【ヒートショック】60代以上の5人に1人は対策を取らずに入浴している
暖かいリビングから寒い脱衣場や浴室に移動し、熱いお湯に入浴すると浴室で倒れてしまう「ヒートショック」。高齢者に起こりやすい事故の一つとして、消防庁も注意を呼びかけている。日々直面するリスクだが、一般にどの程度認識が進んでいるのか。給湯機器メーカーの「ノーリツ」が、中高年世代を対象に大規模な調査を行った。
【目次】
入浴時の事故に対する意識は高くない!?
ノーリツは毎年、入浴に関する調査「おふろ白書」を行っている。15回目となる今回は、高齢社会で問題化している「ヒートショック」に焦点を当て、全国の60代以上と、その子世代にあたる40~50代の男女、合計2452人を対象としたアンケート。
ヒートショックとは、血圧の急上昇や急降下によって起こる症状の一つ。人間の体は急に寒さを感じたとき、熱を奪われないように体の表面の血管を収縮させる。この際、血管抵抗が増して血圧は上昇する。逆に、暖かい場所に行くと血管は開き血圧は低下。気温の差が激しいと血圧が急変動することになり、ヒートショックを引き起こす。
まず、ヒートショックを含む入浴中の死亡事故がどれだけ理解されているかという実態を調べた。「入浴中の事故死の年間件数は、交通事故死と比較してどの程度だと思いますか?」という質問に対し、正解である「約5倍(約1万9000件)」と答えたのは、全回答者の4.2%。1番多かった回答は「交通事故と同程度」で、26.6%だった。
交通事故死は「警察庁交通局交通事故死者数の推移」によると、年間約3700件。道路よりもお風呂の方が、注意すべき場所と言えそうだ。同社では、「入浴中の事故死数の多さに対する認識は低いことがわかった」と、分析している。
実際に、高齢者の冬場の入浴時対策はどうだろうか。寒暖差が出ないように工夫しているか調べた結果が、以下のグラフだ。
一番多かった回答が「浴室・脱衣室・リビングなどすべて暖める」の23.5%だった。しかし「どこも暖めない」という人が19.2%、つまり5人に1人おり、事故が起きやすい環境は決して少なくないと考えられた。
対策を取りたいと思ってはいるが…
最近では「ヒートショック」という言葉も広まってきているように思えるが、この調査ではどれだけ認知されているかについても調べている。
「『ヒートショック』という言葉を聞いたことがあるか・説明できるか」という質問について、親の見守りが必要となってくる40~50代で集計。その結果、「聞いたことはあり、かなり詳しく説明できる」と「聞いたことはあり、ある程度説明できる」を合わせると、70.3%が「説明できる」ことがわかった。
さらに、この世代に「入浴時に親御さんが何かあった時のための対策を取っていますか?」と聞いたところ、「ヒートショックについて説明できる」と回答したうちの49.3%は「対策を取りたいと思うが取れていない」と回答。
同社では「子世代の知識と、親に対する実践が結びついていない状況が明らかになった。60代以上の世代では、ヒートショックへの認識があり、ある程度の対策もとられている。その一方、ヒートショックに対し知識もあり、親の健康を気にする子世代で対策をとっていない人が多いことが判明した。このギャップを企業として埋めていきたい」とコメントしている。
ヒートショック、4つの対策
そこで同社では入浴時の事故を防ぐため、簡単にできる4つのヒートショック対策を提案している。
●室内、脱衣室は浴室との温度差をなくす
脱衣室では、セラミックヒーターなどの簡易ヒーターを利用する。浴室内はヒーターの利用が危険なため、事前に温める工夫としてシャワーによる浴槽へのお湯はりをする。蒸気が熱を効率的に拡散させるため。浴室マットなどで、冷えた浴室の床部分が直接体に触れない工夫も効果的。
●身体への負担を軽減する
肩からのかけ湯や全身浴は、心臓など身体への負担になりやすい。半身浴の場合、かけ湯で肩を濡らすと、その部分が冷えて肩まで湯船に浸かろうとしてしまう。かけ湯をするときは、「おへそから下」を心がけ、上半身が冷えてきたら乾いたタオルを肩にかける。
●のぼせを防止する
入浴する際の温度は41度以下で、10分間以内にする。
●家族で見守る
入浴するときは、家族にひと声かけてから。
ヒートショック対策は、特に難しいことは何もない。風呂場と脱衣所、居室の温度差を小さくすることを心がけて、事故なく冬を乗り切りたい。
【調査概要】
調査対象:ノーリツ製品所有者専用サイト「CLUB NORITZ」会員
調査方法:インターネット調査
回答数:2452人(男性1881名、女性571名)