清水ミチコさん(62才)が失敗から学んだ”感謝する”生き方「40代、50代に自分に言ってあげたいこと」
タレントの清水ミチコさん(62才)は1983年にデビューし、来年でタレント活動30周年を迎える。ピアノの弾き語りモノマネや芸能人の顔マネで一躍有名人となり、”ものまね女王”と称されるが、華やかな世界で活躍する裏側では、臆病な性格が災いして数々の失敗をした若い頃の経験があると語る。そんな失敗から学んだ「感謝」する生き方とは――。
臆病な性格だった“ものまね女王”
テレビや舞台などで堂々とネタを披露し、観客を沸かせているタレントの清水ミチコ。“ものまね女王”と称され、ものまねタレントのトップを走り続けてきた彼女だが、本当は臆病な性分なのだという。
「10代の頃から、臆病がゆえにさまざまな失敗を繰り返し、その都度クヨクヨしてきました。高校受験のときは、過度のプレッシャーで問題が頭に入らず、不合格になったことも…」(清水・以下同)
そんな清水がタレントの道に進んだのは、小学生時代に、自分が考えた替え歌を友達が笑ってくれたのがうれしかったからだという。その快感を忘れられず、短大卒業後、アルバイトをしながらイラストレーターでエッセイストの南伸坊さんらが講師を務める「パロディ講座」に通った。
そして1983年、アルバイト先の縁でラジオ番組『クニ河内のラジオ・ギャグ・シャッフル』にアシスタント出演させてもらい、これを機にデビュー。その後、バラエティー番組『笑っていいとも!』(フジテレビ系)などの人気番組に出演し、順調にキャリアを積んでいく。
伝説のバラエティー番組『夢で逢えたら』で感じた怖さ
「そんな中でも生来の臆病さが顔を出し、失敗を呼び込んでしまうんです」
特に落ち込んだのは、1988~1991年に放送していたバラエティー番組『夢で逢えたら』(フジテレビ系)での出来事。お笑いコンビのダウンタウンやウッチャンナンチャン、野沢直子ら6人がメインで出演していた。当時、清水は28才。
「これまでは事前に考えたネタを披露していたのですが、『夢で逢えたら』では、一発勝負のコントをする。そんな経験がなかったので、私だけコントもトークもうまくできない…。一度“しゃべるのが怖い”と思ってしまうと、コントではかみまくり。そんなある日、番組を見ていたお子さんから手紙が届き、そこには、<ミッちゃんはやる気あるんですか?>と書かれていたんです――電気でも走ったようなショックを受けました」
窮地を脱したのは、「伊集院みどり」というキャラクターのネタがきっかけだった。それは傍若無人な女性キャラクターで、清水の当たり役になった。
「人の気持ちを無視してのびのび生きる伊集院みどりはまさに理想。みどりを演じるのは自分でも気持ちがよかったし、何より、たくさん笑ってもらえて、救われました」
清水はその後、臆病な自分が出てくるたび、人目を気にしない女という、理想の人物になりきることにした。
「正直な自分をさらけ出すのではなくて、物おじしない女性のフリをする。すると、だんだん理想の自分に近づいていく錯覚を起こすんです。クヨクヨしがちな自分を脱するには、それが手っ取り早かった。自分の性格を本質的に変えることはできませんから」
不運の中で時折光が差せば「それで充分」
理想の人物のフリをする以外にも、自分を強くしてくれたものがある。それは、清水が20代の頃、アルバイト先の女性主人から言われた言葉だ。
「私が“一生懸命やっているのに、何をやってもうまくいかなくてつまらない”とこぼしたら、“どんな人だって幸せになれないようになっているし、むしろ世の中はうまくいかないもの。
だから、立てた予定が思い通りにいったときや、たまにいいことがあったときには、うんと喜ぶようにするといい”と言われたんです。
確かにそうだ。まずまずの不運の中にいるけれど、時折光が差すことがある。それで充分なんだ。そう思えたら、気が楽になりました」
50代の教訓となった「足るを知る」という言葉
そしてもう1つ。50代の頃に、宝塚歌劇団にいた友人から聞いた「足るを知る」という言葉も教訓になっている。
「友人は、高倍率を勝ち抜いて宝塚に合格したのに、うれしかったのはその瞬間だけで、その後は“あの役がやりたかったのに”など、欲望が募るばかりだったそうです。だけどあるとき、“足るを知らないんじゃないか”と気がつき、ものの感じ方が変わったと話してくれました。
私も仕事が軌道に乗っていた30代、40代の頃はないものねだりがひどかった。心が満足していないから、毎日がつまらないんです。人に感謝もできなくて、暗い表情をしていたんでしょうね。不運を自ら呼び込んでいました」
以降、清水は意識して感謝をするようになったという。
「人はしてもらったことや、ありがたい状況ほど忘れていく。だから、スケジュール帳や携帯電話のメモに、ほめられたこと、感謝したこと、その月の目標などを書いています」
いまでも後悔や反省は多いが、小さなことではクヨクヨしなくなってきたという。
「年を取って若者特有の繊細さが薄れてきたのかもしれません。だから、いまはすごく楽。40代、50代の自分に言ってあげたいですね。“誰もあなたのことは見ていないよ”って。そうしたら人目を気にしなくて済みますから」
教えてくれた人
清水ミチコさん/タレント。1983年にデビューし、以来ものまね芸を中心に活躍。現在、全国ツアー「清水ミチコ リサイタル~カニカマの夕べ~」を開催中。2023年1月2日に恒例の日本武道館公演も予定。著書に『カニカマ人生論』(幻冬舎)など。
取材・文/桜田容子
※女性セブン2023年1月1日号
https://josei7.com/
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