「定年後うつ」にならない“充実したセカンドライフ”は準備で決まる!知っておきたい「60才〜75才に起こる出来事チェックリスト」
「定年後は再雇用でバリバリ働いていた夫が、70才で引退した途端、テレビだけがお友達状態になって、家から出なくなったんです。話しかけても“ああ”とか“おう”としか言わず、たるんだゴムのよう。2年もそんな状態が続いていて、いい加減、趣味を見つけるなどして出かけてほしいです」(埼玉県・72才)
こうした変化は、よくあることだと、精神科医の奥田弘美さんは言う。
「再雇用での仕事は、男性にとってストレスが大きいんです。これまで管理職だったのに部下になってプライドが傷ついたり、新しい環境になじめなかったり。そうした状態から解放されると、蓄積された疲れが出て、1~2か月は何もやる気がなくなるのは、誰にでも起こることなんです」(奥田さん・以下同)
その状態が長く続いたとしても、ちゃんと眠れて食事も会話もできているなら問題ないが、笑顔が消え、ネガティブなことしか言わなくなり、何をしても楽しめない様子なら、「定年後うつ」を疑ってもいいという。
友達が仕事関係者だけの人は注意
「仕事人間で、プライベートの人間関係や自分ひとりで楽しめる趣味がない人が、『定年後うつ』になりやすいとされています。特に、仕事がらみの人間関係しか築けていなかった人は、仕事がなくなった途端、人間関係も途切れてしまいます」
もし、夫あるいは自分が定年後うつになりやすいタイプなら、いまから“定年後にひとりでやりたいことリスト”を作成しておくのがおすすめだという。外でできること、家の中でできることをそれぞれ複数考えよう。
「パートナーとはいつ死に別れるかわかりませんし、自分がやりたいことでも相手は興味がないこともあります。ですから、できるだけ多くひとりで行動できることを探しておくことがポイントです」
定年後の時間は、自分のためだけに使える。その時間をどう過ごすかは、事前の準備にかかっているのだ。
教えてくれた人
井戸美枝さん/ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士
生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題を専門とし、「難しいことでもわかりやすく」をモットーにメディアなどで解説。近著に『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新聞出版)。
小野喜美子さん/女性の投稿誌『Wife』編集長
夫や子供との関係、老いへの向き合い方など女性の生き方をテーマにした投稿誌『Wife』の5代目編集長。約30年間、化学系企業で医薬品などの研究開発に従事する傍ら、『Wife』でも約20年間執筆してきた。
高草木陽光(たかくさぎはるみ)さん/夫婦問題カウンセラー
「HaRuカウンセリングオフィス」代表。これまで約9000人のカウンセリングを行い、夫婦問題や家族問題で悩む人の心に寄り添ってきた。著書に『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』(左右社)など。
奥田弘美さん/精神科医
産業医、精神科医として、老若男女のメンタルケアに携わっている。著書に『「会社がしんどい」をなくす本』(日経BP)、共著に『不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方』(すばる舎)など。
取材・文/桜田容子 イラスト/尾代ゆうこ
※女性セブン2023年7月13日号
https://josei7.com/
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