ひざの痛み「自分で治せる?原因は?」よくある疑問に東大教授が本気で回答
寒さが厳しくなるにつれ、「階段を下りるときにひざが痛い」「正座ができなくなった」など、ひざに痛みを感じていませんか? 加齢とともに表れるそれらの症状で最も多いのが「変形性ひざ関節症」。日本で治療が必要な患者は約1000万人、潜在的な患者も含めると約3000万人と推定され(※)、誰もがなりうる病気です。ひざの痛みに関するよくある疑問を東大教授で整形外科専門医の福井尚志さんに聞きました。
(※)平成20年厚生労働省「介護予防の推進に向けた運動器疾患対策について」報告書より
Q1.ひざの痛みの原因はひざ軟骨がすり減るせいだと聞きましたが、軟骨はどうしてすり減るの?
A. 加齢とともに軟骨細胞の新陳代謝が衰えるからです
「年齢とともに肌のツヤや弾力はなくなってきます。これは皮膚を作っているたんぱく質に、年齢による質の低下が起こるから。同じような変化は、軟骨にも起こります。骨の表面を覆う軟骨も主成分のたんぱく質の質が悪くなる結果、もろく壊れやすくなり、やがてすり減ってしまうのです」(福井さん・以下同)
Q2.ひざ軟骨のもとになる栄養を摂れば、すり減った軟骨はもとに戻る?
A. たんぱく質をたくさん摂っても、もとには戻りません
「ひざの軟骨はコラーゲンをはじめとする複数のたんぱく質によって構成されています。しかし、軟骨の中の細胞が軟骨を作るようにならなければ、たんぱく質をたくさん摂ったところで、すり減った軟骨が復活することはありません」
Q3.軟骨がもとに戻らないなら、ひざは一生痛いまま?
A. 軟骨がすり減ったからといって、痛みが出るわけではありません
「東京大学医学部の研究グループが2005年から行った調査では、X線で変形性ひざ関節症と推定された人は全国で2400万人。そのうち痛みのある人は820万人で、残りの人は痛みもなく生活していました。軟骨がすり減って痛みを感じている人は、そうでない人よりもはるかに少なかったのです。軟骨には神経が通っていないので、すり減っても痛みは感じません。すり減ったことで関節の中に痛みを起こすような変化が起きると、痛みが生じます」
Q4.ひざの痛みは自力で治せるの?
A. 治せます! 温めて、適度に動かし、太らないこと!!
「痛みの原因にもよりますが、自分で治すことは可能です。変形性ひざ関節症ならまずは温めること。無理しない範囲で動かすことも重要です。また、体重がひざの痛みに与える影響は甚大です。体重が標準以上なら減量してください」
教えてくれた人
福井尚志さん/東京大学大学院総合文化研究科教授。整形外科専門医、医学博士。日本整形外科学会、国際変形性関節症学会会員。ひざ関節の疾患を専門とし、特に変形性ひざ関節症については20年以上にわたって研究を続けている。監修本に『東大教授が本気で教える ひざの痛み解消法』(中央公論新社)
取材・文/土田由佳 イラスト/なとみみわ
※女性セブン2023年2月2日号
https://josei7.com/
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