「手の薬指だけ動かせる?」体の不思議を体験できるチャレンジ5選【専門家監修】
長いことつきあってきた自分の体。自分が一番よくわかっているとは思うものの「どうも最近体が思うように動かない」なんてことはないだろうか。実はそれって体の構造のせいかも。知っているようで知らない体の仕組みについて解剖学の専門家に聞いた。
手の薬指を離せますか?
【1】右手と左手の指先を合わせる。
【2】それぞれの中指だけ折り曲げ、第二関節同士を合わせる。
【3】【2】の状態のまま、親指、人差し指、小指を順にくっつけたり離したりする。
【4】さて、薬指も同様に、くっつけたり離したりできますか?
解説「手には薬指と中指を単独で伸ばす筋肉はない」
上記チャレンジの結果はどうでしたか?
「実は、このように手を組んだ状態で薬指を動かすのは、指の構造上難しいんです」
と答えを教えてくれたのは、解剖学者で文京学院大学教授の樋口桂さんだ。ではなぜ、薬指だけ離せないのか。
「左右で合わせた手の指先を1本ずつ離すためには、その指だけを立てて伸ばさなければなりませんが、そのためには筋肉が必要です。指を伸ばす筋肉は手首より上の前腕にあり、人差し指~小指の4本を一括して伸ばす筋肉(総指伸筋)(そうししんきん)と小指だけ単独で伸ばす筋肉(小指伸筋)(しょうししんきん)、親指と人差し指をそれぞれ単独で伸ばす筋肉(長母指伸筋・示指伸筋)(ちょうぼししんきん・じししんきん)はあるのですが、薬指と中指には、それぞれを単独で伸ばす筋肉がありません。ですから、薬指と中指を動かすときは、隣にある小指や人差し指と一緒でないと動かせないのです」(樋口さん)
たしかに普段、薬指は小指と一緒に使う機会が多い。このような体の不思議に目を向けることは、自分の体を見直し、大切に感じるきっかけになるという。
※今回紹介する各チャレンジについては個人差があるので、解説の結果通りにならないこともあります。
指を90度に曲げたまま、パーにできる?
【1】手のひらを前に出し、パーの形にして指と指の間を大きく開く。
【2】指を閉じて、図のように90度に折り曲げる。さて、その状態のまま、指を開けますか?
【解説】
「指を90度に折り曲げたままでは、指は開けなかったと思います。これは“じん帯”のせい。指のつけ根にある関節の両側面には“側副(そくふく)じん帯”と呼ばれるじん帯がついています。【1】のとき、このじん帯はたわんでいるので指を開けますが、【2】のとき、じん帯はピンと張って緊張した状態にあるので、関節の動きが制限され、指を広げられなくなるのです」(樋口さん・以下同)
<樋口さんのワンポイント豆知識>
じん帯は伸び縮みしませんが、関節をつないで補強したり、特定の方向に動くよう助ける働きがあります。