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女優・泉ピン子さん「75才でやめたこと、60代でやっておけばよかった3つの後悔」

「75才の壁」という言葉が注目を浴びている。75才は決して老人ではないが、約3割の人が要介護認定を受けているという調査もあり、大きな分かれ目の年でもある。75才でますます活躍中の女優の泉ピン子さんには、75才でやめたこと、60代でやっておけばよかった後悔があるという。

泉ピン子さん75才の夏でやめたこと

「ママの写真を自宅に置いて毎日手を合わせていたけれど、それじゃあいつまで経っても前に進めないと思った。だから片付けて、代わりにこれを持ち歩いているのよ」

 泉ピン子が取り出したルイ・ヴィトンの写真ケースには、在りし日の橋田壽賀子さん(享年95)とその最愛の夫・岩崎さんの小さな写真が並んで収められている。

 ピン子が「ママ」と慕った橋田さんが亡くなったのは2021年4月。静岡・熱海の橋田さんの自宅で死を看取ったピン子は、その後も自宅で毎日供養していたが、75才を迎えた今年の夏でやめたという。

「いつまでも悲しい気持ちでいてはいけないっていうのがいちばんだけど、実は別の理由もある。私、父親譲りの“糖尿の遺伝子”を持っていたから、人一倍血糖値には気をつけてた。サプリが効くらしいって聞けば3箱まとめて注文したり、食事にも気を使ったり。それなのになぜか病院で測るたびに数値が上がっていく。

 ずっと原因がわからなかったんだけど、この前医師に『心当たり、ありませんか? たとえば果物とか…』って言われて『あ! お供え物のすいかのせいだ』って(笑い)。夏は毎日、お花と一緒にママの大好物だったすいかを供えて、残りを自分でせっせと食べてた。このままじゃあ、体に悪いと思って、お供えの習慣はきっぱりとやめました」(ピン子・以下同)

還暦までは緩やか、気がつけば75才

 体調管理の徹底ぶりは血糖値だけに留まらない。

「『渡鬼』を筆頭に、主役として現場にいた長い経験で身に染みてわかっているのは、共演者に休まれるのがいちばん困るということ。来年まで舞台やテレビのスケジュールが埋まっていて穴をあけられないから、とにかく体力作りは欠かさない。毎日犬を連れて熱海にある自宅周辺や海岸沿いを40分くらい散歩します。ただウチの犬は人間で言えば私より1つ上の76才。先にへばって、時々私が抱っこして歩いて帰ってます」

 朗読劇『すぐ死ぬんだから』で全国を回り、ファッション雑誌でも連載を始めるなど、75才になりますます意気軒高だが、本人は「ここまであっという間だった」と語る。

「還暦までは緩やかだけど、そこから気がつけば75才よ。だけどこの年齢になると、“壁”を感じて誰かに話を聞いてもらおうにも、それまで相談していたママも森母(森光子さん)も杉村先生(杉村春子さん)もいない。楽屋で冗談を言い合っていた仲本工事さんも亡くなったっていうじゃない…。年を取るとどんどん人がいなくなるから、自分で自分を叱咤激励しなきゃいけない」

60代でやっておけばよかった3つのこと

 ドラマ『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)にはすべて自前のシャネルを衣装として撮影に臨むほどのハイブランド好き。しかし最近は趣味嗜好も変化している。

「いまは断捨離中。ユニクロにだっていいものがあるから取り入れてる。だけど人にあげたり処分したぶん、もちろん新しい靴やバッグは買ってますよ。これは私の持論だけど、色彩感覚のない役者は演技がヘタクソ。だからおしゃれをしなくなったら、ダメですね。ブランドを買うこともそうだけど、振り返ってみるとやりたいことをがまんしたことはないなぁ。だけどいくつか、『60代でやっておけばよかった』と思うことはあります」

 ピン子の後悔は英会話と習字、映画出演の3つにある。

「最近、『ディズニープラス』に入って海外のドラマを見ようとしたら、字幕も吹き替えもなくて、困った。習字も、IKKOから達筆の手紙をもらうたびに“私もやっときゃよかったな”って思う。映画はテレビと違って映像作品として後に残るし、高倉健さんが直々に『共演しない?』と誘ってくれたこともあったんだよ。惜しいことをしたよね。だけど、あの頃はドラマのスケジュールが3年先まで詰まっていたから、ラーメン茹でるために泣く泣く諦めたんだよ」

 自宅のある熱海と、テレビ局での収録で訪れる東京。そして今年の朗読劇で巡業する山口――ピン子は背筋を伸ばし、全国各地を駆け回る。

「引退なんておこがましいこと、考えたこともないです。芸能界からも人生からも、いつの間にかフェイドアウトできればいい。人間は孤独なものだから、ひっそりと消えていくのみ。その日までは“お陰様で”の精神でベストをつくすだけです」

プロフィール

女優・泉ピン子(75)/東京都出身。歌謡漫談家としてデビュー後、『ウィークエンダー』(日本テレビ系)のリポーターを務め、人気を集める。以降、連続テレビ小説『おしん』(NHK)、『渡る世間は鬼ばかり』シリーズ(TBS系)などテレビドラマに多数出演。現在は、『朗読劇 泉ピン子の「すぐ死ぬんだから」』で全国ツアー中。

文/池田道大 撮影/浅野剛

※女性セブン2022年11月10・17日号
https://josei7.com/

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