「ヒートショック」で命を落とさないために!すぐに始めたい6つの対策
「ヒートショック」とは、環境温度の急激な変化による血圧の変動で、健康に悪い影響が及ぶこと。ひどい場合は失神したり心臓発作を引き起こし、死に至ることも。特に冬場、高齢者に多いのが特徴だ。
居室と脱衣所の温度差が激しくなるこの時期、気をつけたいこととは?
東京都健康長寿医療センター研究所・前副所長の高橋龍太郎さんはこう説明する。
「中でも風呂場で起こるケースが圧倒的に多い。問題は脱衣場の温度。寒い時期は居間と脱衣場の温度差が20℃近くにもなります。服を脱ぐと血圧が上昇し、入浴すると血圧が一気に下降。この急激な変化に体が耐えられず意識を失い、溺死してしまうケースが多く見られます」(以下、「」内高橋先生)
家の中の温度差をなくす6つの方法
年間で平均約1万4000人もの人がヒートショックに関連した入浴中急死をしたと推計され(厚生労働省や東京消防庁の調査結果を総合し推計)、その死亡者数は交通事故による死亡者数をはるかに上回るという。これらの事故を防ぐには、「家の中の温度差をなくすこと」と高橋先生。
「温度差をなくすことで、ヒートショックは確実に防げます。次にあげた6つの項目を実践してみてください」
【1】脱衣場やトイレなどへの暖房器具の設置や断熱改修。特に脱衣場は、風呂に入る数十分前から暖房するとよい(浴室では、浴室専用の暖房器具を使用する)。
【2】入浴前にシャワーを5分ほど出して、浴室を暖めておく。シャワーを活用した浴槽へのお湯はりが効果的。
【3】夕食を食べる前、外気温が低くならない日没前に入浴する(仕事のある人は休日などに実施)。人間のホルモンのリズムのピークは午後2~4時。この生理機能が落ちないうちに入浴するのが体への負担が少ない。
【4】食後1時間以内や飲酒時は、血圧が下がりやすくなるため入浴を控える。
【5】お湯の温度は、41℃以下に設定する。
【6】後期高齢者は、なるべくひとりでの入浴を控える。公衆浴場や日帰り温泉等を活用して入浴するのも有効だ。糖尿病や脂質異常症などの持病のある人は、特に注意したい。
部屋全体を暖かくして薄着を心がける
日本は北米や北欧などに比べて温暖な地域が多く、室内の温度管理が真夏を想定した家々が多い。そのため冬場に部屋の温度が下がり、昔から半纏など衣類を着込んで対処する方法がとられてきた。
しかし、高橋さんはこう語る。
「衣類を着込むと当然、動きが鈍くなります。これも身体機能が衰える原因の1つで要注意です。北海道など極めて寒い地域では、暖房設備がしっかりとしているので、薄着でいられます。むしろ東京など都心の方が着込んでいる。できるだけ部屋全体を暖かくし、動きやすい服装で行動するよう心がけてください」
発熱保温性の高い下着を着用するのも寒さ対策の1つ。また、野外で行動するときは、薄手の服を重ね着して対応。運動などで汗をかいたら、1枚ずつ脱いで、自在に体温調節できるようにしたい。
「居室の温度と健康の関係が、さまざまな調査・研究によって明らかになりつつあります。こたつや電気カーペットなど局所暖房に頼るのではなく、部屋全体を暖める工夫をすれば、老化防止にもつながり、この寒い冬を、健康的に乗り越えられるはずですよ」(高橋さん)
教えてくれた人
高橋龍太郎さん/東京都健康長寿医療センター研究所・前副所長。
※初出女性セブン