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高木ブー“90歳の自叙伝”にこめた思い「この本は『等身大を生きる人の物語』|連載 第92回

 4月6日に発売となる自叙伝『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小社刊)について、高木ブーさんは「この本は僕という人間を通した『等身大を生きる人の物語』として読んで欲しい」と言う。90年の道のりと、ドリフターズ、ウクレレ、家族への思いがたっぷり詰まった一冊で、ブーさんが読者に伝えたいこととは?(聞き手・石原壮一郎)

一歩引いて歩いてきたら幸せな90歳を迎えられた

 もう手元に見本が届いて何度もパラパラ開いているんだけど、4月6日に僕の自叙伝『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』が発売されます。子ども時代やドリフに入る前も含めて懐かしい写真もたっぷり入ってるし、僕にとって大切な人のインタビューもたくさん載っている。また宝物が増えちゃった。

 表紙の写真は孫のコタロウが撮ってくれたんだけど、それも感無量だよね。あんなに小さかったのに、すっかり大きくなったと思ったらこんなちゃんとした写真を撮れるようになって、4月からは大学生になる。そういう意味じゃ、コタロウ自身と彼を育てた娘のかおるや旦那さんも含めて、家族全員にとっての宝物でもあるかな。

 僕と家族が喜んでても世話ない。大事なのは、この本が読者のみなさんにとっての宝物になれることだよね。ヘンな言い方だけど、買って後悔することにはならないと思う。この本で書いたのは、高木ブーの物語ではあるけど、高木ブーだけの物語じゃない。

 間違いなく喜んでもらえるのは、かつてドリフターズのコントで大笑いして、今もドリフターズを好きでいてくれる人たち。ドリフについて書いた本はたくさんあるけど、この本には僕から見たドリフやメンバーのことが書いてある。先頭じゃなくていつも後ろ側にいた僕だからこそ、見えたことや書けたこともあるんじゃないかな。

 そのこととも関係あるけど、この本は高木ブーという人間を通した「等身大を生きる人の物語」でもある。ちょうど20年前に『第5の男』っていう本を出したけど、その本でも自分がドリフの中で「第5の男」としてやってきた意味や、その立場への誇りについて書いた。今度の本も、この20年の話も含めて、僕なりに果たせた役割や、背伸びをしないで等身大を生きてきた楽しさについて書いている。あらためてじっくり考えられたのは、貴重な経験だった。

 つくづく思うんだけど、いつも一歩引いて、まわりに合わせながら流されて生きてきたから、幸せな90歳を迎えられたんじゃないかな。「自分が自分が」と前に出てみんなを引っ張っていくのが得意な人もいるけど、僕はそういうタイプじゃない。無理にそっちを目指していたら、きっとどこかでつまずいていたし、大切なものもなくしていた。

 だから、僕のような「一歩うしろでがんばってる人」「流されて生きてきた人」に、とくに読んで欲しい。世の中の多数派は、前に出るタイプの人じゃないよね。そういう人たちが何となく「前に出られない自分」や「流されがちな自分」に引け目みたいなものを感じているとしたら、すごくもったいない。僕も以前は「こんな自分でいいのかな」と思ったこともある。だけど、そんな必要はまったくない。今は、そういう自分でよかったって堂々と言える。

 あらためて思ったのは、僕は家族といい仲間に恵まれてるなってこと。謙遜でも何でもなくて、僕がみんなにしてあげたことなんて何もないけど、してもらったことは山ほどある。ウクレレにもどんなに感謝しても感謝し過ぎってことはない。ウクレレとの出合いがなかったら、僕の人生はまったく違うものになってたもんね。

 読んだ人が「自分にとってのウクレレは何だろう」と考えてくれたら、とっても嬉しい。「そうだ、あれだ!」と気づいてくれたら、もっと嬉しい。誰にだって、自分にとって大切なものや感謝したいことがあるんじゃないかな。高木ブーという何の取り柄もない男の物語だからこそ、自分と照らし合わせやすいと思う。

 読んでいて楽しかったのが「ブーさんと私」の章。加藤(茶)、高城れにちゃん、大槻ケンヂ君、関口和之さんなどなど、僕と縁が深い人たちが「高木ブーってこんな人だよ」という話をしてくれた。家族が僕抜きで語り合った「高木家座談会」もある。自分の感覚と相手の感覚って、けっこう違うもんなんだね。そんなふうに見てたのか、あの時のことがそんなに印象的だったのかって、意外な驚きがたくさんあった。

 もうすぐ出る自叙伝のことばっかり話しちゃったけど、先月20日に出たばかりの画集第二弾『高木ブー画集RETURNS‐ドリフターズよ永遠に‐』(ワニ・プラス)も、おかげさまで大好評です。合わせて買って本棚に並べておくと、健康長寿の効果が期待できるっていう噂もあるらしいよ。なんちゃって。

ブーさんからのひと言

「前に出なくてもいい、流されたっていい。先頭じゃないからって、引け目を感じることないんだよね。僕の自叙伝を通して、そういうことを感じてもらえたら嬉しいな」

高木ブー(たかぎ・ぶー)

1933年東京生まれ。中央大学経済学部卒。いくつかのバンドを経て、1964年にザ・ドリフターズに加入。超人気テレビ番組『8時だョ!全員集合』などで、国民的な人気者となる。1990年代後半以降はウクレレ奏者として活躍し、日本にウクレレブーム、ハワイアンブームをもたらした。CD『Hawaiian Christmas』『美女とYABOO!~ハワイアンサウンドによる昭和歌謡名曲集~』『Life is Boo-tiful ~高木ブーベストコレクション』など多数。著書に『第5の男 どこにでもいる僕』(朝日新聞社)、『高木ブー画集 ドリフターズとともに』(ワニ・プラス)など。YouTube「【Aloha】高木ブー家を覗いてみよう」(イザワオフィス公式チャンネル内)も大好評。同チャンネルでは期間限定で「ドリフ大爆笑」の名作コントのデジタルリマスター版を続々と配信している。3月20日に『高木ブー画集RETURNS ドリフターズよ永遠に』(ワニ・プラス、2,700円+税)が発売。4月6日には、この連載をまとめた『アロハ 90歳の僕 ゆっくり、のんびり生きましょう』(小学館、2,200円+税)が発売!

取材・文/石原壮一郎(いしはら・そういちろう)

1963年三重県生まれ。コラムニスト。『大人養成講座』『大人力検定』など著書多数。1月26日に最新刊『無理をしない快感‐「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。この連載ではブーさんの言葉を通じて、高齢者が幸せに暮らすためのヒントを探求している。

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