訪問診療にも慣れ、車椅子で家中をグルグル…今を楽しむ父【実家は老々介護中 Vol.15】
80才になる父は、がん・認知症・統合失調症を患い、母が在宅で介護中です。娘の私は、都心で夫、子どもと暮らす美容ライター。実家を手伝いに行くと、父の体の機能がだいぶ衰えたと感じます。できることは減っていくけれど、父がシャンと背筋を伸ばすような気持ちで心地よくいられればと思います。
介護サービスを活用して変化を乗り切る
訪問診療に切り替えて数か月。今度の主治医は60代半ばくらい、365日・24時間、緊急往診もしているクリニックのドクターです。ちょっとふっくらしてニコニコの、絵に描いたような優しいお医者さん。同行の看護師さんも50代くらいとベテランで、ニコニコ柔らかい。
「いつも奥さまがしっかり介護されていますよね。今は、どんなところが大変ですか」 と、看護師さん。
情報を引き出すコツなのでしょう、あらゆる場面で何度も聞かれたいつもの聞き方です。
「食事とトイレですね、とにかく時間がかかります。ただ、ヘルパーさんが来てからラクになりました。お父さんを車椅子に乗せて家じゅうグルグル押してやったり、気晴らししています」と、母。
そう、このころ一気に変化があり、車椅子と訪問入浴まで導入、ヘルパーさんの時間も増やしました。
元気なときは支えられてどうにか歩き、疲れてくる夕方からは車椅子で移動という感じ。後ろから押してあげる介助式車椅子は、1割負担だと月々350円くらいのレンタル料金です。母にせがんで電車が見える窓辺に連れて行ってもらったり、キッチンのベランダに並べた漬物樽から、母が白菜を引き上げる様子を眺めたりとエンジョイしています。なにより、介護のプロが来てくれることで、母に漬物の世話をする余裕ができて本当に良かった!
この時点で訪問看護が週2回、訪問診療が週1回、訪問入浴が週1回、ヘルパーさんが毎日。仕組みでありがたかったのは、訪問看護師さんが変わらなかったこと。通院していた病院内の訪問看護ステーションで、院内のドクターと連携していたのが、新しい主治医と連携できるのかな? と心配していました。
「今までの訪問看護ステーションから同じ看護師が行きますよ! 新しい主治医から、訪問看護指示書が行きますので大丈夫なんです」
と、ケアマネさんが説明してくれました。
車椅子へ移乗させる介助のコツは、足を引くこと
それにしても、母も私も、車椅子への移乗介助がちっとも上手くなりません。力を入れてる方向が噛み合わなくて、おっとっと、となりやすい。福祉用具の業者さんに介助のコツを聞くと、その方は、福祉用具専門相談員の資格は持っているけど、体に触れて介護をできる資格は持っていないのだそう。
「知識はあるけど実演で教えられないんです。お父さまのケアマネさんは介護福祉士だから体に触れて介護もできるので、今度聞いてみてください」
母と私は誰にでもなんでも質問しちゃうのですが、それぞれに領域があるのですよね。このコツは後日、ケアマネさんが来たとき、実演付きで教えてもらいました。
「コツはですね。足を引いて、本人が踏ん張れるようにしてから立たせるんですよ。まず、お父さんの足を手で持って直角より後ろにずらします。それから抱き抱えれば、本人の力を生かして立てるんです」
小柄な女性なのに男性をスイッと車椅子に移乗させる安定感。プロの技はすごい!
「介護に使うベッドやポータブルトイレって、下に隙間があるものがほとんどじゃないですか。あれ、足を引いて力を入れやすく、立ち上がりやすくしてあるんです」
へえーそうなんだ。早速、マネして父をソファに移乗させてみると、確かにいつもよりはラクかも? しかしこれ、全体重をこちらに預けてくるレベルになったら私には無理そう… … 。
ここへ来て、プロの安心感をすごく感じています。目下の父母の不満は介護のニオイ。換気しても抜けないのですが、介護のプロが来てくれるのを歓迎しているから気になるのかも。探し物上手な兄に消臭グッズを頼んでいるのに、まだ来ないのですが。何かいいものを見つけてもらおうと思います。
→ベッドから車いすへの移動をラクに 新介助術にオバ記者が挑戦!
文/タレイカ
都心で夫、子どもと暮らすアラフィフ美容ライター。がん、認知症、統合失調症を患う父(80才)を母が老々在宅介護中のため、実家にたびたび手伝いに帰っている。
イラスト/富圭愛
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