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暮らし

認定調査で判明した母の様子にショック!元ヤングケアラーが感じた在宅介護の限界

 高次脳機能障害の母をもつ元ヤングケアラーのたろべえこと高橋唯さん。母親が利用する「障害福祉サービス」の区分更新調査のために、母が通うデイサービスを訪れたときのこと、母の様子を聞いて驚いたという。母親のケアを今後どう続けていくべきなのか、心境の変化を綴ってくれた。

認定調査で母が通うデイサービスへ

「お母様は常にマンツーマン対応で目が離せなくて、ご家族も大変だろうと思っていたんですよ」

 私は思わず耳を疑った。

 母の障害支援区分の更新時期がやってきた。前回の記事では、主治医の意見書を書いてもらうために病院へ行ったことを書いた。今回は認定調査のために母の通うデイサービス(以下、デイ)へ行ったことについて書いていきたい。

→母の「障害福祉サービス」区分変更調査に立ち会った元ヤングケアラーが戸惑いと罪悪感を感じた理由

 認定調査では市から調査員がやってきて、生活状況について聞き取り調査が行われる。

 3年前の認定調査時の母は毎日家にいたが、今では週5日間デイに通っているので、デイで認定調査を受けることにした。母の担当ケアマネジャー(以下、ケアマネ)は母が通うデイの職員でもあるため、認定調査に同席をお願いして、日中の母の様子を教えていただくことにした。

 実はこれまでケアマネから日中の母の様子を詳しく聞いたことはなかった。デイとは毎日連絡帳のやり取りをしているが、「散歩に行きました」「工作をしました」などと書かれていて、母本人も楽しかったと話しているので、大きな問題なく過ごせているものだと思っていた。

 デイに着いてから、調査員が来るまで施設長と話をした。

 私が「実は今回の調査でもう少し区分が上がらないかなと思ってるんですけど…」と話すと、施設長が語ったのが冒頭の言葉。

「私たちもお母様の支援区分が2なのはおかしいなと思うんです。常にマンツーマン対応で目が離せなくて、ご家族も大変だろうと思っていたんですよ」

 施設長の言葉に、隣にいたケアマネもうんうんと頷いていた。

 私は正直、びっくりしてしまった。

 母は毎朝、自分なりに化粧をして「行ってきまーす!」と元気に家を出ていく。会話も部分的に聞けば成り立っているように感じる。母はデイに行くときはとても張り切っているようなので、家にいるときよりもいろいろなことができているのではないかと思っていた。

 そのため、手がかかるのは家の中でだけで、デイの職員には大変さをわかってもらえていないのではないかと思い込んでいた。

 また、「常にマンツーマン対応」というところも気になった。私は母のことを「障害はあれど、まだまだいろいろなことをやればできる」と思っていたことや、家の中では基本的に放任主義でもなんとかなっていることから、デイで他の利用者もいる中で常にマンツーマン対応しなければならないほど要介護度が高いとは思っていなかった。

認定調査でわかった母の普段の様子

 母が日中過ごしているデイの応接室に、調査員がやってきて認定調査が始まった。デイでの具体的な母の様子をケアマネが調査員に伝えてくれた。ざっくりと、以下のようなことを言っていた。

・転びやすく、何をするかわからないので移動はすべて付き添っている。目を離すとひとりで立ち上がってしまうので、「職員を待ってください」と伝えると、「立つのぐらい、ひとりでいいでしょう!」と反抗する。

・トイレに間に合わず汚してしまう。使い方も適切ではない。本人も気にしていて頻繁なときは10分おきにトイレに行くので、毎回、職員が付き添っている。しかしリハパンや吸水ショーツの使用は拒否する(最近は使用している)。パッドは適切に使えない。

・水筒にコーヒーを入れて持っていく。他の人は持っていっておらず、デイにコーヒーがあるのに持っていくのをやめない。水筒をきちんと扱えないので中身をいつもこぼしてしまう。

・他の利用者に「うるさい!」と言ってしまう。職員がうまく取り持ってくれているためトラブルにはなっていない。

・「私はなんで、自分で自分のことができるのに、こんなところにいるの?」と職員に聞く。職員が「ご家族はお仕事に行っているから、その間心配でしょう」と説明すると納得するが、5分後にまた同じことを聞く。

・やる気はあるがすぐ飽きてしまう。

認知調査で感じた複雑な気持ち

 思っていたよりも職員に大きな負担をかけていることを知り、申し訳なくなった。母は「外面が良い」というか、多少の社会性は残っているものだと認識していたので、デイの職員の前ではもう少し良い振る舞いを心がけているかと思っていたのに、外に行っても自分の行動を制御できないほどの障害があるのかと思うとショックだった。

 ケアマネに「毎日、そんなに大変だったんですね。申し訳ないです」と謝ると、「いえいえ。私たちは仕事ですから全く構わないですけれど、ご家族は大変でしょう」と言ってくださり、ありがたいやら、心苦しいやら、複雑な気持ちになった。

 認定調査員の方もよく話を聞いてくださる方だった。これでしばらく待つと認定結果が通知される。

今後の母のケアに関して思うこと

 今回、認定調査を通して、母のケアはデイの職員から見てもなかなか骨が折れることだとわかった。正直、在宅で母をケアするのは大変だと思うことが何度もあったが、一方でこのくらいたいしたことないのでは?と思うこともあり、母本人は家にいる気満々なのに施設に入れてもいいのか?などと悩んでいた。

 ケアマネの言葉を聞いて「ああ、やっぱり大変だと思ってよかったのか」と少し安堵した。

 やはり在宅ケアの限界は近いのだと、吹っ切れた。今後の目標は、母の入れる施設を探していくことだ。

→たろべえさんのほかの記事を読む

ヤングケアラーに関する基本情報

言葉の意味や相談窓口はこちら!

・ヤングケアラーとは

 日本ケアラー連盟https://youngcarerpj.jimdofree.com/による定義によると、ヤングケアラーとは、家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18才未満の子どものことを指す。

・ヤングケアラーの定義

『ヤングケアラープロジェクト』(日本ケアラー連盟)では、以下のような人をヤングケアラーとしている。

・障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている

・家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている

・障がいや病気のきょうだいの世話や見守りをしている

・目を離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている

・日本語が第一言語でない家族や障がいのある家族のために通訳をしている

・家計を支えるために労働をして、障がいや病気のある家族を助けている

・アルコール・薬物・ギャンブル問題を抱える家族に対応している

・がん・難病・精神疾患など慢性的な病気の家族の看病をしている

・障がいや病気のある家族の身の回りの世話をしている

・障がいや病気のある家族の入浴やトイレの介助をしている

・相談窓口

・厚生労働省「子どもが子どもでいられる街に。」

児童相談所の無料電話:0120-189-783

https://www.mhlw.go.jp/young-carer/

■文部科学省「24時間子供SOSダイヤル」:0120-0-78310

https://www.mext.go.jp/ijime/detail/dial.htm

■法務省「子供の人権110番」:0120-007-110

https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html

文/たろべえ(高橋唯)さん

「たろべえ」の名でブログやSNSで情報を発信中。本名は、高橋唯。1997年、障害のある両親のもとに生まれ、家族3人暮らし。母は高校通学中に交通事故に遭い、片麻痺・高次脳機能障害が残ったため、幼少期から母のケアを続けてきた。父は仕事中の事故で左腕を失い、現在は車いすを使わずに立ってプレーをする日本障がい者立位テニス協会https://www.jastatennis.com/に所属し、テニスを楽しんでいる。現在は社会人として働きながら、ケアラーとしての体験をもとに情報を発信し続けている。『ヤングケアラーってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『ヤングケアラー わたしの語り――子どもや若者が経験した家族のケア・介護』(生活書院)などで執筆。第57回「NHK障害福祉賞」でヤングケアラーについて綴った作文が優秀賞を受賞。
https://twitter.com/withkouzimam  https://ameblo.jp/tarobee1515/

●母の「障害福祉サービス」区分変更調査に立ち会った元ヤングケアラーが戸惑いと罪悪感を感じた理由

●「介護認定調査」を受けるときに大切な4つのことと裏話|社会福祉士ライトさんが解説

●岩手でひとり暮らしする認知症の母の認定調査を東京からLIVEで見守った息子の話

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