましたが、全く面会に来ないご家族も多いそうです。
介護職員の方が、家族に面と向かって、もっと会いに来たほうがいいとは言いづらいようです。面会に来ないからといって、介護職員が手を抜いた介護をするわけではないのですが、わたしは「見えない差」が生まれると思っています。
もしわたしが介護職員なら、よく面会に来る家族には、施設での様子を細かく伝えたいと思うはずです。様子を伝えるためには、自然とその利用者のほうを注意深く見るようになると思います。そうやって「見えない差」は生まれていくような気がしてなりません。
今日もしれっと、しれっと。
→400万回以上読まれる介護ブロガーが教える 本当に役立つ「親が倒れたら」
工藤広伸(くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士、なないろのとびら診療所(岩手県盛岡市)地域医療推進室非常勤。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)
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