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高次脳機能障害の母が入所できる施設はどこ?娘が明かす揺れる胸の内「悩ましいケアのやめどき」

 高次脳機能障害の母をもつ元ヤングケアラーのたろべえさんこと高橋唯さん。母は50代中盤にさしかかり、これまで活用してきた障害福祉サービスに代わり、介護保険サービスも検討する段階へ。施設介護も視野にあるが、自分の人生とケアする相手の人生のバランスを取ることは難しく、心揺れる日々。今回は、ヤングケアラーの「ケアのやめどき」について考えてみたい。

この記事を執筆した専門家

高橋唯さん/元ヤングケアラーとして執筆や講演活動などを行う。SNSやブログでは「たろべえ」として情報を発信。

母のケアはいつまで続く?

 最近、以前よりも母の介護度が高くなってきていることを実感している。

 5月に母の障害支援区分の見直しがあり、以前は区分2だったが、より支援度が高い区分5に変わった。認定調査の際、デイサービスの職員から「常に目が離せず、マンツーマン対応です」と言われて驚いた。また、6月には病院で認知症と診断され、前頭葉の萎縮を遅らせる薬を飲み始めた。

 ケアしている人にとって、いつまで自分がケアを続けるのかというのは大きな悩みどころだと思う。特に若者ケアラーは進学、就職、結婚など自分自身の人生のターニングポイントも重なり、どうやって自分の人生とケアをしている相手の人生のバランスを取るか苦心している人も多いのではないだろうか。

 私も、前々から“ケアのやめどき”について考えることはあったが、とりわけ最近は母の介護度が高くなってきたこともあり、同居してケアを続けることの限界を感じる場面が増えてきた。本人としては、いつまでも家で生活したいようなので、望みを叶えてあげられず残念だが、現状は厳しい。

→母の「障害福祉サービス」区分変更調査に立ち会った元ヤングケアラーが戸惑いと罪悪感を感じた理由

母が暮らせる施設を調べてみた

 私が自宅でケアをしないとなると、母はどんな場所で暮らせるのか調べてみた。

・障害者支援施設

 障害のあるかたが入居して支援を受けながら生活する施設だ。全国の施設数は十分ではなく、入所待ちも多いようだ。

 以前、日中通所できる作業所やデイサービスを探していたときに感じたことだが、施設それぞれの特色や利用者の傾向があり、母の暮らしやすい施設をひとつひとつ見学しながら探していくのは大変かもしれない。

・障害者グループホーム

 障害のあるかたが地域で共同生活をする施設だ。ここも人気が高く、入居待ちがある。バリアフリー化されていない建物が使われていることもあるため、空き部屋があっても2階以上になると階段を使わなくてはならず、母の入居は難しい。

今後は介護保険を使える施設も視野に

 今後は、障害のあるかたの施設だけではなく高齢のかた向けの施設も視野に入れていきたい。

 介護保険を使える施設に入居できるのは、原則要介護認定を受けた65才以上の人だが、16種類の特定疾病に該当すれば40~64才の人でも対象になる。

 母は54才。しかも、同じ高次脳機能障害の場合でも、特定疾病に該当するのは脳血管疾患がある人だけで、母の場合は事故による脳損傷のため、非該当だった。

 しかし、最近の通院で母は新たに認知症と診断された。「初老期における認知症」は特定疾病にあてはまるということで、介護保険の申請を行った。

 母は「自分はおばあさんではないのに、高齢者と一緒なんて嫌!」と言うが、実際は障害のあるかたの施設の中で、動きが大きく活発な利用者さんと一緒に過ごすことは難しい。母もこれから年をとっていくし、高齢のかたと一緒にゆっくりと過ごすことも悪くないのではないかと思う。

→障害福祉サービスとは…介護保険と併用する要件、しくみを解説

・ケアハウス

 自立してはいるが、ひとりでの生活は不安な高齢者のための施設で、60才以上から入居できる。介護型ケアハウスであれば、介護を受けながら住み続けられるが、自宅近隣には一般型ケアハウスしかない。母は介護なしでは生活ができないので、近隣のケアハウスを長く利用することは難しそうだ。

→老健、ケアハウス、サ高住どれが入りやすい?利点、欠点は?専門家が解説

・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

 こちらもひとりでの生活が不安な高齢者のための施設だ。

 最近、母方の祖母がデイサービスに行き渋っているという話を聞いた。そこで、祖母が暮らす家の近くで、デイサービスが併設されているサ高住に母が入居し、デイサービスに祖母が通い、娘に会いに行くことができれば一石二鳥なのではと思いついた。

 ところが、近隣には入居者以外も通えるデイサービスを併設しているサ高住が見つからず断念。なかなかそう都合よくはいかないものだ。

→サ高住「サービス付き高齢者向け住宅」とは?費用や入居条件、サービスを解説【専門家監修】

・認知症グループホーム

 認知症と診断されたかたが少人数で共同生活を送る。なるべく自分たちで家事を行うようにすることは「自分にはまだまだ介護は必要ない!」と思っている母のためにも良さそうだ。原則として、住民票のある地域の施設に入居するという条件がある。

母が暮らしやすい施設を探す難しさ

 このほか、介護付き有料老人ホームや介護保険福祉施設も対象になるが、より介護度が高くなってから視野に入れていこうと思う。
 
 介護施設といっても多様な形態があり、現実的にはどんな施設で暮らすのが母にとってよいことなのか、まだまだ調べる必要があると感じた。

 母のように、身体障害も高次脳機能障害・認知症も「軽度とはいえないけれど、重度というほどでもない」人は、なかなか暮らしやすい場所が見つけにくいと思う。

 自宅で暮らしたいという母の願いや、施設に入って自由に面会できなくなるのは嫌だという祖母の気持ちも大切にしたいが、私もいつまでも自分の人生を考えずに母のケアを続けるわけにもいかない。

 しかし、母が暮らしやすそうな施設を探すのもなかなかひと苦労で、結局、現状に甘んじてしまっている。

 母の要介護認定の申請中ではあるが、まだ認定調査をしていないので、認定結果が出たら、またそれぞれの施設について詳しく調べていきたい。

→たろべえさんのほかの記事を読む

ヤングケアラーに関する基本情報

言葉の意味や相談窓口はこちら!

・ヤングケアラーとは

 日本ケアラー連盟https://youngcarerpj.jimdofree.com/による定義によると、ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18才未満の子どものことを指す。

・ヤングケアラーの定義

『ヤングケアラープロジェクト』(日本ケアラー連盟)では、以下のような人をヤングケアラーとしている。

・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている

・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている

・障がいや病気のきょうだいの世話や見守りをしている

・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている

・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている

・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている

・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している

・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている

・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている

・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている

・相談窓口

・厚生労働省「子どもが子どもでいられる街に。」

児童相談所の無料電話:0120-189-783

https://www.mhlw.go.jp/young-carer/

■文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310

https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

■法務省「子供の人権110番」:0120-007-110

https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html

■東京都ヤングアラー相談支援等補助事業 LINEで相談ができる「けあバナ」
運営:一般社団法人ケアラーワークス

https://lin.ee/C5zlydz

文/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名でブログやSNSで情報を発信中。本名は、高橋唯。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。母は高校通学中に交通事故に遭い、片麻痺・高次脳機能障害が残ったため、幼少期から母のケアを続けてきた。父は仕事中の事故で左腕を失い、現在は車いすを使わずに立ってプレーをする日本障がい者立位テニス協会https://www.jastatennis.com/に所属し、テニスを楽しんでいる。現在は社会人として働きながら、ケアラーとしての体験をもとに情報を発信し続けている。『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。第57回「NHK障害福祉賞」でヤングケアラーについて綴った作文が優秀賞を受賞。
https://twitter.com/withkouzimam  https://ameblo.jp/tarobee1515/

介護施設・サービス検索

●元ヤングケアラーの“ケア”はいつまで続く?「大人になった今もひとり暮らしをしない理由」

●認定調査で判明した母の様子にショック!元ヤングケアラーが感じた在宅介護の限界

●元ヤングケアラーが明かす障がいのある母の「老い」への向き合い方 通院で発覚した3つのこと

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