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ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』6話を考察。日曜の夕方は憂鬱だから、カフェの名前は「サンデイズ」がいいんじゃない!?

 ラジオ番組のバスツアーで出会い、宝くじの当選金3千万円を得た3人(清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠)は、カフェを開く夢を具体的に実現するべく、カフェをプロデュースする専門家に依頼して物件を探します。頼れる仲間も増え、今のところ順調な歩みを続ける『日曜の夜ぐらいは…』(テレビ朝日系 日曜よる10時〜)6話を、ライター・近藤正高さんが振り返り、今後の展開を考察します。

予告編で心配したけれど

『日曜の夜ぐらいは…』第5話の終わりに流れた次回予告では、サチ(清野菜名)が翔子(岸井ゆきの)・若葉(生見愛瑠)・みね(岡山天音)と一緒に唇をブルブル震わせるカットが出てきた。筆者はそれを見て、カフェ開店に向け、接客のための発声練習でもしているのだろうか……と思ったのだが、違った。

 先週(6月4日)放送の第6話の冒頭では、翔子の見つけた店舗用の物件をみんなで見に行き、ここに決めようとした矢先、不動産業者が現れたかと思うと、そこに貼ってあった「貸物件」の紙をはがしていった。例のブルブルは、先約がいたとわかった4人が、その悔しさとブーイング的な意味を込めたものだったのである。

 ドラマ本編では、みねも3人にうながされるように一緒に唇を震わせたところ、翔子や若葉から「ていうかヘタクソ」「音程悪いですよね」とダメ出しされていたのがおかしかった。奇しくも、第6話のすぐあとに同じテレビ朝日系で放送された音楽バラエティ『関ジャム 完全燃SHOW』では、ゲスト出演した歌手のAIやレギュラー出演者の関ジャニ∞の安田章大が、歌う前に音程を合わせるため、よく唇をブルブル震わせる(リップロールというらしい)という話をしていて、まさかのシンクロに驚かされた。

 このドラマの予告にはどうやら2つあるらしく、ドラマのエンディングのあとに流れるものと、ほかの番組の合間などに流れるものとではちょっと内容が違っている。後者のほうの第6話予告では、サチたちのカフェをプロデュースしてくれることになった住田賢太(川村壱馬)に200万円を持ち逃げされてしまうのか!? と思わせるようなセリフが出てきた。

 実際に本編を見ると、そのセリフは、サチたちが賢太へのコンサルタント料を銀行から200万円を振り込んだあと、賢太がそれを確認するまでのあいだ200万円はどこにあるのだろうと、ふと疑問を呈した若葉から発せられたものだった。ただし、それはまったくの杞憂であり、すぐあとには無事、賢太から入金を確認したとの連絡が入る。例の予告を見たとき、まさか、あのいかにも好青年という感じの賢太が……と胸がざわついた筆者だが、それこそ予告編の制作者の思うツボであっただろう。

 ともあれ、自分たちの店にふさわしい物件を探したり、200万円を銀行で振り込んだりと、カフェを開くまでの段取りの一つひとつがサチたちにとってはイベントだった。最初に見つけた物件は残念ながら逃してしまったが、そこで悔しいと思えることさえ、いままでならそういうものだとあきらめてしまったであろう彼女たち(みね君も含む)には新鮮であり、一歩前進であった。

ご利用、ありがとうございます

 入金後、賢太からサチへその確認の連絡とともに、同時にいまから打ち合わせをしませんかと誘われる。もちろん、開店に向けてすっかり気分があがっている彼女たちに断る手はない。とあるカフェでの打ち合わせに入ると、賢太を前に、自分たちの目指す店についてすでにみんなで話し合っていたことを、ここぞとばかりに語る語る。

 まずサチが、自分たちには、おしゃれだったり素敵な感じの店は向いていないと切り出すと、若葉が続けて、一人でも気がねなく入れるような敷居の低い店を目指していると説明。さらに翔子が、メニューは、ちょっと贅沢な飲み物やアイスを中心とし、自分にご褒美をあげたいなという気持ちのときに楽しめるものにしたいと提案した。ここでサチが思い出したように、自分たちの母や祖母のような元乙女の人たちも場違いにならない店にして、車椅子の人でも大丈夫なようバリアフリーもちゃんとしたいと、付け加える。これに対し、サニタリー関連の会社に勤めるみねが、トイレのバリアフリーは任せてくださいと胸を張った。

 賢太は話を聞いて、チーム全員が共通の意識を持っているのでやりやすいと言ってくれた。予算的にも問題なく、強い話題性には欠けるものの、そこは追い追い考えていけばいいという。何よりも賢太から、自分としてもすごくやりがいがあると言われ、4人はますます希望を膨らませる。

 そのとき、ふと窓の外を見ていた翔子が、先日の不動産業者が「FOR RENT」の看板を持って通りを歩いて行くのを目にする。よくわからないけど何か予感するものがあった彼女は、このチャンスを逃したくないと外へ飛び出した。賢太を含めほかの4人もあわててそれについていく。

 翔子の勘は的中した。不動産業者を追っていった先には、落ち着いた雰囲気の古民家があった。彼女たちはそれを見て一瞬にして心を奪われ、思わず業者の人の手を握りしめる。それから、業者の人に勧められ、中も見せてもらうことに。このとき、サチたち3人の脳裏には、それぞれつらい経験をしながらも出会うにいたるまでのことが走馬灯のように流れる。彼女たちだけでなく、みね君には、小学生のころ、女の子とばかり遊んでいると同級生の男子たちから馬鹿にされた記憶がよみがえった。さらに賢太も、カフェプロデューサーになると男友達らに伝えた際、「うさんくさい」「チャラい感じがする」「女だます系だろ」などとさんざん言われたことを思い出す。

 だが、そんな各人のつらい記憶も、おそらくこの瞬間、洗い流されたに違いない。賢太も思いを同じくすることで、この日、単なるプロデューサーという立場を超え、サチたちと同じチームの一員に加わったといえる。

 サチたちが出かけているあいだ、彼女の母・邦子(和久井映見)は先日より同じ団地に住むようになった若葉の祖母・富士子(宮本信子)から唐突に、自分は邦子ちゃんを利用しているようなところがあると謝られる。富士子に言わせると、本当は“孫離れ”しないといけないのに、いま若葉を一人にすると彼女は自分を心配して幸せになれないと思ったので一緒に東京に出てきたのだが、いまの自分は仕事もなく若葉のため何もできないでいる。それでどうしようと思っていたところ、目の前に(足の不自由な)邦子ちゃんがいて、私にも何ができるかなと思って、それに甘えてしまった……というのだ。

 だが、謝る富士子に、邦子は「何ですかそれ、どんどん利用してください。うれしいです。ご利用、ありがとうございます」と茶目っ気たっぷりに返すのだった。若葉がさっきの入金時のように、よけいな心配をしがちなのも、祖母譲りなのかもしれない。

エレキコミックのラジオ番組のおかげ

 さて、賢太への入金を済ませ、懸案だった店舗も見つかり仮契約を済ませたサチ・翔子・若葉・みねの4人は、その夜、サチの家に集まり、邦子特製のカレーでささやかながらお祝いをする。もちろん富士子も同席し、みね君が女性たちのなかにいて違和感のないことに感心する。邦子は邦子で「若葉ちゃんはかわいいから、カフェでファンとかできちゃうんじゃないの」と言うと、若葉は恋愛は嫌いだと、あからさまに拒否感を示した。以前、サチが賢太を翔子の元カレと同じ名前だと紹介したとき、若葉がいやそうな顔をしていた理由がこれでわかった。母親が恋多き女ゆえ、これまでさんざん振り回されてきたことがトラウマになっているのだろう。それにしても、若い男女がチームを組むドラマなのに、一切、恋愛関係が出てこないというのも珍しいのではないか。

 カレーに舌鼓を打ちながら、邦子が改めて、こうしてみんなが出会ったのもエレキコミックのラジオ番組のおかげだね、と口にした。ここから、そもそもなぜ番組を聴き始めたのか、お互いに語り合うことになる。

 みね君の場合、偶然聴き始めたのだが、ハガキを出したらエレキの二人が面白がってくれたうえ、さらにツアーにも参加したところリーダーに指名され、しだいに楽しくなっていったという。このとき彼がポロリと漏らした、「お笑いとか好きですけど、面白くないやつは価値がないみたいな、つまんねーとか言われる感じ、じつはあんまり好きじゃなくて」という一言に、筆者は激しく同意せずにはいられなかった。お笑いとは本来、場を和ませたり盛り上げるためのものなのに、それが、芸人同士ならいざ知らず、一般の人間のあいだでもマウントを取り合うための道具になってしまっている――。みね君のセリフは、そんな昨今の風潮に疑問を呈しているようにも受け取れた。

 お笑いはときに人を励ましたり、希望を与えたりする。翔子がエレキのラジオを聴き始めたのも、自分のタクシーに乗せた女性客が、番組を聴いて泣き笑いをするさまを目の当たりにしたからだった。一方、若葉は学校に通っていたころ、憂鬱だった日曜の夕方、たまたまこの番組と出会って、とにかく笑うと決めたという。それを聞いて、富士子がそのころ若葉の書いた詩を思い出す。そこには「日曜の夜に死にたくならない人は幸せな人だと思う」と書かれていたが、れを添削した教師から返ってきたのは「もっと楽しいことを考えましょう」という言葉であった。孫の気持ちを理解しない教師に、富士子は腹を立て、学校に怒鳴り込んだという。

 日曜の夕方はきついという若葉の気持ちに、ほかのみんなも深く共感する。そこでふいに富士子が、カフェの店名に「サンデイズ」はどうかと思いつく。これを聞いてサチたちは顔を見合わせると、「いいんじゃない!?」と即座に採用した。ひとりで居残って仕事をしていた賢太も、サチから店名が決まったことを伝えられ、ほほえむ。

 こうしてその日のうちに店名まで決まって、第6話は結局、サチたちに邪魔が入ることもなく、幸せな雰囲気のままで終わった。あまりにも事が順調に進みすぎるので、このあと何かとんでもない出来事が待ち受けているのではないかと、かえってネガティブな予感も抱いてしまうほどである。

 いや、このドラマは、そんなふうに考えてしまう筆者のような者にこそ、何事もいいほうにとらえよとメッセージを送っているのかもしれない。そう、Mrs.GREEN APPLEの主題歌だって「ケセラセラ」……なるようになるさ、と歌っているではないか。今後、サチたちは何があっても、きっとカフェをオープンし、そろって幸せになるはずである。そう信じて、今夜放送の第7話も見守りたい。

→このドラマのレビューをすべて読む

文/近藤正高 (こんどう・ まさたか)

ライター。1976年生まれ。ドラマを見ながら物語の背景などを深読みするのが大好き。著書に『タモリと戦後ニッポン』『ビートたけしと北野武』(いずれも講談社現代新書)などがある。

●ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』3話を考察。運に恵まれなかった3人にとって、人生を変えるに十分な額「1千万円」を狙うのは“久々の人物” 

●ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』2話を考察。サチ(清野菜名)が楽しみを禁じるのは、母(和久井映見)への負い目?そして母も…

●ドラマ『日曜の夜ぐらいは…』は車椅子の母からの贈り物から始まる。「たまには私から離れて、思いきり笑ったりしてらっしゃい」

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